第186話 卒業旅行 ⑦

【嵐side】


 妹たち、女性チームは砂浜の浅瀬で腰まで海につかり、バシャバシャと水をかけあって、はしゃいでいる。


 俺は、こけるの監視役を英里香から頼まれてしまった。


 巧とジャンヌは いつの間にか、沖の方へボートで漕ぎ出してしまい、砂浜からは ようやく確認出来る程に離れてしまった。


「なあ、嵐。 天音さんは、何時になったらビーチに来るんだ ?

 心配だから俺が様子を見に行ってみよう ! 」


 ガシッ !


 こけるのアホを捕まえた。

 コノヤロウ、狙いは天音姉ちゃんだったのか !


「離せ、嵐 ! 天音さんにお近づきに成るチャンスを邪魔するな !

 俺の好みドンピシャなんだよ、天音さんは ! 」


 バカヤロー !

 天音姉ちゃんに、何かあったらシスコンの月読さまが何をしでかすか判らないのに、ほっとける訳無いだろう !


「天音姉ちゃんなら、別荘でネットサーフィンをしていたぞ ! 」


 龍騎が陽野芽ひのめ星奈せなを連れて来た。


「にーにー、発見 ! 」


「お兄ちゃん、お待たせしました 」


 二人が俺に突進してきた。


「琥珀姉ちゃんは、天音姉ちゃんに付き合っているのか ? 」


 俺の質問に頷いた龍騎を見て、


「なにぃー ! 琥珀さんも一緒に居るなら、是非とも逢いに行かなくては、年上スキーの俺には至上命題だ ! 」


 俺の手を振り切り突撃する、こけるを


「「させるかぁー ! 」」


 初めて龍騎と心が一致した俺達は、


「「クオーラル・ボンバー ! 」」


 前後で、アックス・ボンバーをこけるにお見舞いした。


「グフッ、俺を倒しても第二、第三の俺が野望を果たす為に現れるぞ ! 」


 悪役みたいなセリフを残して気絶した こけるを龍騎に預けて俺はチビッ子達の相手をすることにした。


 ちなみに、ロッキーは海の上で仰向けになって身体を任せて、プカプカと浮かせてくつろいでいた。

 アザゼルは、ビーチパラソルの下で寝転がり、ビールを呑みながらラジオで何かを聞いている。



 ♟♞♝♜♛♚♙♘♗♖♕♔


 蝶子たちは、じゃんけんをしているのか 何回かのアイコを繰り返した後に、蝶子が俺達の元にやって来た。

 チビッ子達も海での泳ぎに不安が有ったのか、蝶子を見ると安心したようだ。


 蝶子に協力してもらい、二人に海での泳ぎ方を教えることにした。


「にーにー、絶対に手を離さないでね 」


「蝶子お姉ちゃんも手を離さないでくださいね 」


 意外と蝶子は面倒見が良いのか、チビッ子達とは仲が良いんだよな。


「ブー、ブー、ボクを忘れているでしょう、嵐 ! 」


 俺の腕時計型スマホから、ベルが抗議した。


「せっかく、ボクの水着姿で嵐を悩殺しようと思ったのに、この腕時計型スマホだと ARで見せることが出来ないじゃないか ! 」


 ……そのうち、本当に実体化しそうな勢いだな、ベルの奴。




 ♟♞♝♜♛♚


 一方、日本では ニワトリヘルメスが絶体絶命の危機に墜ちていた。


 ジリジリと周りを囲い追い詰める猫たち。


コケェー、コッコッコッ誰か助けて!」


 猫たちが、今にもニワトリヘルメスに襲い掛かろうとした時、


「カァー ! 」


 1羽のカラスがニワトリヘルメスの前に降り立つと、再び猫たちは距離を取りだした。


 たかが、カラス1羽に警戒心を最大にしている猫たちを見たニワトリヘルメスは、自分とカラスの違いを分析し始めていた。


 一応は知恵の神だけはある、忘れそうだが ヘルメスはパシり神と言われるが オリュンポス十二神の一柱でもあるのだ。


 私の違い……アレ ? 足が三本ある !


 そう、カラスは普通のカラスではなかったのであった。

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