邪神が転生 ！ 潮来 由利凛と愉快な仲間たち

第188話 卒業旅行 ⑨

【嵐side】

　こけるの監視を龍騎やロッキーに任せて、妹たちの部屋に相談に行った。

　本当は、ロッキー（邪神ロキ）の知恵も借りたかったのだが、

「敵対する気は無いが、必要以上に馴れ合うつもりも無いぞ、アレス ！」

　悪友ロッキーとしてでは無く、狡知（こうち）の神ロキの意見だった。

　妹たちの部屋に行くと、由利凛も恵利凛も居なかった。

「由利凛たちは、まだ来ていないのか ？ 」

　俺が質問すると英里香が、

「天音お姉様に捕獲されて動けないみたいよ。

　天音お姉様は重度のシスコンだから諦めましょうね 」

　姉は弟には厳しく、妹には甘いのか ？

　終いには泣くぞ、月読さまや須佐之男命（スサノオノミコト）も。

「それはさておき、こけるの正体は判ったのか ？」

　明日菜（女神アテナ）と英里香（女神エリス）に聞いたが、

「残念ながら、お手上げよ。

　今の私達の神力では見抜けなかったけど、相当に位の高い神なのは確実ね 」

「わたしも英里香（エリス）と同意見です。

　邪神では無いとは想うのですが…… 」

「その辺りは二人の意見に賛成だな。

　たぶん、知恵の神では無く、武神や軍神のような闘神の類（たぐ）いだと俺の勘が言っている 」

　明日菜、英里香、俺の意見を聞いていた巧（ヘパイストス）は、

「 スカウター（鑑定（かんてい））の類（たぐ）いを創ることが出来ると良いのだが、人間に転生した為か、製作成功率が極端に減ってしまったのが悔やまれるな 」

　まあ、神時代みたいな訳にはいかないよな。

　そこで、俺自身の予想を話して見ることにした。

　出来るなら、ハズレて欲しい予想だ。

「 なあ、こけるの前世が親父（天空神ゼウス）と云うことは無いよな。

　昔、俺達が分け御魂で自分達の分身を異世界に派遣したことが有ったろう。

　お袋（女神ヘラ）の目を盗んでやるとしたら、分け御魂で分身を転生させたんじゃないかと予想したんだが…… 」

「「「「……………………」」」」

　妹達も巧（ヘパイストス）も黙ってしまった。

「なあ、違うと否定してくれよ ！

　何時ものように

『嵐お兄さまは、ダメダメですね 』

　と、笑ってくれよ ！ 」

「考えたく無い予想です。

　無意識にお父様（天空神ゼウス）の可能性を考えなかったようですね 」

「でも、言われて見れば、一番怪しいのはお父様（天空神ゼウス）だというのも納得出来るわ 」

　明日菜（女神アテナ）と英里香（女神エリス）まで否定してこないなんて……

「とりあえず、今後 こけるが天音姉さん（天照皇大神）に近付けないように警戒が必要だな ！ 」

　巧（ヘパイストス）の奴は何を言っているんだ。

「卒業旅行が終われば、こけるも自分の家や学校に帰るだろうから、警戒するのは旅行中だけで大丈夫なんじゃぁ～ …… 」

　俺の疑問に明日菜が応えてくれた。

「嵐お兄様は聞いていないのですか ？

　道頓堀こけるは、4月から私達の学園に編入してくるんですよ 」

　なんとぉー ！

「初耳なんだけど、どうして教えてくれなかったんだ ！ 」

「こけると嵐お兄様が仲が良かったから、私達も てっきり教わっているもののと思っていたから 」

　こけるの奴は、一言も言ってくれなかったぞ ！

　あっ、嘘は言ってないか ！

　やはり、神族の可能性が高いな。

　汚れを呼ぶ『嘘』を言わないからな、神族は。

　もちろん、ロキのような邪神は別なんだがなぁ～。

　ん ？

「そういえば、此方に来てから天音姉ちゃんの姿を見て居ないんだが、まさか ！？ 」

「嵐お兄様の想像どうり、部屋に閉じ籠ってネットサーフィンをしていたそうよ。

　琥珀お姉様が、ウンザリしながら教えてくれたわ 」

　英里香が呆れながら教えてくれた。

　サーフィンをするなら、海のサーフィンの方が楽しいと思うんだがなぁ～。

　そんな感じで数日を過ごした俺達は、新学期に間に合うように日本に帰国したのだった。

　♟♞♝♜♛♚

　一方、日本では……

「コケッ、コッコッコッコケッ（汚い所ですが、ゆっくり休んでください）」

　かつて知っている他人の部屋。

　ニワトリ（ヘルメス）は、嵐の部屋に八咫烏（ヤタガラス）を招待して接待をしていた。

「コッコッコッコケッコッコッ（粗茶ですが、どうぞ）。

　コケッコッコケッコッコッコケッ（つまらない物ですが、お納めください）」

　八咫烏に下の冷蔵庫から持って来た、ペットボトルのお茶と嵐の机に有った貯金箱を差し出すニワトリ（ヘルメス）を八咫烏は、ただただ呆れたように見詰めた後、

「カァーーーーー（お茶だけ貰っておく）」

　と鳴いた後、窓から外に飛び立ってしまった。

　同じパシり神同士、親交を深めたかったニワトリ（ヘルメス）は、欲の無い八咫烏を不思議な顔をして見詰めていたのでした。