第175話 懲りない男と女神たち ①

英里香えりか(エリス)side】


 文化センターの催し物で『ぬいぐるみを作ろう』と云うのがあり、私たち大江戸三姉妹で参加した帰り道で……


 私たちは、それぞれが作ったぬいぐるみを見せあっていた。


「ねえ、明日菜……ロバに翼なんて生えていたかしら ?」


 私が質問をすると顔を赤くしながら、


「ヒドイ 、 これはよ !

 そういう英里香のぬいぐるみは、変わった亀ね ?」


「酷いのはどっちよ 、これはタヌキチぶんぶく茶釜よ ! 」


 そう、嵐お兄さまのゲームの従魔だったタヌキチなのよ !


「クッ ハッ ハッ ハッ ハッ、ギリシャ神話の女神たちは、そろいも揃って不器用だな ! 」


 アザゼルヘタレ悪魔の言葉に、ムッ とするけど、これくらい我慢できるわ。


 パラスが自分が作ったカッパのぬいぐるみをアザゼルに付き出した。


「 おっ、何だよ…………妙にリアリティーあるカッパだな……呪われそうで恐いんから、引っ込めてくれないか……パラス様 」


 パラスは胸を張りながら、


「私が一番上手 ! アザゼルは悪魔の癖に情けないと思う 」


「ウッ、悪魔だって恐いものは恐いんだよ !

 ん? 何だ、アイツは ナンパをしているのか ? 」


 アザゼルが指を差す方を見ると、




「そこの綺麗なお姉さん、ボクとお茶しませんか ? 」


 無視して通り過ぎていく女性。

 あきめずに次のターゲットを探す男 !


「こんにちは、ボク道頓堀どうとんぼりこける。

 一緒にお茶しませんか、カッコいいお姉さん ! 」


「嫌 !」



 何よ、アレ !

 あんな誘い方で女性がお茶をしてくれると思っているの ?


 ……ヤダ、目が逢ってしまったら、ナンパ男が私たちに向かおうと道路に飛び出し、


 ドン !


 車に当たり撥ね飛ばされてしまった。


 勝手に飛び出して勝手に死ぬ……女神エリスだった頃なら見捨てていたけど、気がついたら私たち三姉妹は、彼の元に駆け寄っていた。


 誰かが救急車を呼んでいる中、


「ア~、駄目だなコイツ。 助からないな !

 魂が肉体から離れようとしているぞ 」


 アザゼルが、薄ら笑いをしながら話しているのが勘にさわる。


「アザゼル、お願い !

 彼を助けてあげて、私達に向かおうとしたことが原因のようだし、ほっとけないの 」


「へい へい、女神アテナは、お優しいことで。

 悪魔に願い事をするには、が必要ですぜ、女神さま」


「食料2週間分、缶詰やインスタント食品の詰め合わせ とパック御飯で手をうちなさい !

 どうせ、お金が無いんでしょう ! 」


「流石、女神エリスは話がわかるな !

 給料をパチンコや競馬、競輪、競艇でスッテしまったからスカピンだったんだよ。

 只、肉体を修復している間に魂を保管して置くが要るんだが…………そうだ !

 お前たちのを一つ提供してくれると助かるぜ ! 」


「セイヤは駄目です ! 」


 明日菜がの提供を拒否した。

 気持ちは解るわね、私もタヌキチぶんぶく茶釜のぬいぐるみを提供するのは嫌だしね。


 パラスが、自分が作ったカッパのぬいぐるみを差し出し、


「私の『アルシンド』を提供するから助けてあげて欲しい 」


 アザゼルはカッパのぬいぐるみを見て、少し嫌そうにしながら、


「出来れば、別のぬいぐるみが良かったんだが仕方ないか……。

 流石、ポセイドンの孫である愛の女神さまだな。

 何処かの愛と美の女神とは大違いだ 」


 その後、救急車が来るまでに身体の修復をしているアザゼルは魂を封じたカッパのぬいぐるみを近くのゲームセンターのクレーンゲームの中に封印した。


「こうして置けば、死神たちが勝手に魂に手を出せなくなるから安全だ。

 ある程度、肉体が修復するまで危険だから、魂を込めたカッパのぬいぐるみは、クレーンゲームの中で封印して置け 」





 こうして、彼 道頓堀こける は助かったんだけど、うっかり忘れていて 在庫処分でカッパのぬいぐるみが焼却炉で燃やされる寸前で回収したことは、彼には内緒にしましょう。


 これで懲りたでしょうから、ぬいぐるみにメッセージカードを残したから、もう会うことも無いと思っていたんだけど……

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