第166話 バレンタインデー、After... Ⅱ

【由利子side】


「嵐お兄ちゃんのことだから、風邪が治ってきたら絶対にお出かけするに決まっているのじゃ !

 明日、バレンタインデーに渡せなかったチョコを渡しに蝶子ちゃんが

『学園をサボッて、嵐お兄ちゃんを見舞いに行く』

 と、張り切って買い物をしていたから、

 お兄ちゃんなら、それから逃げ出す為に絶対に行動するに決まっているのじゃ。

 特に、お母ちゃんのバイクかクルマが危ないのじゃ !」


 末娘である由利凛からの忠告とは云え、息子みたいに思っている嵐を信じたかった……結果、由利凛の言う通りに成った訳だ。


 朝、バイクで登校すると、由利凛の言っていた通りに 夜野 蝶子が無断欠席をしていた。


 嵐と 蝶子の担任教師の真知子に事情を話してから大江戸家の本宅に来てみたら案の定、蝶子が料理?をしていた。


「 学園をサボッて何を作っているんだ、蝶子 !」


 私も料理は苦手で昔の教え子である大江戸家のお世話に成っているから偉そうな事は言えないが、オカユらしき物体からチョコレートの色とカケラが見えて、異様なにおいがしてきた。


「あっ、由利子おばさま……先生、これには訳があって、嵐くんが早く元気に成るようにと思って、蝶子特性オカユを作っていた処なんですよ ! 」


「うむ、そうか…………だが、無断欠席は良く無いぞ。

 嵐のことなら、…………



 ピュッ ポッ ポッ ポッ、ピュッ ポッ ポッ ポッ、ピュッ ポッ ポッ ポッ、ピュッ ポッ ポッ ポッ !


 由利凛が取り付けた警報が成った !

 私が台所から出ると蝶子もついて来た。


 ブォン 、ブッルルルルル !


 私の愛車、フェアリーテイルWXダブルエックスのエンジン音が聞こえてきた。


 おい、おい、あのクルマは、世界でも1000台しか無い

 大江戸自動車の看板自動車だぞ !

 大江戸グループ自動車部門の大江戸 アリス(旧姓 ノースダコタ)が趣味に走りまくった結果、完成したモンスターカーなんだぞ !


 不意に由利凛が言っていたことを思い出した。


「嵐お兄ちゃんは、ゴーカートゲームでも良くカートをブツケていたのじゃ !

 カーブをスピードを落とさずに曲がるから曲がり切らずによ、お母ちゃん ! 」


 あのクルマをベコベコにされた姿を想像して、ゾッ とした。

 嵐の両親で私の教え子である、仁くんや瞳たちは許してくれるだろうが、私にだって立場があるんだ !


 キュルルッルッルッルッルッルッ !


 由利凛に言われて取り付けた鎖、巧の特製グレイプニルMach Ⅲ とやらが、モンスターマシンの フェアリーテイルWXダブルエックスを繋ぎ止めていた。


 さぁ、お仕置きの時間だ !


「潮来圓明流えんめいりゅう 、102げいの一つ、『風林火山 ! 』 」


『疾きこと風の如く』でジャイアント・スイングをして、

『静かなること林の如く』で上空に放り投げて、

『侵略すること火の如く』で潮来バスターを決め、

『動かざるごと山の如し』でロメロスペシャル。


 最後のロメロスペシャルで気絶した嵐を部屋で寝かせてから学園に戻った。

 健気な蝶子は嵐の看病に残したから大丈夫だろう…………忘れていた、あのダークマターのチョコオカユのことを…………まあ、死にはしないだろう、たぶん。

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