第165話 バレンタインデー、After...

【嵐side】


 ゲームをした後、そのまま眠ったら風邪を引いてしまった。

 皆は学園に行っている上にめずらしく母ちゃん達も外せない仕事があるらしく、今 ウチに入るのは俺と猫達だけのハズだった……


「嵐くんの為に蝶子の特性オカユをつくるから待っていてね 」


 恐ろしいことを言いながら、台所に行ってしまった。

 一昨日から休んでいるが心配した蝶子が見舞いに来たのだ。

 当然、母ちゃん達は喜んで迎え入れた上に母ちゃんなんかは、


「嵐のことをお願いしますね、蝶子ちゃん。

 この子は素直じゃ無い処があるけど、思いやりもあって良い子なんですよ。

 これからも仲良くしてくれると嬉しいわ 」


「おまかせください、お義母様 !

 嵐くんは蝶子が、しっかりお世話しますね 」


 蝶子が外堀を埋めていた。

 ヘパイストスはおろか、アテナ、エリスたちもニヤニヤしながら蝶子のことを止めてくれない。

 由利凛にいたっては、


「頑張ってね、蝶子ちゃん !

 妾も応援しているのじゃ ! 」


 完全に面白がっていた。


 薄情者ぉー !

 俺には蛍と云う彼女(予定)が居ると云うのに、蛍にメールをしたけど、


〖お大事にね、ゆっくり寝ているように。

 ゲームなんかは、しちゃダメだぞ !

 私は大学でやることが残っているから見舞いにはいけないけど、早く良くなることを祈っているよ。

 竜ヶ崎 蛍 より 〗


 絵文字無しのメールが返ってきただけだった。


 冷てぇー ! この間のイベントで距離が縮まったと思ったのに、女心が解らんぜよ !


 流石に二日も大人しく寝ていたから、もう大丈夫なハズだ。

 母ちゃんが心配するから休んで寝ていたが、蝶子アフロディーテのつくった食べ物なぞ、恐ろしくて食べられるかぁー !


 身の安全の為に部屋から脱出してやる。


 抜け足、差し足、忍び足、抜け足、差し足、忍び足……

 クッ クッ クッ、 蝶子アフロディーテから逃げ出すことには成功しそうだな。


 納屋に由利子オバチャンの愛車フェアリーテイルWXダブルエックスが置いてある。

 今日は天気が良いから、ハルトおじさんとKISARAZU ZⅢでツーリングしながら学園に行っているからだ。

 ゴーカートゲームをプレイしてから車にも興味が出てきたんだよな。

 由利子オバチャンの趣味だけは認めているぜ !

 スマートキー車のカギのある場所は知っているから問題なし !


 バレたらバレた時に叱られればいいさ。

 スマートキーで車のロックをハズしてからWXのドアを開けたら、


 ピュッ ポッ ポッ ポッ、ピュッ ポッ ポッ ポッ、ピュッ ポッ ポッ ポッ、ピュッ ポッ ポッ ポッ !


 某、宇宙ロボットに出てくる母艦の警戒音が鳴り響いた !


 くっ、ヤられた 孔明の罠かよ !

 こうなったら、絶対に逃げてやる!

 車のドアを開け運転席に座りエンジンをかけてアクセルを踏んだ。


 ブォン 、ブッルルルルル !


 流石に車にまでは、仕掛けが無いようだな !

 甘い、甘い、俺だったら車に仕掛けをするけどな !

 巧か由利凛か由利子オバチャンかは知らないが、俺の方が一枚上手だったな !


 キュルルッルッルッルッルッルッ !


 タイヤがスリップして前に進まないだと !

 後ろを見るといるだと !

 クソゥ、孔明では無く龐統士元の連環の計だったか !


 車の前を見ると蝶子の他に、何故か由利子オバチャンが立っていた。

 逆光で表情が読めないが、これはアカン奴だな。






 結果、由利子オバチャンにお仕置きされた俺は、もう1日休むことになったのだ。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る