第162話 再びのドラコン・ファンタジー

【嵐side】


 グランドクエストが終わり、てっきり寂れていくと思った『ドラゴン・ファンタジー』は再び活気を取り戻して来たと聞いて再び遊びに来たら、すっかり様子が様変わりしていた。


 冒険よりスローライフに重点を変えたらしく、フォーマーとテイマーが激増した。

 都会暮らしや仕事や勉強に疲れた人に受けたようで、前程では無いけど、プレイヤーが溢れていた。


「都会人は皆、社会と云う戦場で闘う傷を追った戦士なのじゃ !

 だから癒しを求めてゲームに興じるのだけど、皆が皆、冒険を求めている訳じゃ無いのじゃ。

 普段出来ない農業や釣り、狩りなど気軽に出来るのが、ゲームの良い処なのじゃ 」


 説明してくれたのは良いのだが、由利凛が三人のノームを連れていた。


「おい、由利凛。 そのノーム達は、どうしたんだ ? 」


 俺が聞くと 悔しそうに由利凛が、


「この間のグランドクエストで貰った賞品で、『従魔ガチャ』を貰ったからガチャを回したら、三枚共にノームに成ってしまったのじゃ ! 」


 何だ、ダブリかよ。

 残念ながら俺は活躍出来なかったので、山分けで賞金を貰っただけだったのだが、


「俺は、てっきり由利凛が逆ハーレムを目指しているかと思ったぞ ! 」


 ニヤニヤしながら挑発すると、


「妾は、アフロディーテとは違うのじゃ !

 お兄ちゃんみたいな鈍感野郎には言われたく無いのじゃ ! 」


 プンスカと怒りながら行ってしまった。


 その後、活躍した妹たちを見に行ったが、

 明日菜は、ミミック人食い宝箱

 英里香は、空飛ぶスパゲッティ

 パラスは、ウミウシ型モンスター


 を一体連れていた。


 女神だけどには見放されたようだな。

 本来の明日菜たちの従魔は、陽野芽や星奈と一緒に出掛けているようで、三人共に微妙な顔をしていた。




 ♟♞♝♜♛♚♙♘♗♖♕♔


【ドラゴン・ファンタジー運営side】


 チーフが……元チーフが降格されて元彼女の部下に成ってしまったのは、誰もなぐさめようも無く


「水道橋、今頃は六甲山チーフの下で働いているんだよね。

 めちゃめちゃな人だったけど、少しだけ同情しちゃうなぁ~ 」


 A子の言う通り元彼女の部下なんて、よく辞めなかったよね、水道橋元チーフ。


 新チーフの福岡 鷹子さんの元で新しい運営方針が決まった。


「 他のゲーム会社が冒険ファンタジーを目指すなら、ウチは、スローライフ・ファンタジーに変更するわよ ! 」


 その方針は当り、徐々にプレイヤーが戻りつつあります。


 水道橋元チーフ、さようなら、お元気で !

 私たちは福岡チーフの元、チーム一丸と成って頑張りますのでしてくださいね。



 ♟♞♝♜♛♚


【水道橋side】


 1プログラマーに戻った俺は、大河たいが……六甲山チーフに命令されて、ゴーカートレースのレース場を作成している。


「 コリャーッ、ウサギ !

 アンタは、本当に懲りて無いわね !

 何で、コースのど真ん中にがあるのよ !

 プレイヤーにゴールさせる気が無いの、このスカポンタン ! 」


「『ウサギと呼ぶな ! 』と何度も言っているだろうが、 ! 」


「「 グヌヌヌヌヌヌッ 」」


 この女、ちっこい癖に昔から態度だけはデカイんだよな !

 レースゲームなんだから、難コースを作っても良いじゃないか !


「昔から、アンタはヤリスギなのよ !

 そんなんだから 降格左遷されて、私の部下に成ったんでしょう !

 とにかく、その巨大蟻地獄コースは認め無いから作り直しなさい ! 」


 クソゥ、残業しないと終わらないじゃないか !


「それから、は認め無いから、就業時間中に仕上げなさいね !

 ウチ大江戸グループは、ホワイトなんだからね ! 」


 それじゃぁ、俺のスペシャルコースを実装出来ないじゃないか !

 仕方がない、普通のコースで我慢するか。



 他のスタッフ達が、生暖かい目で見ていたことに気がついたのは、かなり後だった。

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