第148話 チキチキゴーカート超レース ⑨

【嵐side】


 湖の中の潜水艦での進行は順調だ。

 リアルなら茶釜の中に水が入ってきそうだが、ゲームだから、その辺り曖昧あいまいなんだろう。

 リアル感重視と云いながらも、さじ加減が上手いよな。

 しかし油断大敵、あの『ドラコン・ファンタジー』と同じ会社の運営だからな !


「巨大な生物が近付いているよ、嵐 !

 どうする、闘うor逃げる ? 」


「やり過ごすに決まっている !

 このゲームは、レースゲームなんだから闘う必要は無いだろう ! 」


「了解、…………嵐も成長したねぇ~ 。

 ボクも嬉しいよ ! 」


 ……俺をダメな子みたいに言うのは、止めて欲しいが、あの様子なら言うだけ無駄だな。



「巨大な生物が上の船をターゲットにしたみたいだよ !

 どうするの、助けてあげる ? 」


〖助ける Yes/No 〗


 当然『No』だ !


「自己責任だ、自己責任 !

 ゲームなんだから、本当に生命の危機では無いんだろう 」


 それに、俺は正義の味方じゃ無いしな !

 せいぜい自分の家族や仲間くらいを守るのが、精一杯だな。


 潜望鏡で覗くとアザゼルが首長竜に襲われていた。


 まあ、頑張れ悪魔。



 ♟♞♝♛♚♜


 湖を出ると、そこは雪国だった。

 うん、ゲームだ、ゲーム、深く考えたら負けだ !

 外は、さぞかし寒いだろうな。

 俺はタヌキチの中から、ボタン一つで雪国用スノータイヤに代えた。

 タヌキチの中は適温だから快適、快適 !

 ようやく追い付いて来た巧もロッキーも寒そうだな。

 タイヤは用意したようだが、防寒着までは考え無かったのだろうな。

 二人共、ブルブルと震えている。

 今頃、アザゼルは氷漬けに成っているかな ?


 さあ、1位を目指して栄光の道を進むとするか。


 吹雪が吹いてきたが、赤外線カメラやレーダーを頼りに突き進んでいる。

 態々わざわざ巧やロッキーを攻撃して恨みを買う必要も無いだろう。

 勝者は、常に堂々としないとな !



 キュラ キュラ キュラ キュラ キュラ キュラ



 なんだ、この音は !

 嫌な予感がして、後方のカメラを拡大すると、高速で近付いてくる戦車がいる。


「おい、ベル !

 アレもプレミアムパックに入っているのかよ ! 」


「ボクに怒らないでよ !

 だから、ゴーカート運営が悪のりして創った装備パックだから性能だけは凄いんだよ !

 5桁のお金は伊達じゃ無いんだよ ? 」


 戦車の主砲が俺達に向けられた !


 ドッカァーン、ドッカァーン !


 右に左に避けながら狙いをつけられないように、ランダムに走る。


「どうやら、ミサイルには追尾機能は無いようだよ。

 良かったね、嵐 ! 」


 くっ、そんな機能まであるのかよ !

 アザゼルがケチったから助かったが、このままだとジリ貧だぞ。


 何か武器は無いのか ?


 ミサイル、水爆弾、バナナの皮、泥団子…………


泥団子ドロダンゴだと ! 」


 俺の大きな声に怒られていると勘違いしたベルが、


「『カチカチ山』のタヌキの泥舟から創ったアイテムドロダンゴだよ !

 何故か、武器の中に混じっていたんだよ ! 」


「違う、違う、怒っているんじゃ無くて褒めようとしたんだよ !

 でかしたぞ、ベル、タヌキチ ! 」


 今一、理解していないベルに、


「アザゼルの戦車の主砲の発射口を狙って『ドロダンゴ』を撃ってくれ、ベル ! 」


「 ……そうか ! 判ったよ、嵐。

 ボクにお任せあれ! 」



 ベルが発射したドロダンゴは、次々と主砲の発射口に命中した。


「軍神ちゃんは、おままごとが好きなのかい !

 悪いとも思わんが、泥んこ遊びは他所でやってくれや !

 そろそろ止めを刺してやるからな ! 」


 アザゼルの憎たらしい挑発があるが無視する。

 アイツも古い悪魔だから気付かれてしまうからな。


 ドッカァーン !


 戦車の主砲が暴発して吹き飛び、戦車の上部も壊れたらしく戦車は同じ所をグルグルと回っている。


「「「よっしゃあポコ、ポコォー ! 」」」


 ハイタッチして勝利を祝った俺達は、あらためてゴールを目指した。





 何時もなら、なんらかのアクシデントや邪魔者のせいで勝利を逃がして来たからな !

 ベルにも手伝って貰い、レーダーを使いながら辺りを警戒しながら走った。



 5、4、3、2、1、 ゴール !


 しかし、直ぐに審議入りに成った。


 頼む、失格は勘弁してくれよ !


 審議の結果、無事に初1位に成ることが出来た。


 俺達の黄金伝説は、これからだ !

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