第147話 チキチキゴーカート超レース ⑧

【嵐side】


 レースは続くよ、何処までも !


 草原コースを出たら砂漠コースに入ったので、タイヤ交換をしている。

 と云っても手作業では無く、ステータス画面からタイヤを交換するボタンを押すだけだがな。


 何人かのプレイヤーはタイヤ交換せずに進んでいるが、ゲームを舐めすぎだぜ !

 リアルを追及しているゲームなのに、ノーマルタイヤで砂漠を走るなんて命取りだぞ。


 いよいよスタートをしようとする処にアザゼルが追い付いてきた。

 フン、今からタイヤ交換する頃には、差が開いて追い付けるものか !


 しかし…………


 アザゼルの飛行機ゴーカートが変形を始めた !


「おい、ベル !

 どうなっているんだよ、アレ !」


 アザゼルの機体を指差ししながら言うと、


「ボクも驚いたよ !

 運営が冗談で用意したを買う人がいるなんて、アレ5桁のお金がするんだよ。

 何度も言うけど、ああいう大人に成ったら駄目だからね、嵐 ! 」


「頼むから、アイツと一緒にするな !」


 信用無いのな、俺。

 あんなんだから 堕天したんだな、アザゼルの奴。


 飛行機ゴーカートが変形してパジ◌ロ型ゴーカートに成った。


出鱈目でたらめだぁー !

 変形した時の部品が、あんな形に成る訳が無いハズだ ! 」


 ヘパイストスが騒いでいるが、ゲームなんだから深く考えるなよ !


「皆 ! 直ぐにゴーカートに乗り込んでスタートして !

 アノちょい悪オヤジの相棒パンダが『RPG7ロケット砲で狙っているよ ! 」


 俺達は急いでカートに乗り込んでスタートしたが、アザゼルの行為に気がついて無かった奴らが犠牲に成ってしまった。


「おい、おい、あの攻撃は規約違反に成らないのかよ ? 」


 あのロケット砲の攻撃で、大量のリタイアしたプレイヤーが続出した。


「成らないよ !

 油断した彼らが悪いんだよ、このゲームでは。

 ……だけど、アノちょい悪オヤジは本当に教師なの ?

 攻撃するのに躊躇ちゅうちょしなかったけど……」


「残念ながら本当にウチの学園の教師なんだよ !

 それも女子生徒に人気があるんだぜ、こっちが信じられないよ 」


 アノ悪魔め、魅了の魔法かスキルでも持っているんじゃ無いだろうな !



 ♟♞♝♛♚♜



 砂対策が甘かったのか、巧もロッキーもアザゼルさえも砂嵐のように風で巻き上げられた砂に苦労しているようだな。


 ゴーグルとマスクをしているが、とても苦しそうだ。


 俺は、タヌキチの茶釜の中に入りふたをしているので快適な運転をしている。

 モニターを見て運転しているから非常に楽だな。


 アザゼルが光の玉みたいな物を俺に向かって射出した


「超電磁ボールだよ !

 避けて、嵐 ! 」


 俺を抜かそうとしていた、お隣の国の人々が犠牲に成ってしまった。


「嵐、こっちの『水爆弾』の用意が出来たよ

 !」


 この水爆弾が直撃したら、しばらくは時間を稼げるだろう。


「やぁっーて、やるぜ !…………ポチっとな 」


 水爆弾が発射され視界が良く無かったのか、アザゼルに見事に命中した。


 巨大な水球の中で溺れる悪魔アザゼル

 この俺を『軍神ちゃん』なんて、からかうから痛い目を見るんだぜ !


 アザゼルのお陰でライバルが減ったお陰で、今の処は俺がトップだ !

 このまま、トップをキープ出来れば、初の1位も夢じゃ無くなる !


 しかし残念ながら、アザゼルも巧やロッキーも追い付いて来た。

 そろそろ砂漠コースも終わりみたいで、オアシス……巨大な湖が姿を表した。

 ここで、タイヤを交換して水上タイヤにしなければ成らない。


 そうしたら、アザゼルのゴーカートがまた、変形し始めて、スワン型ボートに変形した。


「何でもありかよ……5桁のお金は伊達じゃないってか ! 」


 俺が愚痴ぐちった後、タイヤ交換の為にゴーカートを止めようとしたら、


「そのまま進んで、嵐 !

 タヌキチ号は、潜水艦にも成るから大丈夫だよ ! 」


 ……スマン、アザゼル。

 何でもありなのは、俺だったわ。


 ベルの言葉に従い、そのまま湖に向かって行く俺を嘲笑あざわらっていたアザゼルは、俺が 湖に沈むと、ようやく理解したらしく スワンボートを必死に漕ぎ出した。


 潜望鏡で見るアザゼルの必死の姿はあわれでもある。


 人力かよ、あのスワンボート ……


「ゴーカート運営は、リアルを追及したみたいだね……」


 うん、やっぱりここの運営も気を付けた方が良さそうだな。

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