第146話 チキチキゴーカート超レース ⑦

【嵐side】


 今回のレースは周回するコース場では無く仮想の大陸を横断する長距離レースだ。

 草原や砂漠、氷雪地帯、現実には有り得ないレースだよな。


 レースの途中で変更出来るのはタイヤのみ !

 ゴーカートの変更は認められないとあって、仲間は必死にゴーカート選びをしている。


 俺か、俺はタヌキチ・ゴーカートしか選べないんだよ !

 ベルめ、余計な事をしやがって!


「ポコォ~ 」


 タヌキチが落ち込んでしまった !


お前タヌキチは悪く無いからな、悪いのは全部ベルが悪いんだから、気にするな !」


 タヌキチの頭をでながらまなぐさめていると、


ひどいなぁ~、ボクは嵐やタヌキチの事を考えて行動しているのになぁ~ !

 ボクだって傷付くんだからね !

 ヨッ ヨッ ヨッ ヨッ ヨッ 」


 この妖精ベル、嘘泣きを始めやがった !

 何処で、こんなことばかり覚えてくるんだ !



 ♟♞♝♛♚♜


 ピッ ピッ ピッ ピィーン !


 レースが始まった。

 今回は、スタートダッシュをせずに中間グループでライバル達の様子を見ることにした。


 逆にロッキーと龍騎がスタートダッシュしてトップを争っている。

 巧の奴は、何を思ったのか俺の隣を追走していた。

 巧の相棒は火蜥蜴サラマンダーを選んだみたいで、時折 火を吹いている。

 その蜥蜴とかげ、炎で攻撃してこないだろうな !


「嵐、耐震、耐閃光防御 !後ろからミサイルが来るよ ! 」


 ベルの注意を受けてヘルメットにあるバイザーを下ろして準備した処で、バリアーが発動して大破は避けられたが、巧は避けそこ成って小破、ゴーカートの一部が吹き飛んだ。

 トップグループのロッキーは相棒の狼が知らせたらしく避けることには成功したが、龍騎は直撃を喰らい大破、リタイアした。

 何が起こったのか判らない顔をしていた龍騎を横目に通り過ぎた。

 ……スマン、情報を伝えるのを忘れた。


「ちっ、成果はドラコン1匹だけかよ !

 ミサイルだって高いのによぉ~ 」


 やっぱり、アザゼルかよ !


「悪いな……なんて少しも思っていないが、恨むなら運営のクジを恨むんだな !

 本当は『女神チーム』を狙っていたんだが、悪運が強いよな、アテナやエリスはよ ?」


 コイツ、アホか !

 アテナもエリスも闘いの女神だぞ !

 悪魔1匹で、どうにかなる相手じゃ無いぞ !


 飛行機ゴーカートが着地した処を手榴弾を投げ込んだ、巧が。

 巧もアザゼルには、腹を立てているようだな。

 しかし、アザゼルの相棒のパンダがラケットで打ち返してきた。

 幸い、手榴弾は別のカートに当たり爆発炎上した。


「卑怯だぞ、アザゼル !

 関係の無い奴を巻き込みやがって! 」


 俺が怒りに任せて叫ぶと、


「卑怯で結構、花らっきょう……なんてな !

 悪魔、堕天使には褒め言葉だぜ、よぉ~ ! 」


「俺を呼ばわりするなぁー ! 」


 悪魔って、本当に腹が立つ奴らだな!


「嵐、アレは駄目な大人だから、反面教師にしないとダメだよ ! 」


 ベルが注意してきたが、


アイツアザゼルは、ウチの学園の教師なんだよ……アレでもな ! 」


「ウワァ~、世も末だねぇ~ 。

 大丈夫、嵐たちの学校は ? 」


「「………………」」


 俺も巧も二の句が告げなかった。


「ほら、前を見て運転して !

 トップを走っているライダーが、何か仕掛けたよ ! 」


 アザゼルが走る前に工事現場で見掛ける巨大なハードルみたいな障害物が現れ、アザゼルはぶつかり大破した…………が、リタイアまでにはならなかったようだ。

 だが、すすだらけで咳き込んでいたから、


「ざまぁ、カンカン、河童かっぱだぁ~ ! 」


「嵐、下品だよ !」


 ベルに怒られてしまった。


 ロッキー、ナイスプレーだ !

 直ぐにアザゼルも復帰するだろうから、今のウチに距離を稼がないとな!








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