第136話 三学期 ②

【由利凛side】


「「嵐、テメェ ! 」」


 巧お兄ちゃんとロッキー君が、嵐お兄ちゃんに文句を言っているのじゃ。


「由利子オバチャンの視線は、お前らも感じただろう !

 遅かれ早かれ、俺達が指名されるのは目に見えていたんだから同じ結果だったと思うぞ !

 それなら、印象を良くした方が良いだろう ! 」


「「 クッ、嵐の癖に……」」


 おおー ! 脳筋の嵐お兄ちゃんが成長しているのじゃ !


「あの~、僕は参加しなくても良いのでしょうか ? 」


 凪が心配そうに聞いてきたのじゃが、


「まず、凪は体力を付けるのが先なのじゃ。

 これから毎日朝練を続ければ、来年には出走出来ると思うのじゃ 」


 凪と世野中くんは学園の学生寮に入るようだけど、 随分と思いきったと思うのじゃ。

 これだけ想いを寄せられると悪い気がしないのも事実なのじゃ。


 一方、世野中くんは 明日菜ちゃんにアプローチしているけど、道のりは遠そうなのじゃ。

 女神アテナは筋金入りの男嫌い、人間に転生したから少しはマシに成っているけど、お付き合いは超難関だと思うのじゃ。


 むしろ、嵐お兄ちゃんの鈍感力が凄すぎて呆れるのじゃ !


「嵐くん、制服の袖のボタンが取れかかっているよ。

 良かったら、私がボタンを付け直してあげるけど……」


 星華ちゃんが女子力を発揮してアピールしているのじゃ。


「おっ、サンキュー !

 それじゃぁ、頼むわ 」


 学生服を脱いで、星華ちゃんに渡すと嬉しそうに携帯用裁縫セットを取り出した、星華ちゃん。


「凄いな、星華 !

 何時も、裁縫セットなんて持ち歩いているのか ? 」


 感心したように星華ちゃんを見ている、お兄ちゃん


「凄くなんて無いよ、女の子なら誰でも持っていると思うよ 」


 目をらす大江戸三姉妹……妾たち、潮来姉妹は持っているのじゃ !


 お母ちゃん由利子は、家事全般が壊滅的だから 勇気おばさん や 楓おばさんを手伝いながら覚えたのじゃ !

 一方、明日菜ちゃん達は おばさん達が全てやってしまう為に覚えようとしなかったので、女子力なら妾たち潮来姉妹の方が上なのじゃ !


「そういえば昔、由利凛にズボンのチャックを縫い付けられて、危うく漏らしそうに成ったことが有ったな ! 」


 ジィーーー、皆の目が妾に集中している…………


「若さ故の過ちと云う奴なのじゃ !」


 ちょっとした可愛い悪戯くらい見逃して欲しいのじゃ !


「本当に危なかったんだからな !

 洒落しゃれに成らない悪戯ばかりしやがって !」


「巧お兄ちゃんは、直ぐに気が付いたのじゃ!

 嵐お兄ちゃんが気が付かなかったのは、だからなのじゃ ! 」


「よし、その喧嘩買ってやる !

 表に出ろ、由利凛 ! 」


 そこに、秋穂あきほちゃんが割って入り、


「まあ、まあ、二人共 喧嘩は止めなよ。

 由利凛も、もう酷い悪戯をしないよね !

 嵐くんも許してあげてね 」


「秋穂に免じて我慢してやるが、また悪戯したら……」


「悪戯は、妾のアイデンティティなのじゃ ! 」


 ますます険悪に成ったけど、


「由利凛ちゃん、僕にだったら悪戯しても良いから、嵐くんには止めてあげて欲しいなぁ 」


「判ったのじゃ ! 嫉妬なぞしおって、凪は可愛いのじゃ! 」


「それで良いのか、凪 !

 甘やかしたら付け上がるだけだから気を付けろよ ! 」


 毒気を抜かれたのか、お兄ちゃんが退いてくれたのじゃ。


 まあ、喧嘩しても妾の『ローション爆弾』で負けなかったと思うけど、凪に免じて許してあげるのじゃ !


 それにしても、あれだけ星華ちゃん や秋穂ちゃんに好意を向けられているのに気づかない嵐お兄ちゃんは鈍感過ぎるのじゃ !

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る