第134話 知恵の神の受難《じゅなん》

【由利凛side】


 五月蝿いアザゼル先生が出て行くと、丁度入れ違いで蝶子ちゃんと陽野芽ひのめちゃんと星奈せなちゃんが、お店に入ってきた。


 危なかったのじゃ !

 まだ、蝶子ちゃんは記憶が封印されているから、アザゼル先生には逢わせたくなかったのじゃ !

 そして、陽野芽ちゃんと星奈ちゃんには、目の毒にしか成らないから逢わせたくないのじゃ !

 何故か、蝶子ちゃんに抱えられているニワトリからあげが、グッタリしているのは気にかかるのじゃが、そろそろ注文した料理が出来上がる頃なので、放置して置くのじゃ !


「ねえ、ねえ、嵐く~ん !

 このニワトリ、良かったら蝶子に頂戴ちょうだい

 何故か解らないけど、このニワトリからは懐かしい感じがするのぅ~。

 大事にするから、蝶子からの お・ね・が・いお願い ! 」


 蝶子ちゃんが、シナを作りながらお強請ねだりしている……あざといのじゃ。


「良いぞぉ~、名前は らしいが、どうする ? 」


 良いのじゃろうか、あのニワトリの正体は知恵の神パシりの神でアレスお兄ちゃんの兄弟だと判っているのじゃが…………面白そうだから、黙っているのじゃ !


「コケッ !」


 ニワトリ ヘルメスが不安そうに、キョロキョロしている様子が面白いのじゃ !


「う~ん、もう少し可愛い名前を考えていたけど、《《カラアゲ》で良いよぉ~、嵐くんが付けた名前だもんね」


 ……妾が付けたんじゃが、黙っておこう。

 沈黙は金だと聞いているしのう。

 それに、ウチの猫たちが蝶子ちゃんを良く威嚇しているから、お詫びの意味もあるのじゃ。

 ニワトリヘルメス1羽を生け贄にして蝶子ちゃんアフロディーテの機嫌が良く成るなら……

 尊い犠牲に感謝するのじゃ。



 ♟♞♝♜♛♚


ニワトリヘルメスside】



 確かに、昔はアフロディーテに恋した時期もありますが、あまりにもの淫乱ぶりに興醒めした私には、今更ながら転生したとは云え、アフロディーテ蝶子と一緒には居たく無いのです。


 悪い夢から、やっと覚めたのに元の木阿弥に成ってしまう。

 助けを求めて、兄にあたるアレスヘパイストスを見るが、私を無視してゲームとやらの話ばかりしている。

 …………このことは、父上に報告するから覚えておきなさい !


「それで、新しいゲームは何時から遊べるように成るんだ ?」


「明日の11時からだから、学園があるから帰ってからに成るな 」


 アレスとヘパイストスは、きちんと修行もせずに遊んでばかりだとは嘆かわしい !


「……本当はゲーム開始時に遊びたいが、学園をサボると由利子オバチャンが恐ろしいからなぁ~

 仕方ないから帰ってから楽しむとするかぁ~ 」


「流石に嵐も反省したか。

 小学生の頃に仮病を使ってアニメを見ていた奴が……成長したなぁ~ 」


 しかめっ面をしているアレスとドヤ顔のヘパイストス


 この二柱二人、犬猿の仲だったのに随分と仲良く成っているな。


「本当のバイクや車を運転するのは、当分 先に成るからな !

 プレシーズンとは云え「ゴーカートライダー・ドリフト』は楽しみだぜ ! 」


「そうだな、『ドラゴン・ファンタジー』ばかりだと飽きてしまうし、丁度 緊急メンテナンスに入っているから良い機会かも知れないな 」


 アレスとヘパイストスの会話を聞いているが、そんなに人間のゲームとやらは、面白いのだろうか ?


 カチャリ !


「 これで、カラアゲちゃんニワトリ(ヘルメス)は蝶子のペットに成ったんだね !

 嬉しいなぁ~、何故か蝶子は犬も猫もなついてくれないのよねぇ~ 」


「コケェー ! 」


 油断していたら、アフロディーテ蝶子に足輪を付けられてしまった。

 アレスの処の猫たちから解放されるのは良いが、相手がアフロディーテだと不安しか無いんだが。


「旨そうなニワトリアルネ、ワタシにクレルなら料理をサービスするアルネ !

 ふとらせて食べるから安心するヨロシ ! 」


 料理を運んで来た女が、恐ろしいことを言っている。


「コケェ~ 」


 仕方なく、アフロディーテに助けを求めると


雪蓮しぇれんさん、このニワトリヘルメスさんは蝶子のペットだからあげないよぉ~ 」


「それならあきらめるアルネ、料理が冷めてしまうから、早く食べるヨロシ 」


 次々と運ばれる料理、美味しそうだがニワトリに変身した為に食べることが出来ない。

 クゥゥゥ、これは失敗したか。

 初めから人間に変身するんだったな…………ハァ 。

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