第124話 嵐のごとく Ⅶ ⑤

【嵐side】


〖ワールドアナウンスが始まります。

 ワールドアナウンスが始まります。

 運営からのお年玉として『精霊国』が解放されました。

 神聖国シンソレーンが解放されました 〗



 不死山に花火が打ち上げられて、皆で


 明けましておめでとう !


 と、ドラマやアニメ、漫画のようなオープニングで年の始めを祝おうとしたのに 運営め、空気読めよな !


 だが、新たなエリア解放に皆が、浮き足だっている。

 やっと、セカンドやサードの街に行けるレベルに成った俺達にはキツイと思うんだが、好奇心には勝てないらしい。


 妹たちは、さっそく運営からの公式情報を確認している。

 この分だと、新エリアに行くことに成りそうだな。

 本当は、第三魔王を討伐に行きたい処だが、今の俺達ではレベル不足だろうからな。

 情報ギルドからの話だと、クリスマスの時にアメリカチームの一部が魔王討伐に向かったが、返り討ちに有ったらしく、再びアタックするためにアメリカチームのレイドを組む準備をしているようだ。


 そんな処に俺達、日本人チームが割り込んでもろくな事がないだろうからな。



 ♟♞♝♜♛♚



 目的地は『精霊国』に決まったが、精霊国の在る場所が不死山のふもとだと判った。

 問題なのは不死山の前にある『帰らずの森』と云う樹海が『神聖国シンソレーン』だと云う事だ。

 つまり、シンソレーンを通過しなければ、目的地の精霊国には行けない。


 神聖国なんて、いかにも胡散臭い処は避けたかったのは妹たちも同意見だ。


 リアルと違いバスも飛行機も無いから徒歩で向かうことに成った。

 まあ ゲームだから、そんなに時間がかからないと思うが……あの運営だからなぁ~。


 乗り合い馬車もあるのだが、俺達が予約しに行った時には、他のプレイヤーに先を越された後だった。


 NPCが営業している店で、食料を中心に買い物をしている間に、サナダが馬車を製作している。

 馬車を引くのは、ペガサスやユニコーンでは無く、ドンチャンどん兵衛キツネデュークマーダーバニーだ。


 子馬に馬車を引かせるのは、流石に気が引けるからな。

 ドンチャンやデュークに聞いたら、筋肉を見せ付けて サムズアップしたから大丈夫なんだろう……たぶん。



 ♟♞♝♜♚♛


 馬車?が完成した。

 二両編成の大型馬車と云うより電車みたいだ。

 最初だけ起動するのに従魔の力が必用だが、後は魔石エンジンを動力として自走するらしい。

 ……ヘパイストスの奴、『やり過ぎ』と云う言葉を知らないからなぁ~。


 新しい街に行って、セーブ、ログアウトしないと行った事が無いメンバーは新しい街に入れ無いシステムだから、眠れる羊たちスリーピングシープ、風林火山のメンバー全員で シンソレーンに向かうことにした。

 ライジング・サンは別行動だが、そのうち合流出来るだろうな。


 ファーストの街を離れる前に、あらためて情報ギルドに確認したら、既にシンソレーンに着いたパーティーが居ることが判った。

 フレンド通信だからくわしいことが判らないが、シンソレーンはエルフの国だと云う。

 定番の設定と同じで、俺達プレイヤーのヒト族に対して高圧的だったらしい。

 そして美男美女の集団だった事が判明した。


 さあ、出発だ !

 今、初日の出が昇る !

 希望の光を目指して !


「全員、乗ったか ! ……出発進行 ! 」


 俺の号令で、ドンチャンとデュークが気合いを溜め始め…………急発進 ! 爆走を始めた。


 舗装されて無い道無き道を走るから、れる 揺れる ゲームとは云え酔いそうだ !


「おい、巧 ! スプリングとか付いて無いのかよ ! 」


 たまらずリアルネームで文句を言うが、


「もちろん『ショックアブソーバー』は付けたが、想定外の揺れだから仕方ないんだよ!」


 逆ギレした巧と文句の言い合いをしている内に魔石エンジンが回り始めた。


「よし、ドンチャンもデュークも魔石列車に乗ってくれ ! 」


 俺の合図に二人?共、魔石列車に乗り込んだ。

 馬車と云うより電車みたいだから魔石列車と命名した。


 99……と名付けようとした由利凛を止めた俺は

 偉いと思う。

 俺達が通う学園から名前を取り、

『魔石列車アヤメ号』

 で落ち着いた。

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