第111話 嵐のごとく Ⅵ ⑦

【嵐side】


「おい、エスデス!

 もう、お前の三文芝居は良いから止めろや !」


 少しビックリしながらエスデスが、


「アタシを信じて! 仲間を信じたい気持ちは判るけど、サナダさんは本当に……


「だ・か・ら・お前の悪行は全部バレているんだよ 、大根役者!」


 さっきまでウソ泣きしていたエスデスが目を吊り上げて、


「証拠はあるんですか ? 無いですよね !

 そういうのを『冤罪』というんですよ !」


 完全に、ブリっ子の仮面ががれていることに気がついていないようだな。


「あるよ、証拠。

 きちんと録画していたからな !」


「ヘッ ? 録画していたなら頭上に『REC』が表示されるハズよね !

 アンタたち、誰も表示されて無かったじゃないのよ !」


 そう、このゲームは録画をすると盗撮防止の為に頭上に『REC』のマークが表示される仕組みに成っている。

 蝶子ことアゲハも『REC』を頭上に出していることが多い訳だ。


「もう、出て来て良いぞ、ベル、チュウ太郎ネズミの従魔


 潜伏せんぷくスキルで姿を隠蔽いんぺいしていた ふたりが出て来た。


「バッチリ撮ったよ、ケンシン!

 ボクってカメラマンに向いているかも !

 自分の才能が恐いね !」


 別の意味で恐いわ!

 何でも直ぐに順応しやがって !


 チュウ太郎が洞窟内を偵察した時に使っていたビデオカメラをベル用に創ったんだよ、ヘパイストスが!


「こんな事もあろうかと……」


 と言いながらベル用のビデオカメラを出してきた時は、思わず突っ込みそうに成ったわ!


「…………それで! アタシを脅すつもりかい。

 だけど残念だったわね、アタシは何も規約違反をしている訳じゃ無いから、何も恐くは無いんだよ!

 ザマアミロ !」


 ……やっぱ、女は恐いわ !


「脅す? 何か勘違いしていないか。

 只、情報ギルドにお前の悪行をバラして貰うだけだからな !

 このゲームでお前と組んでくれるプレイヤーが居なく成るだけだから心配するなよ !」


 完全にキレているなヘパイストス


「チクショウ、アタシに何のウラミがあると云うのさ!

 まさか、正義の味方ゴッコかい!

 そんなことより、アタシと組まないかい、なんだったらイケナイ事も考えても良いよ !」


 サナダギレンロッキーもウンザリした表情をしているな。

 もちろん、俺もだが……唯一、シリウスマーズは顔を朱くしているが、意外とコイツはムッツリなのか ?

 逆に龍騎は良く理解していない処は、お子ちゃま なんだよな。


「なあ、どうして こんな情けないことをしているんだ ?

 別に普通にプレイしても充分楽しいと思うんだが?」


 素直に疑問をぶつけてみた、金だけの問題とは思えなかったからだ。


「なんだい、今度は説教かい…………いいよ、教えてやるよ!

 単に仲良しプレイが気に入らなかっただけだよ !

 どいつもこいつも良い人ブリやがって !

 一皮けば、男なんて下品な猿の癖にさ !

 だから、アタシが化けの皮をがしてやったのさ!」


 何だ、この女、男にウラミでもあるのか?

 だったら、事情酌量の余地も………


「てめえの事情なんて関係ねえよ !

 理由は簡単、お前と同じで気に入らないから排除するだけなんだからよ!」


 ギレンロッキーの奴、それじゃぁ、俺達が悪人みたいじゃないか…………やっぱり『ロキ』の記憶があるんじゃないのか ?



 結局、エスデスを残して俺達は、ファーストの街に戻ることにした。


 エスデスは残って、しきりに『チクショウ!』を繰り返していた。

 素直にゲームを楽しめば、結果も違っただろうに……




 一方、女子パーティーも二手に別れて罠に嵌めるそうだが、…………


 風林火山パーティー と 眠れる羊たちスリーピングシープパーティー、どちらにバルトスが行くのか知らないが、少しだけバルトスに同情するぜ!

 俺達、男パーティーと違い、妹たちもアゲハ蝶子も怒らせたらヤバいからな。



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