第109話 嵐のごとく Ⅵ ⑤

【由利凛side】


 現在、妾は凪ことクーフリンとデートをしているのじゃ。

 姉の恵利凛ことエリーゼとマーズことシリウスとのダブルデートなのじゃ。

 妾も そろそろ光介のことを諦めて前に進む為に試しに凪と付き合うことにしたのじゃ。

 邪神だった時には、悠久ゆうきゅうの時間に慣れていた為に気にしなかったが、人間に転生して限りある時間を意識するように成ったのじゃ。


 辺奈へんななぎ


 少しだけ残っている女神の権能ごんのうを見たのじゃが綺麗な緑色の魂だったのじゃ。

 まだ、汚れていない魂の持ち主を妾が保護して妾の色に染め上げるのじゃ !


 恵利凛とマーズが初々しく手の指先だけを繋いで居るのを見て羨ましいそうに見ている凪は可愛いい。

 ここは、大人のレディとして妾がリードしてやるのじゃ!


 !? 凪の手を握ると顔を赤くして恥ずかしがっているので、つい調子に乗って


「妾と手を握るのは嫌なの ? 」


 ウルウルした瞳で見上げたら、


「そんな事は無いよ ! むしろ、嬉しいよ、由利……ユカリンちゃん」


 ウブなのじゃ、ウブなのじゃ ! 可愛いのう ♪


「まだ、妾たちは友達以上恋人未満だから、ここまでで我慢するのじゃ !

 妾と もっと仲良しに成りたいのなら勉強は当然じゃが身だしなみや精神もきたえるのじゃ !

 妾からの、お・ね・が・い・なのじゃ !」


 お化粧なんかは、しなくても凪は妾に夢中なのじゃ!

 真珠の涙しんじゅ のような涙を浮かべたら男の子なんて、イチコロなのじゃ !


「由利凛ちゃん、僕 頑張るから待っていてね !」



 ♟♞♝♜♛♚♙♘♗♖♕♔


琥珀こはく(白虎)side】


 あっ 悪女だ…………異世界の元・邪神だったわね。


「由利凛ちゃ~ん、お姉ちゃんを置いてかないでぇ~」


 このシスコン……潮来天音ことミルキーに頼まれて、一緒に潮来姉妹の次女、三女の二人のデートを後ろから観察している。

 普段は、一見 優秀な優等生に見えるけど、中身はポンコツなのよね。

 あらためて月読さまを尊敬してしまうわね。

 天音の正体が天照皇大神だと言っても誰も信じないでしょうね。


「ほら、琥珀ちゃん! 二人が行ってしまうから追うわよ ! 」


 やれやれ、学園生活もこれくらい積極的に成ってくれれば、由利子先生も安心するでしょうに。


「はい はい、あんまり張り切り過ぎて、恵利凛ちゃんや由利凛ちゃんにバレたら嫌われるわよ、お姉ちゃん天音!」


「え~、それは嫌だよぉ~、恵利凛ちゃんや由利凛ちゃんに嫌われたら、嫌われたら、どうしよう~」


 ……その半分、四分の一で良いから弟神の月読さまや素戔嗚命スサノオノミコトさまを大事にしてあげてよ、日本神話な最高神さま天音



 ♟♞♝♜♛♚♙♘♗♖♕♔


【由利凛side】



 凪と一緒に歩いていると、冒険者パーティーが内輪揉めをしていたのじゃ!


 どうやら女性パーティーで、男の子の取り合いをしているらしく、今にも戦闘に成りそうなのじゃ。


「バルトス君は私とお付き合いをするんだから、貴女は手を引きなさいよ、ブス!」


「勝手に夢におぼれていなさいよ!

 バルトス君は私とお付き合いするのよ !」


「身の程知らず! 二人ともブスの癖に、引っ込んでいなさいよ!」


 どうやら女性三人に男の子一人のパーティーみたいなのじゃ。

 しかし、あのバルトスと云う男の子は気に入らないのじゃ。

 三人の喧嘩けんかを止める訳でも無く、ニヤニヤ見ているだけなんて悪趣味なのじゃ。


「決闘システム『バトル・ロワイアル』完全決着モードで決めるわよ 」


「「ヤライデか ! 」」


 おー、おー、血の気が多い女の子たちなのじゃ!






 やがて激闘の末に一人の女の子が勝ち上がり、バルトスとヤラに告白するものの、


「ボク、暴力的な女の子は苦手なので、お断りしますね。

 それじゃぁ、サヨウナラ 」

 と言いながら立ち去ってしまったのじゃ。


 さっ 最低なのじゃ !

 想いは一緒らしく妾たち四人は呆れ果てて立ち尽くしていたのじゃ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る