第107話 閑話 闇を斬り裂く者たち《ダークパルサー》 ③

世野中よのなか 舐芽輝なめてるside】


 災い転じて福となす


 日頃の行いが良いからか、幸運の女神は俺の味方だったようだな。

 凪は心配しているようだが、子供の頃から護身術に柔道をしていたのが、功を奏したのか受け身を取っていたようで、頭は打っていないようだ。

 ひ弱な頭でっかちのエリートとは違うのだ。


 モブとは違うのだよ、モブとは !


 これからのスーパーエリートは身体も鍛えないと出世できないぞ!


 大江戸明日菜を探していたが……鴨が葱を背負って鍋まで持って来た訳だな。

 この男が、ケンシンこと大江戸嵐だと云うことには、直ぐに気がついた。

 俺に対して負い目があるだろうから、それを利用して明日菜と お近づきに成るとするか。


 クックックッ、直ぐに『策』が思いつく我が才能が恐いぜ!



 ♟♞♝♜♛♚



 しばらく走っていた車が止まったから着いたのだろう。

 凪に支えて貰いながら車から降りると大きな民家が有った。


「デカっ! ちょっと古いけど広い庭に畑もあるし家も増築して長くて『コの字』に成っているのなんて初めてみたよ!」


 凪が想わず漏らしたが、確かにデカイ家だよな。

 ……しかし、金持ちのワリには平屋の古くさい家に住んでいるよな~。

 それと、やけに猫が多いよな……まさか、全部を飼っている訳では無いよな。

 猫たちの視線が痛いが気のせい、気のせい。

 犬と違い猫は何を考えているか解らないから苦手なんだよな。



 俺が運び込まれた部屋は客間だったらしく、直ぐに布団が引かれて横に成ることに成った。

 戸々で待っていれば、明日菜に会えるはずだ。

 凪は、ともかく 大江戸嵐は邪魔だと思ったが、いっそのこと利用してやろうと考えた。

 そう、俺は被害者なんだ。

 上手く同情を誘って距離を縮めて、仲良くなればめたもの!

 後は、俺の魅力でメロメロにするだけだ。


 しばらくすると、大江戸姉妹と潮来姉妹が帰って来たようで、全員が俺が横に成っている部屋に顔を見せに来た。


 …………凄い !


 ゲームと父から貰った情報に写真が添付されていたが、全員が美少女だ。

 明日菜は当然だが、潮来天音も凄い美少女だ。

 タイプは違うが俺にこそ相応しい!

 いっそのこと、二人共めとるか?

 幸い、今の日本は『一夫多妻、多夫一妻』が認められている数少ない国家だ。


 ※あくまで、この物語の設定です(作者より)


「由利凛ちゃん、可愛い~……僕と結婚してください ! 」


 凪の言葉に、時が止まった!ザ・ワールド?……気がした。

 ちゃっかり潮来由利凛の手を握り告白しているバカひとり。

 こんな事、優秀な俺どころか、神だって予想出来るかぁー !

 モブ枠だと思っていたのに、ヤムチャ無茶しやがって !

 当然、フラれるものだと思っていたのに、何を考えているのか、このペッタン娘由利凛は『ニヤリ』と笑いながら、


「友達からなら良いのじゃ。

 ここからは、お主しだいじゃぞ ?」


 ヤメー! その娘を見た目で判断したら危険だ !

 潮来天音や大江戸明日菜はのような気高さを感じるけど、その幼女は絶対に悪女だぞ、考え直せ!


 頭の中では叫んでいるのに声が出せなかった。


 ポン


 俺の肩に手を置く大江戸嵐が首を降りながら、


あきらめろ、お前の友達は由利凛に気に入られてしまったようだ。

 俺は、彼を『勇者』だと認めよう」


 待て、待て、待て ! 俺の計画していたシナリオと全然違う方向に行ってしまったじゃないかー!


 最初から俺だって上手く行くとは思っていない!

 だから、何度でもアタックしてから、ある日突然に無関心を装って関心を持って貰い俺の存在価値と魅力に気がついて貰う予定だったのに、凪の暴挙で台無しだ。



 ♟♞♝♜♛♚♙♘♗♖♕♔


【明日菜side】



 驚いた、驚いた、由利凛たら何を考えているのかしら?

 てっきり、あの少年世野中 舐芽輝が私を狙っていると思っていたのに……

 辺奈へんななぎ、彼の告白は女神でも予想外よ!

 だからこそ、人間は愛おしいわ。

 天界の神々には予想の上の行動をする。

 私達、大江戸兄妹は由利凛の玩具にされるのではないかと かれを心配していたけど……


「許しませーん! お姉ちゃんは認めませんーん!

 由利凛ちゃんに男女交際は早すぎます !

 恵利凛ちゃんだって反対だったけど、お友達だから我慢したのにぃ~ !」


 シスコンお姉さま天音が猛烈に抗議していた。

 結局、由利凛に言いくるめられて『友達から』と云う条件で認めちゃったけど……それで良いの、日本神話の最高神さま。


 …………どさくさ紛れで、 世野中よのなか 舐芽輝なめてるも私達の友人に成ってしまったのは、素直に感心してしまったわね。

 人間のズル賢い知恵も油断出来ないわ!












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