第104話 嵐のごとく Ⅵ ③

【運営side】



「なんじゃぁ、こりゃぁー !」


 思わず、有名刑事ドラマの有名俳優の殉職のセリフが出てしまった !

 出来損ないの巨石の迷路にゴブリン達が次々とのみ込まれ消えていくのが判る。

 ゴブリンに続いて入ったオークまでもが、瞬く間に消えてしまった。


 ……いったい、中で何が起きているんだ ?

 霧で隠れて確認出来ないのが、もどかしい。


「 おい、チートズルはしていないのか、この迷路 !」


 もし、何らかのチートズルをしているなら、あの娘由利凛のアカウントをBANバン(取り消し)しないとイケナイな 」


「 ……確認しました !

『オモイカネ』及び 各カーディナルは『チート』を確認していません !

 アノ『迷路は違法行為で無い』と言っています !」


「なんとぉー ! 」


 否、ギャグじゃ無くて本当に驚いた。

 なら、アレはいったい何なんだ ?


 ヒソ ヒソ ヒソ


 スタッフ二人が何か話しているのに気づいて聞いて見ると、


「アノ巨石の迷路は、『三国志演義の石兵八陣じゃないか ?』と話していたんですよ ! 」


 コイツら三国志オタクだったのか。

 それより『せきへいはちじん』は、確か孔明の技? だったか。


「 おい、おい、三国志演義なんて、ファンタジーみたいな物語だろう。

 これは、ゲーム…………ファンタジーゲームだったな」


 と、云うことは『オモイカネ』が承認したと云うのか!


「あっ、クレイジーモンキーが、巨石の上に登り始めました ! 」


 良し、ヤッタれ !

 昔のファンタジーに現代ファンタジーが負ける訳にはいかないんだよ !


「 ああー、 クレイジーモンキーが次々と墜ちて行ってます ! 」


 猿も木から落ちる と云うが、巨石から墜ちるハズは無いハズだ。


「 後方から狙撃されています !

 プレイヤーネーム『エデン』と従魔マーダーバニーが狙撃しています ! 」


 クッ、だが、まだ手があるハズだ !

 …………隅の方でガッツポーズをしているアホ発見 !

 後でアイツは説教だな !


「アラクネの指示で、オーク達が巨石を倒そうとしています ! 」


 そうだ! 迷路なんて、壊してしまえば問題ない !

 ばか正直に迷路に挑む必要なんて…………


「ああー、……


「今度は何だ? 落ち着いて報告 !」


「 雷魔法と炎魔法でオークが消えてしまいました !」


 ……なぁに、まだアラクネとコボルトが残って居る。


「 あの~、安心している処、悪いのですがバックアタックでアラクネとコボルト達は全滅しました」


「……敵、プレイヤーは誰だ ?」


 俺は冷静に聞いたつもりだったが、声がうわずってしまった。


「アラクネは『ライジング・サン』のミルキーに一刀両断されて、コボルト達はトモエとクリスに全滅されてしまいました 」



 …………完全に俺達、運営の負けが決定してしまったのか。


 クッ クッ クッ、これくらいの事は想定内だ !

 最後に笑うのは俺達運営だ !


 高笑いをスタッフ達は冷たい目で見詰めていることに気付かないチーフだった。



 ♟♞♝♜♛♚♙♘♗♖♕♔



【嵐side】



 終わってみれば、呆気なかったな。

 まあ、俺達の敵には不足だった訳だ !



 ポン !


 肩を軽く叩かれたので振り向くと ベルが、


「 大丈夫、ボクは嵐の味方だよ ♪」


 クッ、ベルに慰められるとは !

 良し、次こそは俺のターンだ !


 しかし、石兵八陣かぁ~……バカに出来ないなぁ~

 漫画の三国志を読み直して見るか !


 スタンピードを無事に抑え込んだので、皆が勝利を喜んでいる。



 タッラッタ、タッタッタァー ♪


 何処かのゲームのレベルアップの音楽に似た曲が響いた後、



〖ワールド・イベント『初めてのスタンピード防衛戦』が、クリアされました。

 クリアボーナスとして、各プレイヤーに『100ポイント』がプレゼントされます。

 後日、貢献度ボーナスが別途プレゼントされますのでお待ちください〗


 ワールド・アナウンスがされると、一斉に大騒ぎに成った。

 ほとんどの日本人プレイヤーは参加したから喜んでいるが、防衛戦を無視してボス攻略をしていたアメリカチームは悔しがっているだろうな。


 義を見てせざるは勇無きなり


 日本人で良かったぜ !


 そういえば、クリスも防衛戦に参加していたのを見たが、何処に行った ?


 俺が クリスを探して、キョロキョロしていたら、


「誰を探しているのかな、弟くん ♪

 クリスなら最後の仕事が残っているから、ログアウトしたわよ 」


 天姉アマねえ(天音)こと ミルキーが声をかけてきた。


 そうか、ログアウトしちゃったか…………最後の仕事 ?


「クリス……蛍ちゃん の教育実習も終了が近いからレポート創りに忙しいみたいだよ。

 今回は、皆のピンチだったから無理して助っ人をしてくれたのよ」


 そうか、俺の為にクリス……蛍は助けてくれたんだなお前(嵐)の為じゃ無いよ !




 こうして俺達の初めてのワールドイベントが終了した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る