第102話 嵐のごとく Ⅵ ①

【運営side】


「ウワァァァー ! 『ワールド・イベント』前にプレイヤーに見付かってしまったぁぁぁー !」


 その叫び声に俺達、運営スタッフは叫び声を上げた H夫の見ていた画面に集まって居た。


「『ワールド・イベント』と云うと、スタンピードを起こしてファーストの街を襲わせるイベントのことか?」


 俺が、H夫に問い質すと


「 チーフ、完全にバレてしまいました !

 それも、時間稼ぎに洞窟の入り口を崩された上に氷魔法で封印されたので、モンスター達の力だけでは直ぐに実行出来ません !

 コチラ運営から介入して入り口を開けようとしたら、『オモイカネ』に拒否されてしまいました !」


「「「「「「 なんだってぇぇぇー ! 」」」」」


 大江戸グループの最高傑作、スーパーコンピューター『オモイカネ』。

 日本が世界に誇る、スーパーコンピューターだ !

 大江戸勇気 副社長 兼 AI開発担当部門長 と 外部取締役 兼 コンピューター開発部門長 ディーン=アスガルドが創り上げた スーパーコンピューター で、このコンピューターで日本でトップクラス、世界有数の企業にのし上がった。


 当然、このゲームの管理も『オモイカネ』が管理している。

 だから、この人数で運営をまわしていけるんだ。


「カーディナル・システムは、何て言っているんだ !? 」


「 それが、カーディナル・システムのウチ、4つが『オモイカネ』に賛成しています !」


「残り1つは ?」


「それが、……その……ワールド・イベントを発見したプレイヤーの側にいて連絡が取れません !」


「それじゃぁ~、コチラからは見ていることしか出来ないと云うのか ?」


 これじゃぁ、SFのように俺達がコンピューターに管理されているみたいじゃないか !


 だいたい、なんでプレイヤーに発見されたんだ。

 あの場所は、わざわざ探さないと見付からない場所だぞ…………まさか!



「R子、お前が初心者チビッ子プレイヤーに、チョッカイをかけたのが原因なんじゃないかぁー !」


「ちょっと脅せば、秘密の洞窟に近づかないと思ったのよぉぉぉー !

 それが、誰よ!

 あんな趣味に走ったモンスターを制作したのはぁぁぁー ! 」


 ……S美が目を反らしたのを見逃さなかったぞ、俺は。

 お前かぁぁぁー !

 1体だけで無く、2体も創りやがって !

 キチンと自分の仕事をこなしているから気がつかなかったぞ!


 あまり冒険をしないでこもっているプレイヤーや そろそろきてきているプレイヤーのスパイス代わりに組んだイベントだったのに発見されるとは !


『オモイカネ』が特定のプレイヤーに肩入れするハズは無いし、これは完全に俺達運営の失点だな。




 ♟♞♝♜♛♚♙♘♗♖♕♔



【嵐side】


 ファーストの街に戻った俺達は冒険者ギルドと情報ギルドに報告した。

 そして、フレンド登録した奴らにも連絡した。

 当然、ファーストの街は大騒ぎに成った訳だ。

 だけど、セカンドの街やサードの街からも攻略組を含めて高レベルのプレイヤーが助っ人に来てくれたから大丈夫だろう。


 街の外壁、モンスター達が来る方向で、ユカリン由利凛が、土魔法で沢山の岩をアチコチに立てている。


「何を考えているんだ、ユリリンは? 」


 思わず出た独り言にエデン英里香(エリス)が教えてくれた。


石兵八陣せきへいはちじんだと言っていたわ。

 昔の中国、しょくの軍師 諸葛孔明の『策』だそうよ。

 別名 帰らずの陣 と云うらしいわ」



 ※ 諸葛孔明の十八番「奇門遁甲」を利用した、地理把握・地形利用・情報処理・天候予測・人心掌握の五重操作からなる、まさに軍略の奥義にして最終形態というべき閉鎖空間 』(Wikipedia参照)



「そういえば、由利凛からすすめられて読んだ漫画の三国志で見たな。

 だが、アレは『蜀』贔屓ひいきの演義の架空の話だろう」


 そう、劉備を贔屓した三国志演義を漫画にしていたから事実は違うハズだよな。


「お兄さま、ココはファンタジーゲームの世界だから、条件がそろえば、コンピューターが判断して実現される世界よ !

 私が『不和と争いの女神』なら、ユリリンは『悪戯いたずらの女神』。

 悪戯に関しては、右に出る者は居ないわよ 」


 いやいや、これをと言って良いのか ?

 そういえば、人間に転生してから大人しくしていたから忘れていたが、コイツユリリンの悪戯は洒落にならないんだよなぁ~。


 あ~あ、イキイキと土魔法で巨石を配置しているユリリンの姿を見て、少しモンスター達が気の毒に成ってしまった。

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