第97話 嵐のごとく Ⅴ ⑬

【嵐side】


 きゃっ♪きゃっ♪


 陽野芽ひのめ星奈せな流星ペガサスユニユニコーンに乗せて貰って、ご機嫌だ。


 二人を連れて来た時に怒って二人に説教をしようとしたカゲトラ龍騎は二人に嫌われて、今は部屋の隅でイジケている。


「にーにー、嫌い!」「お兄ちゃん、嫌いです!」


 可愛い妹の言葉の刃はクリティカルヒットだったようだな。


 とりあえず陽野芽と星奈には、二人だけでフィールドに出ないこと、知らない人には追いていかないこと、俺達以外とはフレンド申請をしないこと、を約束させた。


 世の中には、ロリコンも多いからな。


 そして、俺が出かけている間に妹達は情報を集めていたらしく『モモタロウ印のキビダンゴ』について効能が判明した。


 アリア明日菜エデン英里香が運営にも質問したらしく正しい情報だ。


 キビダンゴは、ボスや魔王はテイム出来ない。

 キビダンゴは、高レベルのモンスターもテイムできるが、テイム出きるのは一度切りで、テイマーか従魔が退場したら従魔契約が白紙に戻りモンスターと成った従魔は、その場から消える。


 従魔契約を続けるなら、


 低レベルの従魔は、一つのキビダンゴで一月契約が続くが、高レベルに成る程、契約期間が短くなる。



 え~と、つまり何だ?

 俺が考えているとユカリン由利凛が、


「つまり、あの逃げたテイマーは もうレッドデビル・グレートベアーもブラックデビル・バイパーもテイム出来ないのじゃ!」


 おー、それは良いことだ。

 だけど、ユカリン由利凛は大事なことを忘れている!

 俺が大事なことを言おうとしたら、


「私が運営に事情を話したら、悪用防止の為にキビダンゴの販売を中止することにするそうよ。

 せっかくのヒット商品に成りそうだったのに運営には悪いことをしたわね」


 ニコニコしながら言うエデン英里香

 ……悪いなんて 少しも思っていないクセに、この悪女め!

 あっ、英里香エリスも邪神だったわ!

 ……最近、神だった頃のことを忘れてしまう程、人間は楽しくて仕方ないんだよな!


 小さなお客さんに従魔たちも喜んでいるようで、すっかり打ち解けている。

 タヌキチが宴会芸で陽野芽と星奈を喜ばせていたら、ウサピョンが対抗意識を持ったのか、アクロバットを始めている。

 ……お前は体操選手か! と云う程にいろいろな技を披露ひろうしている。


 ウサピョン龍騎の従魔に負けるんじゃないぞ、タヌキチ俺の従魔




 ♟♞♝♜♛♚♙♘♗♖♕♔


【運営side】



「ウワァーン! 中学生に論破されたぁー!

 くっ悔しいよぉー!」


 先ほどのユーザーとのやり取りで、悔しいのかA子が泣きわめいていた。


 泣きたいのは、こっちだ! スカポンタンめ。

 せっかく、テイマー人気にあやかって、新商品を売り込んだ矢先に、こんなことになる成るなんて!


 モモタロウ印のキビダンゴ


 なかなかモンスターをテイム出来ないユーザーに向けた親切商品。

 それを、まさか悪用されるなんて!

 あれほど、ケースバイケースを検討するように言っていたのに……クソゥ、上手くもうかれば『特別ボーナス』だって貰えたのによ!


 質問とクレーム、提案をしてきたのは、未成年の中学生ユーザーだった。


 問題が有ったのは理解したし少し修正してから、そのまま売るつもりだった。

 だから上手く言いくるめようとしたら、逆に此方こちらが論破されてしまった。


 それならそれで無視して強行突破しようとしたら、逆に権力で跳ね返されてしまった。

 まさか、クレームを言ってきたのが 例の大江戸グループの社長令嬢の大江戸明日菜と大江戸英里香だなんて!


 二人共、大人顔負けの論理的思考を持っているようで、英理異徒エリート大学卒業のスタッフが論破されてしまった。

 チーフに相談した結果、キビダンゴは販売中止に決定してしまった訳だ。


 AI部門担当で副社長の勇気婦人の娘、明日菜お嬢様


 ファッション部門担当で副社長の楓婦人の娘、英里香お嬢様


 母親も凄い才能の持ち主だと思っていたが、娘も凄いなんてもんじゃなかったな。


 才色兼備さいしょくけんび


 プレイを見る限り息子さんは、アレだけど変な魅力があるのも事実なんだよな。



 いろいろ納得はいかないが、大江戸グループは安泰だな!

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