第60話文化祭、一日目の夜

【由利凛side】


 家に帰ってから直ぐに恵利凛と一緒に反省文を書いたのじゃ。

 こういうのは、早く提出した方が良い印象を与えるからなのじゃ。

 一応、真面目に書いたから大丈夫だと思う。

 楓おばちゃんから、

『パソコンなどを使ってコピペすると由利子先生お母ちゃんにバレるから、やらないように』

 と、忠告して貰っていたのじゃ。

 文化祭は、後一日あるから自由に見学出来るけど、何処を見て廻るか悩み処じゃのう。

 少し、からかい過ぎたせいか、嵐お兄ちゃんも意固地に成ったから尾行しても蛍先生に、告発しそうに無いのじゃ。


「男なら当たって砕け散るべきなのじゃ!

 アタック、アタック、ナンバー ………なんじゃったかのう?」


「砕け散ってたまるか !

 他人事だと思って、からかいやがって!

 だいたいネタが古いんだよ、令和の若者に解るかぁー!」


 それは妾が悪いんじゃ無く、作者のセンスが古いのじゃ!


「 告白しないと気持ちは伝わらないのじゃ!

 蛍先生は可愛らしいから、グズグズしていると誰かに先を越されてしまうと思うから言っているのじゃ!」


 蝶子アフロディーテちゃんと付き合うよりマシだと思っているから、お手伝いしようと思っているのに、


「 何を企んでいるか、判らないが余計な事はするなよ!

 ガツガツしていると嫌われるかも知れないから、スマートにかっこ良く決めて、れて貰うんだからよ!」


 余裕綽々よゆうしゃくしゃくに言っているけど、男の子が少なく女の子が多い世界だからと安心していると、気が付いたら良い娘は皆が彼氏付きに成って居ると云うのに、しょうがないお兄ちゃんなのじゃ。


「……嵐お兄ちゃんは、ウチのクラスの只野ただのくんを知っている?」


「 もちろん知っているぜ!

 おとなしくて、目立たない奴だが良い奴だよな」


「良い奴?」


 意外なのじゃ、二人の接点なんて無さそうなのに……


「ああ、この間、給食の肉詰めピーマンのピーマンと三色ゼリーを交換してくれたんだぜ!」


 ごっ 極悪なのじゃ!

 いくらピーマンが嫌いとは云え、デザートのゼリーと交換させるなんて、最低なのじゃ!


「なっ なんだよ、その目は !

 無理やり交換したんじゃ無いからな !

 前に、只野が不良にからまれていたのを助けた事があったから、その礼なんだろう。

 ところで、その只野が、どうかしたのか ?」


「 ……只野くんが恵利凛に告白したのじゃ !」


「「「「「えっーーーー ! 」」」」」


 妾と嵐お兄ちゃんの話しを盗み聞きしていた大江戸兄妹が客間に雪崩れこんで来たのじゃ !


 それからは、皆からの質問攻めにあって大変だったけど、一番ショックを受けていたのは 嵐お兄ちゃんだったみたいなのじゃ。



 ♟♞♝♜♛♙♘♗♖♕


【嵐side】



 驚いた、本当に驚いた !

 あの目立たない、大人しそうな只野が告白なんて……だから、人間は恐ろしいんだよな。


 そう言えば、ユリリン達が管理していた世界の大魔王も元は人間だったな !

 あまりにも凶悪だから悪魔かと思ったら人間だった訳だ。


 由利凛の話しだと『まずは友達から !』と云うことに成ったようだが、人は見かけに由らないのだと云うことが判った訳だな。


 ここは、俺も行動に移すべきなのか?

 知らない誰かに、クリスを取られるのも嫌だしな !

 ライバルは、同級生よりも蛍と同じ大学生かと思ったが、只野みたいな奴が現れる前に蛍、本人や周りの奴らにアピールした方が良さそうだな。

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