第49話嵐のごとくⅢ ⑨

【嵐side】


「貴方が湖に落としたのは、オリハルコンの斧ですか、それともアダマンタイトの斧ですか?」


 湖から出て来た女がオリハルコンの斧とアダマンタイトの斧を持っていた。

 レベルが上がった俺達がスキルポイントで取った『初級鑑定』で見たから間違い無い!

 湖の女も『湖の妖精女王』と出ている。

 詳細な事は初級鑑定では確認出来ないから、レベルは相当に高いんだろう。


「 私の落としたのは、古びた普通の斧です。

 オリハルコンやアダマンタイトの斧ではありません」


 ばか正直な奴だなぁ~、嘘でもオリハルコンかアダマンタイトと答えれば、どちらかを貰えたかも知れないのに!


「正直な貴方には、落とした斧の他にオリハルコンの斧とアダマンタイトの斧も差し上げましょう」

 そう言ってヨサークは、3本の斧をゲットしていた。


「イソップ物語の『金の斧銀の斧』だな!

 そうか、コッチが本命か」

 と、ギレンが独り言を言っていたので、サナダに『金の斧銀の斧』の物語を教えて貰うことにした。


 サナダの話を途中まで聞いていたアゲハが、何を思ったのか自分の武器の『鋼のモーニングスター +3』をぶん投げたのだ!


 それは、弧を描き湖にポッチャリと落ちた。


「これで、アゲハもオリハルコンのモーニングスターとアダマンタイトのモーニングスターをゲットだね!

 アゲハ、あったまいいっー良い!」


 そっ そうか、その手があったか!

 蝶子アフロディーテに遅れを取るとは、正直 悔しいが俺も後に続かなければ、と思い『鋼の剣 +11』を湖に投げ入れようとした時に、サナダとギレンに止められてしまった。


「何故、止めるんだよ!

 アゲハだけオリハルコンやアダマンタイトの武器を取られて悔しくないのかよ!」

 文句を言う俺にサナダが、


「いいから少し落ち着けよ!

 アゲハの結果を見てからでも遅くは無いだろう」

 サナダの言葉を不思議に思いながら、ギレンを見るとうなずいていた。

 ……二人の忠告を聞くことにしたら、


「そろそろ出て来ても良い頃なのに、何で出て来ないの~妖精さーん!

 …………えっ、嘘! わっ 私のモーニングスターがロストしちゃったよぉー!

 返してよぉー、私のモーニングスター! 詐欺! 泥棒! 運営に文句言ってやるんだからねぇー!」


 アゲハが文句を言いながら空中に画面を呼び出して運営に連絡を入れているようだが…………予想に反して直ぐに返事が来たらしいが、やはりダメだったらしくアゲハの目付きが凄く悪かった。

 あっ 危ねぇー!

 危うく、せっかく鍛えた剣をロストする処だったよ。

 流石にショックだったらしく、無口に成ったアゲハは恐かったが、とりあえず無事にクエストを成功することが出来た。

 クエスト報酬として20万エンジャーとオリハルコンの斧を貰ったが、装備出来るのは『見習い鍛冶師』のサナダだけだった。

 オリハルコンの斧をうらやましそうに見ているアゲハには辟易へきえきしているが気持ちは判るぜ。


 クリスには、分け前として4万エンジャーを渡してから別れることに成った。



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