第48話 嵐のごとくⅢ ⑧

【嵐side】


 アゲハのせいで、パーティー内がギクシャクしている。

 本当にロクでもない事ばかりするな、アゲハアフロディーテ


 魔の森を進んでいたら、さっそく戦闘に成った。

 相手は『ゴブリン』だったが、俺の『鋼の剣 +11』が火を吹いて鋼の剣が火を吹く訳無いだろう!スパスパとゴブリン達を斬り捨てていく。

 攻撃は最大の防御!

 攻撃に全振りしたのは正解だぜ!


 サナダもギレンもサクサクとゴブリン達を倒していく中で、アゲハだけはチクチクとゴブリン達を攻撃していた。

 しょうがねぇなぁ~、 ゴブリン相手に手こずっているアゲハの代わりにゴブリンを斬り捨てた。


「ありがとう~、ケンシン!

 やっぱり、ケンシンは優しいなぁ~♪

 このゲームには『結婚システム』があるから、アゲハが結婚してあげても良いよぉ~❤️」


「全力で遠慮します!

 いや本気マジで拒否するぞ!」


 助けを求めてサナダギレンロッキーを見ると、既に退避していやがった!


「ウフフ、可愛いんだぁ~❤️

 恥ずかしがり屋なんだからぁ~、大丈夫だよぉ~優しくしてあげるからぁ~♪」


 だっ 誰か助けてください!

 もう二度と悪いことはしませんから、神様、女神さまぁ~お前も元神だろう!


「まあまあ、その変にしておきなよ。

 まだ、クエストの最中なんだからさ、痴話喧嘩は後にしてクエストに集中しないと!」


 クリスが止めてくれたお陰で、アゲハも愚痴ながらも引いてくれた。


「ああ、女神さま!

 クリスが女神だったのなら信者に成っても良いくらい感謝しているぞ!

 ありがとう、クリス!」

 俺が礼を言うと、


「いやいや、それは洒落に成らないから遠慮しておくよ。

 これは、あたしと君との友情の証なんだから気にしないで欲しいな。

 それと、さっきの告白は内緒にしておくね」

 と、クリスがウインクして人差し指を口唇に当てたのだった。

 そのチャーミングな姿にドキドキしてしまう自分に戸惑っていた。

 これが人間の『恋』なのかも知れないと気がついたのは、だいぶ後のことだった。



 ♟♞♝♜♛♚♘♗♕♖♙♔



 どうにかこうにか、苦労してエルダートレントを倒した俺達は近くの湖で遅い昼食を食べていた。


「ゲームとは云え、こうして腹が減りメシを食っているとゲームと現実の違いが判らなくなるなぁー」

 俺の独り言にサナダが、


「そうだな、最近のゲームの技術は凄まじいな。

 科学が進むと魔法みたい成ると言われているが、本当に『剣と魔法の世界』を再現させられた処を見ると魔法使いと云うより創世神みたいだよな」


 そんな、とりとめもない話をしていたら、護衛しているNPC木こりのヨサークがオノを湖で洗っていた処、斧を湖に落としてしまった。


 おいおい、ポリゴンが相手なんだから血糊ちのりが付く訳でも無いのに洗う必要があるのかよ。

 科学が進んだと言ってもNPCの人工知能も大した事無いなぁ~…………と、思っていたのに。


 ヨサークの前に湖から出てきた女が語りかけて来たのだった。


「貴方が湖に落としたのは、オリハルコンの斧ですか、それともアダマンタイトの斧ですか?」

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