第40話嵐のごとくⅢ ②

【嵐side】


 結局、蝶子の奴をパーティーに入れる事に成った。

 背に腹はかえられないからな。


 そんな蝶子のアバターの名前は『アゲハ』だそうだ。

 わりとマトモな名前で拍子抜けしてしまったことは内緒だ。

 そして、職業は『僧侶戦士』

 あの有名な勇者の物語に出てくる勇者パーティーのヒロインの始めの職業と一緒な訳だ。


「『聖女』を探したんだけど上級職みたいで選べ無かったから、『僧侶戦士』にしたのぅ~。

 僧侶戦士でレベルアップしたら転職神殿で『聖女』に成るんだぁ~。

 かわいい可愛い かわいい可愛い蝶子………アゲハちゃんは、ヒロインだから良いよねぇ~」


 何が『聖女』だよ!

 お前なんかアフロディーテは『性女』じゃないか!

 と言えたら、どんなに楽なことか。


 おふくろ女神ヘラが念入りに記憶封印したから大丈夫だと思うが、念には念を入れないと何処で記憶が復活するか判らないからな。


 ♟♞♝♜♛♚♙♘♗♖♕♔



 とりあえず俺達はレベル上げの為に『角ウサギ』と『ゴブリン』を狩る為に初心者の草原に来ている。

 ちなみに『スライム』だが、某・国民的RPGゲームのような雑魚では無く、ウィザ◌ドリ◇基準の難敵で物理攻撃も魔法攻撃も効きにくいモンスターなんだ。

 それを知らない奴らのパーティーは舐めてかかって全滅したとのことだ。

 そんな俺達のパーティー名は『眠れる羊たちスリーピング・シープ』だ。


 そう、友人ダチである奴らのパーティー名を拝借させて貰った訳だ。


 そんな事を考えている間に『角ウサギ』が現れた。

 奴らの攻撃を盾で防いだ後に、皆でタコ殴りにする。

 レベルが低い間は単独行動は『死』に直結している。

 別にデスゲームでは無いのだから死んでも本当に死ぬ訳では無いんだが『デスペナデスペナルティ』が馬鹿に出来ないんだよな!

 所持金が半分に減るし、しばらくは行動不能に成り武器や防具も消耗してしまうので補修をしなければ成らない。

 まさに踏んだり蹴ったりな訳だ。


 タコ殴りにした角ウサギに止めを差したのはアゲハだった。


「容赦ねえなぁ~」

 と、思わずサナダが漏らしていた。

 元嫁だから思う処もあるのだろう。


「えっ、可愛いと云っても所詮ゲームでしょう

 だったら遠慮しないで蝶子………アゲハの役に経った方が良いよねぇ~」


 ………女がドライなのか、コイツアフロディーテがドライなのか判らないが、女に幻想を抱くのは危険だな。


 嬉々として止めを差してまわるアゲハを見て思ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る