第29話お迎え、ご苦労様です。

【龍騎side】


「龍騎、天音を迎えに行くから付き合いなさい!」


 琥珀こはく姉さんから命令されてしまった。

 クソゥ、こんな事ならもっと早く登校するんだったな。


「龍騎ぃ~! 返事はどうして無いのかなぁー。

 まさか、姉の言うことに逆らうのかなぁ~ 」


「『行かない!』とは、言って無いだろう

 そんなに怒る事無いじゃないかぁ~ 」



 姉に逆らえる弟は居ない!

 本当に姉と云う生き物は理不尽な存在だよな。


 琥珀姉さんと一緒に大江戸家に向かう。

 天音先輩と琥珀姉さんは親友らしく、部屋から引っ張り出すように由利子先生から頼まれたらしい。

 あの菖蒲あやめ学園の大魔王と生徒達に云われている由利子先生も娘には甘いようだな。


 正直、大江戸家にはが居るから活きたく無いのだが、何故か二人の妹が奴に懐いているから始末が悪い。


「もう! いくら嵐くんが苦手だからと云って、そんなに嫌がる事も無いでしょう! 」


「だけど、姉さん!

 奴は『軍神アレス』の転生者なんだぜ!

 あの狂乱の暴れん坊を警戒するのは当然だろう!」


「 大丈夫でしょう。

 想像していたより狂暴では無いみたいだしね。

 それより、私達の任務は『アノ方』を守護することよ!」


「判ってはいるんだけどよ!

朱雀すざく』は、まだ目覚めていないし『玄武げんぶ』の奴は、寝坊して遅刻したから何処の誰に転生したか、未だに判らないじゃないかよ!

 だいたい『亀』が寝坊するなんて『うさぎとカメ』の物語の『亀』に謝れ! と言いたいよ!」


 そう、俺も姉さんも『四神』の転生者だ。

 日本神話の月読つきよみ様から依頼されて『アノ方』の警護をしているのだが………

 本当に記憶が封印されているのか『アノ方』は!


 その時の俺は気が付かなかった、アイツらが疫病神アフロディーテを俺に押し付けようとしてるとは………




【天音side】


 ピンポーン ♪


 玄関のチャイムが鳴ったけど、ゲームの休憩がてら睡眠を取っていた私は当然、無視をした。


 誰かが出るでしょう。

 私は、ドラゴンファンタジーのボス戦に備えて休まないといけないのよ!


 最初のボス、アニサキース戦で私はレイドを率いている一人だからミスが許されないのよ!



「天音ぇー! 迎えに来たよぉー!

 明日から中間テストだから今日は出席するんでしょう!」


 琥珀の声がした。

 えっ、一日間違えていた?

 出席日数を計算しているから今日から出席しないと試験の成績が良くても留年するかも知れない………!

 留年したら妹たちと一学年差に成るから一緒に学園に通う日が増えるわね。

 お母さんからは怒られるかも知れないけど、由利凛ちゃんや恵利凛ちゃんと一緒に居られるなら…………


 コン コン コン コン


 ノックがされた後にドアが開いて琥珀が現れた。


「どうせ 『留年しても良いかなぁ~♪』なんて考えていたんでしょう。

 天音のシスコンは判っているけど、それはダメよ!

 由利子先生から天音の事は頼まれているんだから、私達と一緒に学園に行くわよ!」


 親友にうながされた私は急いでドラゴンファンタジーでのパーティー『ライジング・サン』の仲間クリスにメールを送った。

 …………クリス、怒るだろうなぁ~、学生は辛いよ!



 その後、私は竜ヶ崎姉弟にドナドナされたのだった………さよなら、私のゲーム生活!


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