医者の星 (前編)

人は人の何処を愛すの?




『熱い!!!』

(フランス料理の星)が完全に消滅して興奮がおさまると、あの光の玉を掴もうとした手が火傷したみたいに熱く、痛かった。


『ルイさん……それは魔熱傷まねっしょうですね。いますぐ治療しましょう。AB59358銀河の(医者の星)への緊急ワープを提案します』

HELLOはすぐに僕の手を見て診断し、提案までしてくる。


『わかった。そこに行くよ』


『わかりました。ルイさん。ワープを開始します。3。2。1。ワープ!』

HELLOがワープと言ったと同時にあたりの星空の星一つ一つが光の線の様に伸びた。



(ズーン)

『わ!』

光の線が伸びに伸びたところで一気に一瞬で、目の前に惑星が出てくる。


『医者の星です。入星審査は完了済みなので。このまま……星管理局からの命令で惑星のBF地区におります』

HELLOは想定外のことだったのか一瞬止まって報告した。



(シュー)

僕は宇宙船が星につくなりすぐに外に出る。


『こんにちは、ルイさん。魔熱傷ですね。担当する。はざまです』

僕の前に僕より5歳かそれぐらいしか離れていないが相当顔の整った男が現れた。


『あ、お願いします』

僕は火傷した手をはざまさんに見せた。


『ん〜これは軽度ですね。治療すればすぐに良くなりますよ。でも、全開までは3日ぐらいですか。まあ、すぐに診察室に行きましょう』



大きな建設中の建物に通され、そして小さな小部屋に連れられる。

小部屋の中はデスクと椅子が二つとベットがある小さな部屋。


『では手を治しますね』

そう間さんは言って、よくわからない機械で、よくわからない事をされた。



手にグルグルと包帯を巻き付けられて

『これで終わりですね。一応3日間はこの病院で過ごしてくださいね。軽度でも手の内部まで軽い火傷したみたいな感じなので。あ、これが3日分の滞在券ですね』


『ありがとうございました』


『いいえ、いいんですよ』


『間さ、さん。魔熱傷の薬の予備を置きに……』

一人の女性が緊張した感じで入ってくる。


『蜜さん。ありがとうね。ちょうどこの患者さん分で最後だったんだ』


『は、はい。で、ではこれで』

最初から最後まで動きが不審だった女性は部屋を出ていった。


『彼女は?』

あまりにも不審だったので聞いてみる。


『蜜さんですか? えーと僕の親友の妹さんですね。彼女、人見知りなのか、いつもおどおどしているんですよね。……はい!もう、診察は終わりですね。お大事に』


僕は診察室を出た。

この建物を散策し始める。


『デカいな』

建物内の地図を見るとそれなりに大きいらしい。

色々回ってわかったけど、この建物にはさっきの診察室みたいのがいくつもあるぽっい。



『間様♡、私、今日は間様のためにお弁当持ってきたんです。このあ!』

『ちょと何よ!あんた!今日は私と!』

『間様♡!さっきの手術も素晴らしかったです!おかげで助かりました。もう、闇さんと同じレベルじゃないんじゃないですか?』

『間様!♡』

……

少し歩き疲れてたので、椅子に座っていると通路からたくさんの綺麗な女性に囲まれた男がこっちに歩いてくる。よくみると、さっき僕を治療してくれた間さんだった。


『あ!ルイさん、一応、完璧に近い治療をしましたが、手の方はどうですか?』

僕を見つけたのか間さんが座っている僕に聞いてくる。


『え?あ、まあ』


『間様が、治療してくれたんです!大丈夫に決まっていますよ!ね!?ぼく?』

急のことだったので言葉が詰まっているところに間さんの周りにいた女性の一人が食い気味に僕に聞いてくる。


『え、はい。大丈夫です』


見心みこころさん、ルイさん困っているよ。それに容体はそんな強引に聞くものじゃないよ。……ルイさん、手の調子はどうですか?』

間さんが聞き直してきてくれた。


『手はもうそこまで痛くないですね。それよりは痒く感じます』


『そうですか……よかったです』

僕の答えを聞いて安心したのか彼はまた通路を歩き始めた。その周りに美女達を連れて。




『ふ〜』

その後は建物併設の食堂で食事をして、食堂近くの小さな庭園のベンチに座った。


(ぱち!、ぱち!、ぱち!)

庭園の花壇の方から誰かが枝を切る音が聞こえる。



『あ、間さん、と……』

花壇の方に行くと、診察時に着ていた白衣とは違う灰色の服を着た間さんと同じ服をきた男の人がいた。


『あ、こんにちは、ルイさん。今日はよく会いますね』

僕に気づいたのか間さんが振り返って答えてくれる。


『そちらの方は?』

気になったので間さんの隣の男性を見る。


『あ〜りく! 僕の患者さんのルイさんだ!』


『陸です。よろしく』

僕を見ると男は陸と名乗った。


『今何してるんですか?』


『あ〜間と一緒に花壇の植物の枝落とししてたんだよ』


間さんが少し補足する。

『ああ、もう、俺と、陸は仕事が終わったからな』



『その木は?』

陸さんと間さんの植えている花の苗が気になった。


『これかい?この木わねガマズミだよ。綺麗な白い小さな花を咲かせるんだ。今はまだ蕾だけど、3日ごぐらいには綺麗な花を見せてくれるよ』



『あ〜〜!!間様!そんな所にいたんですね!。ほら早く、行きましょ!』

一人の女性が庭園に入ってきた。


『アキさん、カフェに行くのは今日の夕方て……』


『いいえ、今調べましたら。夕方は混むそうなんです。今!行きましょ!』


『え、でも、花壇が……』


『花壇?それは後でいいでしょ?』

間さんは半ば強引に連れていかれそうで少し、困っている。


『間、僕はいいよ、後は一人でいいよ。その代わりに、今度僕の妹と一緒に夕食でも行ってあげてくれ』

意外にも陸さんは引き留めなかった。


『あ、陸、あんたさ、こんなことしてる暇あるの?』

陸の存在に気づいたのかアキと言われる女性は陸に少し詰めてくる。


『え、いや、仕事は終わったし……』


『は、レポートとあるでしょ、それに、あんたは今度の陸上大会の選手なんだし、練習しなさいよ、あんたのせいで負けたくないの』

女性は冷たく陸さんを詰めている。


『アキさん、僕も、レポート終わっていなくてサボっているんだ。そこまで言わないでくれ』

間さんが女性の方を宥め始めた


『え〜 なら間様〜、なら!私も手伝いますから、さ!カフェに行きましょ!』

女性がそう言うと間さんを引っ張って庭園を後にした。


『行っちゃた』

『そう、だね。まあ、いつものことだし……あ!そうだ!よければ、ルイさんこれ手伝うかい?』


『やっていいんですか?』

『ああ、まあ、片手だけだからゴミをそこに入れてくれ』



花壇での作業もひと段落したので、終わることにした。

『今日はお疲れ様。怪我人に作業させてごめんね』

『いいえ、面白かったです』

『そうか、それならいいんだ』

そんなたわいの無い会話をして庭園のベンチに座った。

もう、夕方なのか、庭園から見える空は赤くなっている。


『おーい、みんな!!』

間さんが走りながら僕たちの方にくる。


『あ!間!』


『すまない。帰ってくるのが遅くなった。花壇の方は?』

間さんは少し息を切らしながら聞いてくる。


『ああ、一通り終わったよ。見るかい?』

『そうだね』

3人で花壇の方に向かった。


『あれ?』

気づくと自分の手に巻かれていた包帯が解け始めていたので、立ち止まって包帯を巻き直す。


(メキメキメキ!!!)

『あ!』

(ガ!シャーン!!!)

花壇の上にあった建物の一部が落下した。

そして花壇近くにいた間さんと陸さんが瓦礫の中に消えた。


『間さん!!』

僕はすぐに瓦礫の山の近くにいく。



(ガシャ)

『よい、痛!』

瓦礫を退けようと両手を使うと魔熱傷を負った手が痛み動かせない。


『なんだ!?なんだ!?』

『え!大きな音したけど……』

『誰か下敷きになったぞ!!』

近くにいた人や、音を聞いた人が集まってくる。



『君!これはどう言う状況だ!?』

座って呆然と瓦礫を見る僕に黒服の男が話しかけてきた。


『間さんと、陸さんが……瓦礫の……』

僕は混乱する頭から言葉を搾り取って伝える。


『そうか、わかった、力ある奴は手伝え!あと救助ロボットを!』

男はそれを聞くとすぐに周りの人たちに指示を出した。



時間が経つほどに大人や、ロボットが瓦礫をどかしていく。


(ガギギギ)

『うええええ』

瓦礫の一部がどかされると二人の様子が見えた。

というか誰がどっちの方なのかわからない。気分が悪くなり吐いてしまう。



『まずいな、一人は体全体が潰されてるぞ!今すぐ治療室に!!』

『こっちの人は……もう……』

そんな絶望的な会話が聞こえる。




ほんの10分経って、気分も落ち着いたので、あの二人が運ばれた治療室に向かう。


『これでは……』

『ああ、2人とも死んでしまうな』

『1人は五臓六腑すべてを破裂、もう1人は脳の大半を……』

あの2人が入ったとされる治療室の扉の外では僕よりずっと歳をとった医者達が深刻そうに話している。


(シューー)

扉が開き、1人の黒服を着た男が出てくる。

『あれは、酷いですね』


『ああ、闇さんもそうでしょう。こんな酷いのは……もう、助からない。生命維持装置を外しましょう』


『いいえ、彼らは酷い状態ですが、まだ、助かる方法はあります。彼らは幸いにも血液型が同じです。彼らの脳移植を提案します』

闇と言われる男は扉近くにいた医者達にそう提案する。どうやら彼は医者のようだ。


『は?君は何を?』

医者ですらも理解しきれていないらしい。


『ですから、脳以外は軽症の陸さんの体に間さんの脳を移植するんです。一方の体は死滅しますが、一方の体はこの世に残ります』


『闇くん!それはダメだ!臨床の取っていない方法だ!許可できない!』

『そうだ!失敗すれば、イタズラに彼らを弄ぶことになる!』

『そうだ!失敗するぞ!』

『実績の取れていない行為は危険だ!』

黒服の医者の提案を聞いて当たり前のように医者達は反対している。


『皆さん臨床だとか、実績がとか言いますが。私はこことは違う別の星で5回この同じ方法をした。2回はダメだったが3回は成功した』


彼の答えを聞いて医者の1人が聞く。

『すると、これは賭けだな?』


『まあ、賭けでしょう』

あっさりと彼は認めた。


『患者の命を賭けるとは許せん』

『そうだ、間違っている』


『じゃーあんたらは賭けて無いのか?……必ず患者が治るといつも保証して治療しているのか? 我々は使徒でも神様でもじゃない。人間なんだ。人間が人間の体を治すなら賭けるしか無いだろう』


『う……』


『やめますか?これを決めるのは間くんの父親で、この件の責任者である直人さん』


『ああ、頼む……やってくれ』


『わかりました。直人さん、すぐに手術します』

『ああ、お願いする』

黒服の医者がまた治療室に入ろうとする。



『2人を助けてください』

僕はその様子を見て言う。


『ああ、助けるよ』

彼は僕の方に振り返って答えた。


(シュー)

扉が閉まり、(手術中)とランプが光る。




*作者(ライカ)からのコメント

最後まで読んでくださりありがとうございました。そして、すみません。今回はブラックジャックのセリフそのままをパクりました。僕はアニメでしかブラックジャックを知っていませんが、このブラックジャックの手術に対する考え方はすごく好きなので、取り入れました。1

















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る