フランス料理の星
思想の終わり。全ての終わりではない。
アイドルの星を出たあと、また無数の星々が広がる宇宙に出た。
『ルイさん、アイドルの星はどうでした?』
HELLOが聞いてくる。
『うん、よかったよ。でも、なんか違う気がするな』
『そうですか、では続いてはどの星にしましょうか?』
HELLOは頭から宇宙地図のホログラムを出す。
(ルイ様、ご夕食の時間です)
航行室のスピーカーからアナウンスがあった。
『ルイさん、決めるのは夕食の後にしましょう』
『あ、うんそうだね』
僕はリビングの方に行った。
(本日の献立はJ1024型第2日夕食です)
もう既にテーブルには生成夕食があった。
味噌汁、白米、サバの料理だ。もう何億年も前の料理体系が残っているのは不思議だけどそれなりに美味しいのでいい。
お母さんのはいつもパンかパスタのどちらかが毎回出る。お父さんのは毎回、芋が出るやつだった。
これから一生同じ一週間の献立を食べ続けるのは良い気分はしない。
これからの食生活を少し絶望しつつ食事を終えてまたHELLOのいる航行室に向かった。
『ルイさん、お食事はいかがでしたか?』
HELLOはわかりきったことを聞いてくる。
『ああ、相変わらず、変化がなくて嫌だよ』
『そうですか、でしたら、フランス料理の星はいかがですか? 思想歴も9999年なので良いかと考えますよ。平均信用スコアも7000万と信頼安定星です』
『ああ、そうだね。そこでいいよ』
『では進路をそちらにしますね。到着は3時間後です』
HELLOは僕の要求通りに進路を決めた。
『ルイさん、PR映像を観ますか?』
『あ、うんお願いするよ』
HELLOは僕の返事を聞くと、早速、ホログラムを出した。
『えー皆さんこんにちは、料理人のエディションとコウジシモムラです』
映像に二人の男性が出てきた。
『私たち、KJ36247247銀河のフランス料理の星はJH110827銀河のフランス料理の星で修行したできるだけ多くのことを維持することが目的です。この星では料理人になりたい人、料理を食べたい人を歓迎します。以上です』
そこで、映像は終わった。
『何だか、あっけないな』
3時間後、フランス料理の星の衛星軌道に乗った。
アイドルの星と違い、衛星は入星管理衛星しかない。
それに何だか、アイドルの星より黄色っぽい星だった。
『入星の許可がおりました。「思想の砂時計」近くに着陸します』
HELLOは宇宙船を衛星軌道から外し、星の中に入っていった。
「思想の砂時計」のある街まで地表の少し上空を飛んでいると、たくさんの畑が会った。お母さんと見た資料で出てきたような野菜畑、家畜小屋、そんなのが続いている。
『到着しました。ルイさん』
(思想の砂時計)近くで宇宙船を降りた。
『こんにちわ、私はこの星の住民のシェ・イノです。貴方様はこの星で料理を食べに?それとも修行に?来られたのですか?』
降りてすぐに中年の男性が僕に話しかけてきた。
『料理を食べにで』
『そうですか。それはよかった。もう、修行の申請は終了していましたので。よかった。……料理を食べにでしたね、では信用スコアの数値を教えてくださいますか?』
『5000万230です』
別に隠すことでもないので答えた。
『わかりました。では、ABブロックの方の料理店に案内します』
男はそう言うと、一台の車の方に案内してきた。
『珍しいですか?こんな車』
男も一緒に車に乗った。
『ええ、車は資料でしか見ていないので』
『そうですか、まあ、それだけこの星が長いわけですな』
『あそこは小麦畑なのですよ。基本、料理を食べに来る人はあのような畑で1時間ほど手伝いをしてからレストランに行くのですが、今日と明日は特別なのでお客様はする必要はありませんよ』
目的地に着くまで隣に座るシェ・イノさんと雑談しながら過ごした。この星のこと、明日の事。特に明日のことはすごい興味深かった。
『明日で、この星に「フランス料理」の思想がきて。ちょうど、1万年になります。1万年、一つの思想が続くと世界のルールでその思想はその星と共に存在した証拠資料と共に破壊されます。これは1万時間理論と同じで、一つの思想が1万年かけて進化すると、一部では神の領域になるからだそうです。
だから、この星も例外なくここの「フランス料理」についての資料と共に消滅するんですよ、明日。まあ、だからお客さんは手伝する必要なく食べられるわけですね』
車が止まった。
『着きました。ABブロックです。ここのブロックから一つ好きな店をお選びください。これは入店チケットです。一回きりの券なので無くさないように』
そう、男は言ってまた車に乗りどこかへ行った。
僕はBブロックの中をぶらぶら歩いた。
どうやら、Bブロックには十数店舗の店が集まっているみたいだ。
どの店も小綺麗な見た目だ。
「海の滴」
ふと、そんな店名が見えた。他の店はそんなわかりやすいな前ではないので気になって入った。
店内は何だかすごくキッチリとしていた。
何度か故郷の「親の星」で家族とみんなでレストランに行ったことはあるけどそんなの比にならないぐらい、なんだかすごかった。
『こんにちはお客様、お一人様ですね。席にご案内します』
一人のしっかりしたスーツを着た男性が話しかけてきた。
何だかんだで初めて見るスーツは動きづらそうで、何だかかっこいい。
『本日のメニューです』
スーツの男性は今時珍しい紙のメニューを見せてきた。
<海>
木の実
サックとした軽食
海の中
生牡蠣を丁寧に処理したのを海藻ジェル閉じ
知の魚
鰹とサラダ
海と山
白身魚と季節のキノコ
山の力
熟成牛肉のステーキと季節の野菜
秋の味
栗のモンブラン
メニューというより料理の紹介書みたいだった。
他にお客さんはいなかったのか少し経つと、小さな中に何かの豆が詰まったプランターがきた。
『こちらのプランターに入った豆は食べられません。その上にある丸いクッキーのような……』
後半から料理を持ってきた男性の言っていることがわけわからなかった。
でも、要はプランターの中にある豆見たいのはフェイクでその上にある丸い揚げ物?クッキー見たいのを食べるみたいだ。
(サク!)
口に入れた瞬間わかった。とてつもなく美味いと。程よい塩味の後にスーと心地よい微かな苦味、旨みがきた。こんなきのみがあれば常に食べられる、そんな食べ物だった。
一口分しかなかったので物足りない。でも、口から消えた後でも幸福感は残っていた。
『こちらは近海の海で養殖された真牡蠣を下処理し、海を海藻をイメージしたジェルで閉じました。真牡蠣の下には……』
またしても、途中から理解できなくなった。
男性スタッフが説明し終わたみたいなので。スプーンで一口分とって食べてみる。
ブワ!と海に飛び込んだみたいに口の中が海の味がした。けど、海みたいに塩辛くて、変な苦味があるわけではない、美味しい。海みたいなのに海じゃない、そんな不思議な料理だった。
気づけばパクパクと食べてしまい。皿が空になってしまった。
その後も次々と料理が続いた。最後のデザートに至るまで、感想がでないほどに美味しか。
『ご来店ありがとうございました』
最後にスーツの男性スタッフに挨拶されて店を出た。
翌日もまだ(フランス料理の星)にいた。
(思想の砂時計)の近くにきた。
(残り、10時間23分)
そう、(思想の砂時計)には表示されていた。
『こんにちは、お客様』
シェ・イノさんが話しかけてきた。
『こんにちは、今日で思想の終わりなんですか?』
『ええ、この星は全ての資料と共にあそこの表記時間どうりに消滅します』
シェ・イノさんは寂しそうに言う。
『寂しくないんですか?』
『そうですね、確かにこの星で私は60年以上過ごしました。今じゃ、フランス料理の腕前はこの星でも上位ぐらいになりました。それと同時にたくさんの発見をしました。けど、これで私の、一万年かけて作り上げた先人の技術は資料上は消えてしまいすね。いくら私でも、全てを覚えているわけではないのでほぼ全ての技術は消えますね』
『悔し……』
『いいえ、悔しくはありません。いずれ誰もが忘れることです。今回のことがあってもいずれ消えるのですから。全ての技術はそれを作った人、そしてその物が消えます。でも、消えるまでは人々にたくさんの恩恵をあげられます。それでいいんです。
次の世代分の発見や、貢献を残すために今の技術を衰退させるのはいいかもしれませんね。それにここから10000万光年先に同じようなフランス料理についての星があるのでそこでまたフランス料理と共に過ごすつまりだから、寂しくはないね』
『そうですか……』
何だかよくわからない話だ。もしかしたら僕もシェ・イノさんみたいに『好き』を見つけたらわかるのかな?
『私はこれから星を出る準備するから。行くよ』
シェ・イノのさんは何処かに行ってしまった。
空の上ではひっきりなしにシェ・イノさんみたいに星を出る準備をしている宇宙船が飛び交っている。
(コロン)
目の前を走ってきた男性の荷物から一本のフォークが落ちた。
『あの!落としましたよ!』
咄嗟にそのフォークを取って呼び止めたが、止まらなかった。
『ダメか……』
どうしようもないのでポケットにそのフォークを入れた。
その後は誰も使わなくなった昨日乗ったのと似た人員輸送用の車で星をぶらぶら走らせた。
どこまでも続く小麦畑、たくさんの家畜、野菜畑、それらを管理するためなのロボットたちは昨日とさほど変わらない。彼らは置いてかれるのかな?
『フランス料理の星に居る方々にご連絡、これより30分後に思想の終わりの儀を行いますので星から5万km離れた位置まで退避してください』
どこからか、案内の音声が聞こえた。
(シューー)
それと同時に呼んでもいないのに僕の宇宙船がきた。
『おかえりなさいませ。ルイさん。これから30分後に獣王アガネイア様による。(思想の終わりの儀)が行われますのでこの星から離れます』
宇宙船に戻るとHELLOが出迎えた。
『ああ、わかってる。HELLO行こうか……』
『はい』
『あ!HELLO! その儀式て、僕たち見れるかな?』
『はい、ご覧になれますよ。ご覧になるようでしたら、この宙域に留まりますね』
『うん、ありがとうHELLO』
宇宙船は(フランス料理の星)を一望できるところまで停止した。
(ピューン)
儀式が行われるほんの数分前、一本の黄金のように輝く光の柱が誰もいなくなった星へ伸びていった。
『アガネイア様が星に到着されたようですね』
HELLOがそう言った。
『HELLO、その人の様子みたい』
咄嗟に聞いてみた。
『はい、わかりました。超光学望遠で写します』
HELLOはそう答えるとあの(思想の砂時計)を望遠で写してくれた。
(思想の砂時計)の前には灰色の装甲板のついた唾の大きい帽子と全身に灰色の装甲をつけた人が一人いた。
『あの方が、獣王アガネイア様です』
HELLOが少し教えてくれた。
(思想の砂時計)が残り5秒を示した時に
アガネイアはてから一瞬で黄金の杖を出現させ、左手で持つ。
(パーーン!!)
『わ!』
残り時間が0になった瞬間、その黄金の杖の先端が光ってすぐにHELLOの出してくれた望遠映像全体を黄金の光で包んだ。
光が強くて一瞬目を瞑りまたすぐに開くと、いくつもの思いが集まっていた星は消え、代わりに巨大な光の黄金に輝く玉がその場所にあった。
『わ!』
僕のポケットからも似たような光が出た。
『え?』
その小さな光の玉を掴もうとしたが、掴もうとした手が通り抜ける。
そしてその巨大な黄金の光の玉に吸収された。
『ない!?』
すぐにポケットに手を突っ込むと星で拾った一本のフォークが消えていた。
『光が……』
その巨大な光の玉は急激に収縮した。
HELLOの出していた望遠映像を見ると。アガネイアの前にその収縮した光の玉はあった。
(シュ!)
その収縮した光の玉はすぐに彼の持つ黄金の杖に吸われた。
(ピューン)
光の玉が吸われ完全に消えるとアガネイアも光になって何処かへ行った。その様子はまるで光の柱だった。
綺麗に彼らの全ては消えた残ったのは漆黒の冷たい宇宙空間だった。
でも、寂しさはない。ほとんどが失われたけど、記憶は残る、思いは残る。それでいいのかもしれない。
*作者(ライカ)からのコメント
最後まで読んでくださりありがとうございました。今回はフランス料理の星でした。今回の出てきたフランス料理の星の住民の名前は全て日本にあるフランス料理店の名前から来ています。また、作中に出てきたフランス料理は全て(エディション・コウジ シモムラ)で実際に出されたコースを参考にしています。結構な値段のする店ですが美味しい店だそうです。
また、作中の主人公の感想は私自身が友人の撮った写真を見ただけの感想なので、そこまで参考になりません。
アガネイアの持っていた杖のイメージはお釈迦様が持っているような杖をイメージしています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます