第4話 そのクエスト、完遂済です!

 そしてリュールにはお礼を言った。


「助けてくれてありがとう。冒険者って言っても色々いるんだな」

「当たり前さ。冒険者っていう思想集団じゃないからね」


 ――おぉ、令和にも通じる深い話だ。


 感心すると、受付嬢さんが声をかけてきた。


「ではこちらがソウタ・クジョウさんの冒険者証です。さっそくクエストを受注しますか?」


「ん、じゃあ森での採集系クエスト全部見せてください」

「こちらになります」


 新人冒険者用なのか、受付嬢さんは迷いなく近くの引き出しから分厚い紙束を取り出した。


 受け取った俺はざっと目を通す。

 言葉が通じている時点でお察しだけど、転移者は言語に不自由しないらしい。

 知らない文字なのに、何故か意味を理解できた。

 不思議な感覚だけど、方言を読むのに近い。


 関東人の俺は感謝するときに【おおきに】とは言わないけど、その言葉を目にしたら感謝の意味だとわかる。


 そんな感じだ。


「何かいいのはありましたか?」

「はい、じゃあここにあるの全部イケますね」

「え?」

「さっきまで森にいたんで、全部アイテムボックスに入ってますよ」

「ま、まさかそんな……」


 受付嬢さんは目を丸くしてから、次々クエスト読み上げた。


「ヒールベリー10キロ」

「ほい」

「毒消し草5キロ」

「ほい」

「ブルーキノコ8キロ」

「ほい」

「ヒールベリー20キロ」

「ほい」

「ペーパー草15キロ」

「ほい」

「カラッカ粘土30キロ」

「ほい」

「キュアリーフ23キロ」

「ほい」

「ハルゼミの抜け殻50個」

「ほい」

「ビターベリー7キロ」

「ほい」

「ヒールベリー28キロ」

「ほい」


 俺はアイテムボックスSから大量の多種多様な薬草や木の実、キノコを取り出して見せた。


 そのたび、他の職員が査定、計量していき、読み上げる受付嬢さんはみるみる目を丸くしていく。


「い、今ある採集系クエスト……全部完遂です……これ、全部クジョウさんが採取したんですか?」


「はい。じゃあこれでクエスト完了ってことで」


 俺が飄々と答えると、受付嬢さんは開いた口が塞がらない様子だった。


「へぇ、キミってば凄いんだねぇ」


 リュールに凄いと言われると、なんだか誇らしかった。もっと言って。


「あの、確認ですがクジョウさんは行商人でこれらは商品、ということはないですよね?」

「もちろん、全部ちゃんと採集したものですよ」


 俺が胸を張って答えると、受付嬢さんは圧倒された顔で作り笑いを浮かべた。


「で、では報酬をお支払いしますね。えーっと全部合わせて……」


 ソロバンをはじいてから、受付嬢さんはギルドの奥から持ってきた麻袋をカウンターに置いた。


「金貨480枚。ご確認ください」

「ありがとうございます。清掃系と街の中での運送系クエストも全部俺が受けます」

「えぇっ!?」


 驚愕パート2の顔を見せて、受付嬢さんは声を上げた。


「て言っても俺、この街は初めてだから、道案内の人を紹介してくれませんか? ガイド料は払うので」

「それならボクがやるよ」


 意外なことに、この国唯一にして最強のAランク冒険者、しかもソロ様が名乗りを上げた。

 背後の席で、さっきの三人組が悔しそうにしているのが背中越しにも分かった。


「助かるけどいいのか?」

「構わないよ。キミの仕事ぶりにも興味があるし」


 ――あーなるほど、俺のスキルに興味があるのか。


 一瞬、アイテムボックスSのことを教えてもいいか悩んだ。


 けど、アイテムボックススキルはリュールも持っているみたいだし、初対面の俺を助けてくれた性格を考えると、スキル目当てで俺から搾取するってこともないだろう。


 そう考えた俺は、素直に感謝した。


「わかった。じゃあ行こうか」

「OK」

「って今から行くんですか!? クエストは全部50以上もあるんですよ!?」

「はい、だから走って行きますよ。あ、リュール、夕食まだなら果物受け取ってくれるか?」

「へぇ、気が利くね」


 俺はアイテムボックスから森で取れた果実をてきとうにポンポン出した。

 リュールはカウンターの上に転がる果物を次々自分のアイテムボックスに入れて、最後の一つであるリンゴのような果物は手に取りかじった。




・人気になったら本格連載!

・この第4話に8PVついたら5話目投稿!

※PV プレビュー 本文の視聴回数のこと 今みなさんが目にしているのは4話。

2話 3話 などそれぞれの作品にアクセスするごとに各話のPVが1増えます。

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