第3話 ヒロイン登場! 作者:いつも爆乳ヒロインでゴメンナサイ

 その日の夕暮れ時。

 俺はちょっとテンションを落として冒険者ギルドに来ていた。

 羽扉を両手で左右に押し開けると、酒を飲む男達で埋まった丸テーブルの間を通り抜けながら、奥のカウンターへ向かった。


「こんにちは。初めてですか?」


 若い受付の女の子が、優しくほほ笑みかけてくれる。


「はい初めてです。それと凄く遠くの国から来たんで、一応、冒険者とギルドの説明をしてもらえますか?」

「わかりました」


 受付嬢さんは嫌な顔ひとつせず、穏やかな口調で説明をしてくれた。

 彼女の話をまとめると、こんな感じだ。



 冒険者とは金次第でどんな危険な仕事も引き受ける何でも屋。

 収入源は主に二つ。

 ひとつはモンスターや薬草、鉱石などの素材を冒険者ギルドで換金すること。

 もうひとつはクエストと呼ばれる依頼をこなして報酬を貰うことだ。

 クエストは初心者向けの薬草採取やただの清掃活動や土方仕事から、上級者向けの凶悪モンスターの討伐や要人警護まで様々らしい。


 聞けば聞くほど、ラノベの世界まんまで助かった。


 冒険者には実力に合わせてランク付けがされており、難易度の高いクエストをこなすか強力なモンスターを討伐することで、昇格するようだ。


「登録されますか?」

「入会費や年会費はありますか?」

「ありませんが、初回のクエストの報酬から銀貨一枚分が差し引かれます」


「強制的に命令をされることはありますか?」

「ギルドからの強制クエストがあります。王室からのクエストや、街の危機などで発動されます」


「規則違反時の罰則はありますか?」

「罰金や活動停止、除名処分はありますが、刑法に触れる場合は憲兵さんが対応します」


「辞めるのは自由ですか? 何か制約はありますか?」

「ありません。いつでも好きな時に辞められます」


「じゃあ登録します」

「ありがとうございます。貴方が良き冒険者になりますよう祈ります」


 定型文なのだろう。

 営業スマイルと共に、受付嬢さんは両手を合わせた。


 それから、ギルド証の発行手続きをしてくれる間も、俺のテンションは低かった。


 森では散々ハイテンションになったけど、よく考えてみればこの世界があのDQN王とクズ神官のいる世界かどうかわからないのだ。


 殺意の波動の行き場が無いという肩透かしに、肩を落とすと、背後から羽扉の開くベルが鳴った。


 誰かが来たのだろう。

 俺は気にも留めなかった。

 ただ、周囲の音が変わったことは聞き逃せなかった。

 酒盛りで騒いでいたむくつけき男たちの笑い声は鎮まり、色めき立つようなひそひそ話や畏怖の声が取って代わる。


 なんだろうと振り返ると、そこにはまばたきをするのがもったいないぐらいの美少女が歩いてた。


 腰まで伸びた長い銀髪は歩調に合わせてやわらかく揺れ、長いまつ毛に縁どられた切れ長の赤い瞳が印象的な美貌は男だけでなく、女性と言えば二度見してしまうだろう。

 加えて、すらりと手足の長いプロポーションでありながら、豊満すぎる胸が青い軍服越しでも存在感を主張してきて、つい視線を奪われた。

 女性冒険者の多くは鎧の胸当てをしているのに、彼女の軍服には装甲が一切なく、だからこそ彼女のメリハリボディがよくわかる。


 ――エ、エロ過ぎる!


 トップコスプレイヤーがさらに画像加工技術を総動員したような2・5次元美少女が、だけど3次元に存在していた。


 その魅力たるや底無しだ。

 奇跡の美少女が桜色のくちびるを開いて、凛とした美声を奏でた。


「レッドドラゴンを討伐してきた。素材はアイテムボックスの中に入れているから、後で裏で査定を頼むよ。ひとまず、証明はこれで」


 彼女の白くたおやかな手に、セイウチのように巨大な牙が現れた。

 対応している隣の受付嬢さんは興奮しながら彼女のことを褒めたたえている。

 当たり前だけど、やっぱりドラゴンて凄いんだな。

 なら、それを倒すこの美少女も相当なものだろう。

 などと俺が感心しながら彼女の美貌にくびったけになっていると、乱暴な声がかかった。


「おいクソガキ、テメェ新顔のくせにリュールをじろじろと見てんじゃねぇよ」

「はい?」


 振り返ると、コワモテのおっさん冒険者が斧を片手にドスを利かせてくる。

その背後には、似たようなおっさんたちがメンチを切ってくる。


「リュールって彼女の名前?」

「そうだ。リュールはこの国最強のソロ冒険者で唯一のAランク、まさに英雄だ」

「今回のレッドドラゴンだってAランクパーティー推奨で、ソロで倒せる奴なんざいねぇよ」

「そのリュールに失礼な態度取りやがって、ヤキを入れてやるからこっちこい」


 男の手がにゅっと伸びてきたところで、俺はすかさず口を開いた。


「おいリュール、お前の親衛隊が俺に暴力を振るおうとしてくるんだ。お前主人ならなんとかしてくれよ」


「「「なぁっ!?」」」


 リュールは長い銀色のまつ毛に縁どられた真紅の瞳で俺と俺の背後を一瞥すると、意外と気さくな口調で息を吐いた。


「親衛隊? 生憎、ボクにそんなものはいないよ。そいつらは赤の他人さ」


「え? じゃあお前らなんで勝手にリュールを見るなとかヤキを入れるとか言っているの?」


「ひ、人様に迷惑をかけるふてぇ野郎だからだ。オレはこう見えて正義の味方なんだよ!」


「リュール、お前いま困っていたの?」

「別に?」


「だってさ、じゃあお前ら勘違いってことは席に戻った戻った」

俺に論破された男たちは顔を真っ赤にして歯ぎしりをして拳を震わせた。


「テメェ、ベテラン冒険者であるオレらにナメた態度取ってんじゃねぇぞ!」


 男が斧を振り上げると、俺の真横を白銀が貫き、鋭利な切っ先が男の額に着きつけられていた。


 白銀の正体はハルバード、視線で根本を辿ると、銀髪の美少女リュールがニヒルな笑みを浮かべていた。


「人様に迷惑をかけるフテェヤロウはボクが許さないよ。こう見えてボク、正義の人だから」


 あまりのカッコよさに俺は恋に落ちた。

 赤面して表情をトロけさせる受付嬢さんからは百合の花の香りがした。

三人の男たちは憤激を押し殺すように歯を食いしばり、息を呑んでから背を向け、席に戻った。


 俺は心の中でざまぁみろと言ってやった。

 そしてリュールにはお礼を言った。



・人気になったら本格連載!

・この第3話に4PVついたら4話目投稿!

※PV プレビュー 本文の視聴回数のこと 今みなさんが目にしているのは3話。

2話 3話 などそれぞれの作品にアクセスするごとに各話のPVが1増えます。

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