第2話 イケメンリア充にファイアーボール!

「それはちょっと無いんじゃないかなぁ」


 感動的な場面に水を差したのは、イケメンリア充グループ筆頭、鈴木森だった。

 さも当然とばかりにリーダー気取りで演説を始めた。


「姫様。彼は女子たちの言う通り下品で危険な人物です。女性の胸にしか興味が無い性犯罪者で、姫様の部下になるのも体が目当てでしょう」


 ――ギックゥウウウウウウウウウウウウウウウン!


 俺は心臓に激痛を感じ冷や汗を流しながら声を荒立てた。


「な、なにを言っているのかねチミは! いいか! 確かにエリーゼ様は素敵なバストをお持ちだ! エリーゼ様以上に魅力的なバストを俺は知らない! エリーゼ様の部下になれば毎日この豊乳が見放題とかあわよくば触れるかもしれないだとか俺が武功を立てればナマで見せてくれるかもしれないだとか、そんな不埒な理由で部下になったとでも言うのか!」


「姫様! これがこいつの本音です!」

「クソッ、誘導尋問なんて卑怯だぞ!」

「自滅だろ……」


 鈴木森を中心に男子たちが残念なものを見る目になった。


「姫様違うんです! 確かに俺は爆乳至上主義者で大きなおっぱいが大好きで死ぬときはおっぱいで窒息したいと思っていますが決して姫様がおっぱいいっぱいだから部下になったわけではなく貴女の聡明さと高潔さに惹かれたのです! おっぱいはオマケです!」


 エリーゼの凛々しい顔が赤く染まって眉が八の字に垂れた。


「そ、そんなにコレがいいのか?」


 両腕でスイカ大のバストを挟み込みながら手で当ててから、ぽつりと、


「うれしい」


 と呟いた。


 ――え? なにこの反応?


「ともかくだ下宮、オレと決闘しろ。それでオレが勝ったら、お前はベクター王子の軍門に降るんだ」

「ヤダ」


 手前勝手な都合を言われても困る。

 ていうかラノベやマンガのあるあるだけど、勝っても得るものが無い決闘って受けなくていいだろ。


「悪いけど、これも姫様を守るためだ。問答無用だ!」


 鈴木森は近くの衛兵の腰から勝手に剣を抜くと、いきなり斬りかかってきた。

 令和男子にあるまじき倫理観に、俺は頭痛を覚えた。


 ――何コイツ、頭が異世界ハイになっているのか?


 文明人でも災害時は暴力や窃盗を行うように、人間は緊急事態になれば道徳も倫理観も吹っ飛ぶものだ。

 一方で、クラスメイト達は盛り上がり、鈴木森を応援する始末だった。


 ――やれやれ。


 これがジョブの力なのか、俺には賢者スキルでできることの全てが頭の中にあった。

 まるで長年やり込んだゲームよろしく、この場の適切な魔法を使う。


「喰らえアルティメットアブソリュートダークネスフレーイム!」


 と叫んで両手を挙げて注目を集めつつ、膝から魔法を放った。


 ――スリープ。

「ん、急に眠く」


 ――パラライズ。

「あ、脚に力が、わわ」


 ――シャドウ。

「え、急に暗く、ぐぁっ」


 ――ポイズン。

「ッッ、ごほっ! がはっ! い、痛いぃ!」


 半目になってから足をもつれさせて転び、床に手を着くこともなく顔面を打ち付けた鈴木森は、床に剣を転がし両手で宙をひっかきながら苦しんだ。


「ファイアーボール」

「あッぁあああああああああああああああああああ!」

 顔面が炎に包まれた鈴木森は髪が燃え尽きた。

 回復魔法で火傷は治っても、髪は生えてこないだろう。

 しばらくはオシャレ坊主になるがいい。


「キャー! 鈴木森くーん!」

「大丈夫か鈴木森!?」

「下宮くん最低! 卑怯だよ!」

「そうだ! 男なら正々堂々戦え!」


 道徳心や倫理観の吹っ飛ぶ異世界転移でもなお、バカたちはスクールカーストにこだわっていた。

 アホ過ぎる。


「勇者で剣術スキルを持つ鈴木森が剣で戦って、賢者スキルで全魔法スキルを持つ俺が魔法で戦って何が悪いんだよ?」

「言い訳すんなよ性犯罪者が!」

「そうよ性犯罪者が逆らってんじゃないわよ!」

「しゃっざーい! しゃっざーい!」


 あまりにムカついたので、俺の道徳心と倫理観が吹っ飛んだ。

 どうせここは異世界。日本じゃない。

 なら、俺も日本の倫理観に縛られる必要はないだろう。


「わかった、お前ら全員俺の敵だから。賢者を敵に回したこと、後悔すんなよ」


 賢者、という単語を強調すると、クラスメイトたちは全員ひるんだ。

 反省してももう遅い。

 連中の今の態度で、俺の中の同じ日本人同士とか、クラスメイトとかいう最低限の連帯感も消えた。


「じゃあ姫、参りましょう。こんなクズ共と付き合うことはありません。貴方の部屋で、貴方が王になるための話をしたい」

「そうか、ではついてきてくれ」


 エリーゼは活舌よく返すと、鋭く踵を返して門へ向かった。

 大きすぎるおっぱいがワンテンポ遅れて振り返り、ドレス越しでもわかるヒップラインがセクシーだった。


 ――おっぱいもいいけど、お尻もいいなぁ。


 新しい性癖の門を開きながら、謁見の間の門をくぐった。






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●今日の雑学 同じカップ数なのに見た目の大きさが全然違う人がいるけどどうして?


 ブラのカップはトップバストと、胸の下周りのアンダーバストの差で決まります。

 差が10センチでAカップ、12・5センチでBカップ、15センチでCカップと2・5センチおきに上がります。

 ですが例えば、同じ10センチ差でも、円周10センチのボールと20センチのボールは大きさが全然違いますが、円周100センチのボールと110センチのボールではぱっと見、差がわかりませんよね?

 同じ理由で、

 小柄な細身の女性でアンダーバスト60センチトップバスト75センチのCカップは大きく見えますが、

 大柄でプラスサイズ体形で、アンダーバスト90センチトップバスト105センチのCカップは小さく見えます。

 また、女性によって胸の形も違い、奥行き、高さ、横幅のあるなし、谷間を作っているかどうか、で印象はかなり変わります。

 なので、同じ15センチ差のCカップでも別物に見えます。

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