第14話 『万能戦闘メイドロボのバストサイズを決めてください』『え?』
ギルマスが提案してくれた祝賀会のお誘いを全力で断った俺は、街で一番高くて気密性の高い宿を取った。
夕食は一階の食堂で取る形なので、部屋に誰かが訪ねてくる可能性はゼロだ。
誰もいない、この世界においては上等に分類される部屋にこもると、カーテンを閉ざしてからウィンドウを開いた。
【人工魂搭載・万能戦闘メイドロボ零式タイプA:レベル70相当の戦闘力を有する自律型メイドロボ。自己修復進化機能付きで、戦闘に関するあらゆる技能を発揮し、家事万能にして夜の相手も全能の力を発揮する】
最後の一文を意識してしまう【魔法使い】らしさを発揮しながら、俺は高鳴る心臓を押さえながらタップした。
すると、
【容姿を選択してください】
【貴方の深層心理を解析を完了。好きなパーツを選んでください】
メッセージが上にスライドして、代わりにキャラクリエイトのような画面が開いた。
身長、手足の長さ、太さはもちろん、髪型、顔のパーツをかなり細かく決められるようだ。
地球ではルッキズムの厳しい時代だけど、控えめに言って、どのパーツもトップアイドル以上の魅力があった。
でも悩む。
髪型、顔、鼻、くちびる、輪郭は数百種類もある。
全部の組み合わせをいちいち試していられないし、違いが微妙過ぎてどっちにすればいいのかわからないのもある。
――キャラクリってパーツが多すぎると逆に困るんだよなぁ……。
そうして俺が悩んでいると、
【貴方の深層心理、記憶の解析が完了しました。デフォルトフェイスを100パターン表示します】
「おぉっ!?」
新たに表示されたのは、既に完成された100パターンの美少女顔アイコンだった。
どの子も地球のどの人種とも違う、CGのような2・5次元美少女ぞろいだ。
なんだか、美少女ソシャゲ公式サイトのキャラ一覧を見ているようだ。
ウマむす●とか。
どの子も凄く俺好みで目移りしてしまう。
さすがは俺の深層心理と記憶を解析して作り出したデフォルトフェイスだ。
100体全て欲しいと言う剥き出しのハーレム願望を抑えながら吟味する。
泣いても笑っても俺が創造できるのは一体のみ。
この100体の中から、厳選せねば。
そうして俺は、腰まで伸びた長い髪を後頭部で結んだポニーテールでおでこをつるっと剥きだしつつ流れるような前髪を左右から胸下まで垂らした髪型が美しい、切れ長のクールな瞳が魅力的な美人さんを選んだ。
髪の色は青で瞳は紫色、身長はちょっと高めの165センチだ。
【続けて、ボディラインを設定してください】
「ボディラインぶばぁああああ!?」
カメラが引いて、全身が表示された。
服装を設定していないせいか全裸で、大事な部分が丸見えだった。
全身がつるんとした体は細身で、産毛すら生えていない。
妙な背徳感と優越感の間を彷徨いながら、俺は目のやり場に困りつつ体のパーツを選択していった。
等身大ドールのような美しくスラリと長い手足、それから、ふとももはちょっと肉付きを良くした。
抱きしめれば折れてしまいそうなウエストや腕は好きだけど、ふとももはムチっとして欲しい。
ウエストはグラビアモデルやアニメにありがちな58センチ。
アンダーバストは背が高めなので68センチに設定した。
現状、けっこうなスレンダー美人さんだ。
【ヒップサイズと形を決めてください】
なかなか踏み込んできた質問に、俺はドギマギしながらお尻の形を決めた。
まるでエロ画像を検索するように容赦なく、キュッと上に持ち上がった丸い、ブラジルのセクシーモデルのようなお尻を選んだ。
サイズも、大人びた美人で長身なのだから大きいほうが似合うだろう。
可愛い小尻は、今後、小柄メイドちゃんを創造する機会に残しておいた。
画面の中では、男の欲望丸出しのエロボディがちゃくちゃくと完成に近づき、下半身がグラグラと湯だっていくのがわかる。
30年間使われることのなかった男性機能が、今にも暴発しそうだ。
【おっぱいの設定を決めてください】
【おっぱいの大きさ、形、柔らかさ、弾力】
【乳輪の大きさ、色、形、柔らかさ、弾力】
【乳首の大きさ、色、形、柔らかさ、弾力】
――ふぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
俺は心の中で絶叫した。
一瞬のうちに理性と衝動が激突して奥歯が砕けそうなぐらい噛みしめた。
俺は人並み以上に巨乳が好きだ。
しかしだからといっておっぱい星人の欲望がままに爆乳にしていいものか?
おっぱいはお尻以上に目立つ場所だ。
爆乳メイドを連れて歩けば、今後、周囲の人たちは俺をどう見るだろうか?
まして創造スキルで創造したメイドロボだと知ればなんて言うだろうか?
「え? わざわざあんな爆乳にデザインしたの?」
「ウスイって見下げ果てたおっぱい星人野郎なんだな」
そんな幻聴が聞こえてきそうだ。
二次元キャラのおっぱい表現について風当たりが厳しい昨今の世論もあり、頭の中では世間体を気にする理性と性欲の権化たる衝動が100進100退の激闘を繰り広げ、俺の中で何かが弾けた。
がくんと落ちた頭を持ち上げた時、俺は賢者のように透き通った一点の曇りもない感情で指を動かした。
世論はおっぱい描写に厳しく、ここで爆乳を選んだら俺はゲス野郎のそしりを免れないだろう。
それがたった一つの真実なのだ。だが。
――そうだ。ここ異世界だった。
俺は欲望のままにトップバストサイズの
それから他の、18禁でも表現がはばかられるような設定もしてから、俺は最後に決定タブをタップした。
すると、目の前に光のグリッド線が走り、人型を形成してからテクスチャを張るようにして実体を厚みを得ていった。
グリッド線は彼女の裸体を隠すように、肌にテクスチャが張られる直前に服を描き、実体化させていく。
ついに、念願の万能戦闘メイドを作り上げた感動に打ち震える俺の前で、和服の裾がふわりとやわらかくたなびいてから重力に従い落ちた。
服装は、あえてメイド服ではなく着物の上から割烹着風メイドエプロンを着せた和風メイドにしてみた。
メイドさんは眠り姫のようにまぶたを落として佇んでいた。
彼女の美貌はウィンドウ越しに確認していたものの、三次元になった彼女の魅力は底無しだった。
質量を持った、本物の2・5次元美少女メイドがそこにいた。
二次元の世界から抜け出たような俺のヒロインがそこにいた。
この現実に耐えられる男が、果たしてどれだけいるだろうか。
思わず、そのまぶたを覗き込んでしまう。
ちょくご、白いまぶたがするりと持ち上がって、紫色の瞳に俺の顔が映った。
「のわっ!?」
驚く俺を気にすることもなく、メイドさんは両手を前で重ね合わせて折り目正しく、けれど和の心を感じさせる品格に溢れた所作で頭を下げてくれた。
「お初にお目にかかります旦那様。万能戦闘メイド零式タイプAです。なんなりとご命令を」
無感動なクールな口調に背筋をゾクリとさせた。
感情がない機械はいやだと思っていたけど、あえてこういう性格とボイスを選んだ。俺の趣味だ。
――それにしてもこんな美人さんに旦那様とか言われるって……イイ!
俺がほわほわしていると、メイドさんは自分の胸を見下ろした。
長い左右の前髪が落ちて、胸のラインをなぞるように大きく弧を描いてから胸下に垂れている。
「……ふむ」
メイドさんはおもむろに自身の爆乳を持ち上げると、検分するようにして揉み始めた。
「ちょっ、それは……」
心臓にトゲトゲのいばらがまきつくような罪悪感に俺が襲われていると、メイドさんの視線がジトリと持ち上がった。
「なるほど、旦那様のご趣味は把握しました」
「把握しないで! やめて! 30分前の俺が悪いんです! 全ては童貞が悪いんです!」
こんなことならもう少し控えめな胸にすればよかったと俺が後悔している間に、今度は尻を揉み始めるメイドさん。
――やめて、俺の第二の大罪に触れないで。
「なるほど、旦那様は発育の良い女性が好きなのですね」
――あぁあああああああああああああああああああ!
俺はフローリングに倒れ込んでまるまった。穴があったら入りたい。
それから、メイドさんは何を思ったのか、股間のあたりをもぞもぞさせた。
続けて、ウィンドウを開いて何かを確認して疑問符を浮かべるように首を傾げた。
今の動きから、彼女が感情を持った存在であることがわかって嬉しい。
「旦那様。わたくしの体の設定に矛盾があるのですが?」
「命令だ。以後、そのことについて触れてはならん!」
「しかし外見年令上あるべきものが――」
「いやほんとお願いしますそのことについては触れないでください」土下座
「……承りました。旦那様の趣味を」
メイドさんは無表情無感動に頷いた。
俺は独りこっそり死にたくなった。
「では旦那様、わたくしの名前を決めて頂けますか?」
「名前?」
「はい」
俺は立ち上がり、メイドさんをじっと見つめた。
●鏡銀鉢の万能戦闘メイドロボ語り
〇界線上の〇ライゾンに武蔵さんてメイドロボが出るんですけどね、髪型がオシャレなんですよ。
武蔵住民みんなの憧れ、信頼絶大。
どんな仕事もそつなくこなす武蔵様。名前は武蔵でムサシだけど宮本武蔵とは関係ない。
めっちゃ美人の巨乳美人です。FGOの女性版宮本武蔵も好きだけど武蔵という名前の巨乳美女がオタク業界で最初に出たのはたぶんこの武蔵さん。
FGOの宮本武蔵と並んで巨乳武蔵コンビとかやらないかな。どっちもデザインが秀逸過ぎる。
ちなみに本作のメイドは髪型は武蔵さん、服装は鹿角さん、髪と目の色は三河さんがモデルです。
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