第12話 VSサンダードレイク


 36階層からは、自衛隊でも正式採用されているバトルライフルでも倒すの困難になってきたのでグレネードランチャーに変えたけれど、それも41階層からは通じなくなってきた。


 なので、思い切って手榴弾を使った。


 ちなみに、俺は投げる必要が無い。


 半径1キロの好きな場所にアイテムを出せるので、モンスターを見つけ次第その背後にピンを抜いた状態の手榴弾を出してやった。


【ミノタウロスの頭 高級黒毛和牛肉100キロ】え? この肉って

【ワータイガーの毛皮 重装鎧 エルダーポーション】

【ダマスカススコーピオンの甲殻 ダマスカスソード】マーブル模様がカッコイイ


 46階層からは手榴弾すら効かなくなってきたので一点突破、対戦車用のマテリアルライフルを使ったらイケた。

 

【キマイラの死体 獣王の鎧】死体まるごと手に入った!?


 51階層からはとうとう両手に一丁ずつ、対戦車RPGバズーカ砲を導入。

 これが効かなくなったら、もはや現行の携行武器ではどうにもならないだろう。

 そして迎えた55階層。

 とうとうバズーカすら効かなくなったため、とある武装を創造した。


「高周波ブレードの切れ味、お前で試させて貰うぜ!」


 バズーカ砲の爆煙のなかから飛び出してきた翼の生えたライオン、マンティコア目掛けて、俺は刀を振るった。


 すると剣道経験ゼロの俺の手にある刀身はマンティコアの頭蓋骨をするりと通り抜けてしまう。


 左右に分かれたマンティコアが俺の横を通り過ぎながら床に転がった。


「これ、聖剣より強いんじゃないのか?」


 ――これならメイドもかなり強いんだろうな。


 流石は未来兵器だと関心しながら、万能戦闘メイドロボにも思いをはせる。

 そこで、ふと嫌な想いに当たった。


 ――万能戦闘メイドロボって、心はあるのか?


 漫画やアニメに慣れ親しんだ俺は、勝手にロボとは名ばかりの美少女ヒロインを想像していた。


 けれど、創造スキルで生み出されるメイドロボが、家電のように指示した通り動くだけ、プログラミングされた通り反応するだけのものだったら凄く悲しい。



 そんな不安を抱えながら、俺はボス部屋に辿り着いた。


 ギルマスの話では、ここにレベル65のブルーサンダードレイクがいるらしい。


 ボス部屋はドーム型で、東京ドームのように広かった。


 ボスの姿を求めて視線を彷徨わせると、バチンというスパーク音が聞こえた。


 慌てて視線を上げると、全長50メートルはありそうな青い龍が天井から剥がれ落ちてきた。


 長い体をドーム型天井に沿わせていたため気づけなかった。


「■■■■■■■■■■■■」


 五十音では表現できない咆哮を上げると、サンダードレイクは巨大な口を開けた。

 ずらりと並んだ牙がスパークして、喉奥に青い雷光がたまっていく。


「マズイ!」


 俺が横に跳んで回避したコンマ一秒後、極太の稲妻が地面を穿った。

 雷撃は床全体に四散して雲散霧消する。

 あと一瞬、回避が遅れていたら、俺は強化スーツごと消し炭だったろう。


「さて、駄目もとで一応試しておくか」


 俺はストレージからバズーカ砲を二本取り出すと、同時に引き金を引いた。

 サンダードレイクは迫る二発の砲弾に見向きもせず、ノーガードで受けた。

 けれど、それは決して不遜ではなかった。

 戦車装甲すらも破壊するバズーカ砲は青いウロコに傷跡も残せず、無駄に散った。


「あのウロコ……高周波ブレード効くかな?」

「■■■■■■■■■■」


 サンダードレイクは全身にまとう青い稲妻をさらに昂らせながら突進してきた。

 前足に備えた剣のように長い五枚の爪が襲い掛かって、高周波剣で受け止める。


「ッ!?」


 体重差で体を持っていかれ、俺は人形のように吹き飛ばされた。

 すさまじいGを受けながら壁に激突、地面に着地した。


「痛った……高周波ブレードと強化スーツ越しだぞ……」


 伝説の金属の末席とはいえ、アンオブタニウム製の刀身を受けてなお、サンダードレイクの爪は無傷だった。


 ――全身が伝説の金属並かよ。正攻法じゃ絶対に勝てないな。


 全身から常に放電しながら吠えたててくるサンダードレイクの討伐方法に、俺は頭を悩ませた。


 ――ここはやっぱり、今作れる中で一番強い兵器を……いや。


 そこで、ふと思い出した。


 ――あいつ、常に放電しているんだよな? ならもしかして。


「■■■■■■■■」


 サンダードレイクの口から、再び特大の雷撃が放たれた。

 対する俺は、砂鉄から鉄のドームを創造。

 全身をすっぽりを覆った。

 すると、雷撃は一切届かない。


「よし、思った通りだ」


 金属を走る電気は他に移らない。

 雷の時に一番安全なのは車の中。

 生活の知恵だ。

 そして。


「ストレージアウト! 水!」


 森や川で手にした水を一気に開放した。


 鉄のドームの外は今頃水でいっぱいだろう。

 ただし、サンダードレイクを溺れさせるためじゃない。


 乾電池を水の中に入れると無尽蔵に放電されて一瞬で空っぽになる。

 だから、サンダードレイクも水中ではきっと……。


 思った通り、周囲の気体を収集するよう設定したストレージの中に凄い量の酸素と水素が入って来る。

 水が電気分解されて酸素と水素が生成されている証拠だ。


 意識的に放電をやめられたとしても、サンダードレイクにとって雷はライオンの爪や牙も同じ。

 何か問題が起これば、自慢の雷撃で解決しようとするのが心理だ。


 こんな水、自分の雷撃で消し飛ばしてやる。

 そうして全力で放電し続けるだろうが無駄だ。


 酸素と水素はストレージ入りして代わりに同質量の水を追加してやる。


 これで、ボス部屋から水が抜けることはない。


 徐々に、酸素と水素の収集量が減っていく。

 サンダードレイクが弱っている証拠だ。

 収集量がゼロになったら水を回収して、疲労困憊のサンダードレイクにトドメを刺してやろう。


 が、勝利を確信して油断刹那、鉄のドームが激震した。


「おわっ!?」


 どうやら、水中で直接噛みついてきたらしい。

 鉄のドームにドーナツ状に創造しなおすと、ピンク色の肉と白い牙に包囲されていた。


 次の瞬間には下で牙の上に運ばれ咀嚼されるか、それとも丸呑みか。

 ドラゴンの口の中。

 絶体絶命のピンチに、だけど俺は安堵した。


「やっと邪魔なウロコが無くなったな」


 周囲の水をストレージ送りにすると、俺は取り出したバズーカを喉の奥に撃ち込んだ。


 さしものサンダードレイクも口を開けて俺を吐き出そうとした。


 なので、置き土産に手榴弾を300個取り出しながらバックステップした。


 突如現れた異物で喉の奥までいっぱいのサンダードレイクは、口の中をスパークさせた。


「バッカ」


 一秒後。

 300個の手榴弾が口内で爆発。

 サンダードレイクは地面に墜落した。


【エンシェントーブルーサンダードレイクの死体】


 ――エンシェント?


【薄井恭二はレベルが上がった】

【人工魂搭載・万能戦闘メイドロボ零式タイプAが開放されました】

 

 ――人工魂……ということは?



   ◆



 その頃、王城で高村は自身の股間を再建する方法を模索していたのだが……。


「おっ、このエクストラヒールっての無くなった手足も再生するのか。これなら俺のムスコも。ん、使えない?MP不足か?」


【エラー:ハイヒューマンしか使えません】


「なんだよそのハイヒューマンって! どうやったらなれるんだよ! ちっ、それは書いてねぇのかよ! 俺は賢者ジョブだぞ! 普通賢者つったら知りたいことはなんでもわかるとかいうスキル持ちじゃねぇのかよ!」


 腹立ち紛れに、高村は部屋の椅子や机を蹴り飛ばした。

 彼が男の悦びを取り戻せるのは、いつのことか。


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予定

第13話 アラサーのおっさん、ハイヒューマンに進化しました

第14話 『万能戦闘メイドロボのバストサイズを決めてください』『え?』


●鏡銀鉢の戦闘メイド語り

 ブラックラグ〇ンて作品にロベルタってメイドが出てくるんですよ。

 巨乳で眼鏡で冷たい眼差しのターミーネーター姉ちゃんです。

 銃を握らせれば右に出る者はなくマッチョな黒人を片手で車の中から引きずり出して、だけど坊ちゃまの前ではメイドでいようとし続けるメイド魂に惚れるよね。

 バラライカとレヴィがそろえばそこはまさにグラウンド・ゼロ。わかる人だけわかってね。

(というのもなんなので解説。金髪美女バラライカ、へそ出し美人レヴィ、眼鏡メイドのロベルタがそろった時、長身ゴリマッチョでメインキャラのダッチが「グラウンド・ゼロ」と評した。男性キャラより強くて怖い女性キャラ満載の作品です。そこも魅力です)

 小学生の頃、ロベルタみたいなメイドさんがいたら鏡銀鉢の人生はもっと、うぅ(泣)


 コメントで5・56mmよりもマグナムの方が威力ないっけ?

 という指摘を貰いましたが、マグナムライフルなら強いですが主人公が使っているのはマグナム拳銃なので、これだと5・56mmのほうが強いです。

 ウィンチェスターのマグナムライフルでも使わせようと思いましたが、連射したら7・62mmのほうが強いとも聞いたので。

 解説

 連射すると1発目が対象に当たった衝撃が残っているうちに2発目が当たる為、破壊力の重ね掛けになる。物理学の真面目な話。

 るろ剣の二重の極みと理屈は同じです。

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