第11話 ダンジョンでストレージ機能を使ったら?


 ダンジョンとは、廃墟や洞窟を入り口とする正体不明の異空間である。


 偶然見つけることがあれば、昨日まで自然の洞窟だった場所が突然ダンジョン化することもある。


 その中では無限にモンスターが湧き続けているらしい。


「ここがダンジョンか……」


 一時間後。

 俺が訪れていたのは、郊外のとあるダンジョンだった。


 ダンジョンの中は人工的な石造りの廊下が続いていて、光源もないのに何故か明るかった。


 ギルマスの話では多くのダンジョンがこのような作りらしいが、多種多様なダンジョンがあるらしい。


 中には、地下や建物の中なのに何故か空があったり森や海が広がっているダンジョンもあるとか。


「さて、と。じゃあ始めるか」

 ――拳銃、ストレージアウト。


 両手にそれぞれ、拳銃が現れ握り込んだ。

 材料となる各種素材は、森と戦場、それからここまでの道中で収集済みだ。


 半径1キロ以内の素材を自動収集するよう設定しているため、ストレージの素材量はすでにトンデモない量になっている。


 とりあえず、拳銃の弾を2000発ほど錬成しておく。


「おっ」


 さっそく、通路の奥から子供サイズの醜悪な小鬼、ゴブリンが歩いてきた。

躊躇わず、引き金を引きまくった。


 数発の弾丸がゴブリンの頭と胴体に当たり、ゴブリンは血を噴いて転倒。

 その体はガラスが割れるような音と共に砕け散る。


 石畳みの上には、ピンポン玉サイズの黄色い水晶玉が転がっていた。

 これはオーブと呼ばれるもので、割るとモンスターの素材やドロップアイテムが出てくるらしい。


 野生のモンスターとは違い、死体が丸ごと手に入らない。


 その代わり、ストレージスキルの無い人でも大量に収穫を持ち運べるし、死体とは関係ないドロップアイテムも手に入る。


 それが、ダンジョンのメリットだ。


 細かいことを言えば、モンスターの体をどれだけ傷つけても収穫に影響がないため、過剰攻撃を気にしなくていい。


「ストレージイン」


【オーブを開放しますか?】


「OK」


【ゴブリン肉5キロ ゴブリンの頭蓋骨 タワシ】


 このタワシがドロップアイテムだ。


 ――それにしてもタワシって、昔のテレビのダーツかよ。


 ツッコミながら、俺はダンジョンの中を左沿いに走り出した。


 迷宮で迷わない、左手の法則だ。


 走りながら、モンスターが現れ次第、両手の引き金を引きまくる。


 立ち止まってモンスターの最期なんていちいち確認しない。


 走り抜けた数秒後に、オーブがストレージ入りする。楽なものだ。

ちなみに、どうして俺が二丁拳銃なのかと言うと、修業のためだ。


 俺の弱点は戦闘技術だ。


 強化スーツでフィジカルを増幅しようと、動きは素人のまま。


 銃や高周波ブレードを作っても射撃や剣道の経験はない。


 アイテムを作って使うだけでは、いずれ足をすくわれる。


 そこで俺が選んだのが銃だ。


 銃にも正しい撃ち方があるんだろうけど、とりあえず中距離から敵に向けて引き金を引けば当たる。


 もちろん、どこに当てたいと思いながら素人なりに狙って撃つ。


 そうすれば、いずれ経験則として命中率は上がるだろう。


 相手が冒険者かモンスターか、一瞬で判断して撃てば、判断力も鍛えられるという寸法だ。


【グリーンスライムの核 ピーマン】ピーマン?

【フリントマウスの牙 火打石】

【オオナメクジの肉3キロ ローション】このローションて……。

【ホーンラビットの肉5キロ ツノ 毛皮 麻糸100m】

【キバザルの脳 頭蓋骨 銅のナイフ】


 途中で下り階段を見つけたが無視した。


 まず、この階層を完全攻略したい。


 壁伝いに走り続けて入り口に戻ってきたら、引き返して地下二階へ下りる。

 これの繰り返しだ。


 ちなみにギルマスいわく、出現モンスターのレベルは階層とだいたい同じで、何階層かおきにいるフロアボスはプラス10らしい。


 5階層ならモンスターのレベルは3から7、ボスのレベルは15ということだ。


【イワトカゲの尻尾 石炭】

【ヨーウィーのウロコ トカゲの黒焼き】

【ホブゴブリンの頭 高性能タワシ】謎のタワシ縛り……


「■■■■■■■■■■■■■■■■!」


 5階層には下り階段が無かった。

 代わりにドーム状の広い部屋があって、その中央で強そうな黒い狼が五十音では表記できない声で吼えている。


 あれが5階層のフロアボス、ブラックハウンドだ。


「悪いな、お前と戦う暇はないんだ」

「■■■■■■■■!?」


 俺が両手の引き金を引きまくると、牙を鳴らし正面から襲い掛かってきたブラックハウンドの体が跳ね上がり転倒。石床に血だまりを作りながら動かなくなった。


 けれど、すぐには下り階段を下りはしない。


 どうやら、ダンジョンでストレージを使っても、上下の階層には影響しないようなのだ。


 つまり、ブラックハウンドのオーブを回収する前に6階層へ下りてしまうと、取り逃してしまう。


 ブラックハウンドの体がガラスのように砕けて、オーブがストレージ入りしてから、下り階段を下りた。



   ◆



 それ以降も、ダンジョン攻略は無駄なく問題なくつつがなく進んだ。


 途中、モンスターハウスという大量のモンスターが出てきて全員倒すまで出られないトラップもあったけれど、全員撃ち殺してやった。


【ウォーターリーパーの肉2キロ ミネラルウォーター】

【トゲテントウムシのトゲ 縫い針】

【イワワームの甲皮 鉄鉱石】

【メタルスライムの核 水銀】経験値めっちゃもらえた

【バクダンボタルの甲殻 松明】火薬じゃないんだ……


 モンスターのレベルも上がってくると、拳銃の効き目が薄くなってきたけれど問題ない。


 21階層からは、マグナムを錬成、創造して装備した。


 ただの拳銃よりも火薬の量が多いこのハンドガンの威力は実に2倍以上。


 その分、反動も強いけれどレベル48の俺なら余裕で受け止められる。


 ちなみに、空薬莢やモンスターに撃ち込まれた弾頭は全てストレージに回収されている。


 そして、22階層からは階層を移動するたびにストレージに大量の素材が回収された。


 回収する余裕が無かったオーブ。

 冒険者の死体、装備などだ。

 それだけ、危険度が高い証拠だ。

 走りながら心の中で黙とうを捧げた。


 26階層からは5・56mmアサルトライフル2丁。

 31階層からは7・62mmバトルライフル2丁。


 本来は銃床を肩に付けて両手で構えて撃つライフルを、片手に1丁ずつ握った2丁拳銃スタイルで戦うと、なんていうか、中二心をくすぐられた。うふふ。

 アンデッド系モンスターが出てきた時は、それこそバイオハザ●ドのクリ●・レッドフィ●ルドの気分だった。


【ブラッディゾンビの手   グリーンハーブ】すごく回復しそう

【ダークゾンビドッグの頭 ナイフ】横振り限定かな?

【ケットシーの毛皮 魔石】

【クーシーの毛皮 ポーション】

【コカドリーユのウロコ 金の針】石化が治るらしい。


 コカドリーユは、ゲームだと石化の魔眼を使うモンスターだ。


 きっと、他にも状態異常の攻撃を使うモンスターはいるんだろうけど、俺は見つけ次第射殺か爆殺してしまうので関係ない。


 ただし、もしも何かの不意打ちで喰らってしまうとマズイ。


 ソロの俺には助けてくれる仲間がいない。


 だから、早くブルーサンダードレイクを倒してその心臓から魔力炉を作り、万能戦闘メイドを錬成しなくてはと、焦燥感に駆られる。


「ブルーサンダードレイク。推定レベル65の上級ドラゴンだ」


 俺のレベルは50。

 ギルマスの言葉が本当なら、相手は完全に格上だ。

 手榴弾どころか、戦車でも勝てる相手じゃない。


「…………」


 幸い、ダンジョンに入ってから手に入れた素材のおかげで、作れる武装の幅が増えた。


「作ることになるかもしれないな……強化スーツの、さらに上を……」


 ゾクゾクとした期待感に背筋を震わせながら、俺はゴーレムの背後に手榴弾を5個、配置した。


【マグマスライムの核 溶岩の魔石 アダマント鉱石】

【ベアコングの毛皮 心臓 怪力乱神の実 アークポーション】

【アンオブタニウムメッキゴーレムの素体 アンオブタニウム鉱石】


「このまま一気に攻略するぞ!」


   ◆


 その頃。


「おいなんだよさっきからモンスターが全然いねぇじゃねぇか!」

「あの野郎を追いかけてきたけど、まさかあいつが全部倒した、わけないか」

「おかげでこんな深層まで来れたけど、これじゃ意味ないっての!」


 冒険者ギルドで薄井恭二にぶっ飛ばされた三人だ。

 ポーションで回復するや否や、彼を追いかけてダンジョンに来て、復讐ついでに稼ごうと思ったのに肝心のモンスターがいない。

 とんだ肩透かしだ。


「ていうかあのモヤシがこんな深層にいるわけないし入れ違いになったんじゃ」

「いや、むしろモンスターがいないからあいつも深層に行ったに違いない!」

「だな、せっかくだしいけるとこまで行こうぜ」


 薄井恭二が全ての階層のモンスターを根こそぎ狩り尽くした結果、三人は30階層まで素通りだった。


 しかし彼らは知らない。


 今、第一階層から順にモンスターが復活してきていることを。

帰り道が、自分たちよりも強いモンスターで埋め尽くされて行っていることを。



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予定

第12話 VSサンダードレイク

第13話 アラサーのおっさん、ハイヒューマンに進化しました

第14話 『万能戦闘メイドロボのバストサイズを決めてください』『え?』


作者の万能戦闘メイド語り

境界線上〇ホライゾ〇の三河さんはね、何百体もこうずらーっと並びながら演奏しているわけですよ。

昔アニメ銀〇魂〇 でメイドロボの軍勢の映像が流れながらテロップで

可愛いものでも大量にあると怖いよね

とか言っていたけど三河さんがずらーっと並んでいる光景はひたすら可愛いだけだったなぁ。いいなぁ元信公。

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