広域の特権

信川大学

今回の事件で初の重要参考人となった早川健太のことを調べるため、彼と被害者の佐々木美咲の通っている国立信川大学に足を運んだ。

そこで担当の教授に話を伺う予定だったが、先週から海外調査に行ってるため不在だった。そこで大学の事務担当に話を伺うことにした。

「・・・彼らのことは詳しくは分かりませんが少なくとも素行不良の話は無いですね。指導歴も無いですね。」

「そうですか。分かりました。もし彼らがこちらに来ましたら信川中央署に連絡をお願いします。」「分かりました。」

そうして俺たちは次に早川健太の動機となる原因を調査することにした。

「コンビニ強盗2件と来たら奴は借金をしてるのかな。」

「そうだろうな。恐らく自転車操業で借金返済でもしてて、返すことに疲れたかもしれないな。」

その為にまず2人で金融機関を回り、彼の名義での借金が無いか確かめてみた。


「・・・その結果合計35万の借金が参考人にあることが判明しました。この借金の返済は今月末とのことです。」

「そうか。動機は借金の返済か。でもその割には金額が多い気がするんだが。」

「そうなんです。そこが変なんですよ。あと20万、これでは逃亡には少し足らないんですよね。」「だとしたら、共犯の借金もまとめて行うとかですかね?」

「・・・いや。藤木警部、もしかしたらその共犯の借金の返済金を集めさせてるのでは?」「どういうことだ?」

「例えば主犯が別にいてそいつに脅されているとかというのはあり得ませんか?それなら金額につじつまが合いますね。」

「では、なぜ人質を作った。逆に邪魔になるだけではないか?」

「もしかしたら、会話を聞かれてしまったとか、あるいは忠誠を誓う為の担保にしたとか。それなら生かして逃げ続けないとさらに罪を数えますからね。それに要求を伝える電話が無いことの辻褄も合います。」俺は自信を持って発言した。

「それが一番あり得るな。だとしたらより彼の周りの 捜査の人員を増やす必要があるな。一課の刑事を増員しよう。」

そんな話をしていたら突然大きな足音がしてくる。

「…失礼します!!栗田警部、国立信川大学から入電。被疑者が人質と共に事務局に現れたと。」「何…!?間違いないのか。」「はい。当人が名乗り出たと。」

「現場で引き止めさせておいて。直ぐ向かう。」

そう指示をして俺は管理官に向き直す。

「管理官、広域の権限に基づいて被疑者早川健太の確保、並びに人質佐々木美咲の保護の為に強行捜査の許可を。」

「分かった。許可する。直ちに出動してくれ。一課の捜査員、中央署署員も直ちに急行。広域の支援に当たらせろ。関係する全捜査員は拳銃を携行。人質の保護を優先し、現場の安全を確保せよ。」

この一声で全捜査員が慌ただしく出動の準備を始めた。それを横目に俺は特捜に確認する。

「特捜班、こちらで通達してかまわないか?」

「構わん。やってくれ。こちらも準備でき次第直ちに出動する。」

その返事を確認した俺は桑さんのゴーサインを見て

広域信川に通達する。

「至急至急広域103から広域信川。対応中の事案の被疑者が人質を連れて関係施設に現れた。よって現時点をもって強行捜査権の発動を宣言する。対象は広域103と広域特捜それに関係する捜査員。指揮は広域103栗田が執る。どうぞ。」

「こちら広域信川、了解した。強行捜査権の執行を許可する。

許可者津山警視。制限は爆発物等の使用を禁ずる。それ以外は全て許可オールクリア。栗田、頼むぞ。以上広域信川。」

「ゴーサインを確認した。広域隊員は装備レベル2を着装。直ちに出動するぞ。管理官、一課は広域に追従し、民間人の避難誘導を中央署は周辺2ブロックの規制を実行。人員不足の際は広域に一報入れるようにお願いします。」

「了解した。各局先ほどの指示に従い活動を実施し、広域を支援せよ。」

そうして広域各隊員が装備レベル2の装備を着装する。

この装備レベルは広域独自の装備で全部で1.2.3とレベルがあり、今回のレベル2は

市街地での戦闘を想定した装備で基本装備に小銃(AR15系列)、チェストリグアーマーを足したものとなる。(他のレベルは後にお伝えします。)

また、装備レベルが指定された場合広域隊員は各員の判断で発砲が出来、家宅捜索等も令状なしで捜査に踏み切れるようになったりする。

こういうところが広域が日本のSWATやFBIと言われる由縁である。

信川ではこの装備指定による強行捜査が全国の広域で最も多くかつ、警察との連携がよくとれていることで有名である。


そうして広域班が出動準備ができたところで全捜査ユニットがサイレンを甲高く鳴らし、先行して規制が始まっている信川大学へと向けて出動した。

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