第二章 『花の乙女』の役目は心臓に悪すぎる③
「……で。夕べはナニがあったんすか?」
にやにやと笑いながら、
おいしさに感動しつつ、
ウォルフレッドの私室の広いテーブルで朝食をとっているのは、ウォルフレッドとトリンティア、セレウス、ゲルヴィスの四人だ。
「皇帝陛下と同じテーブルで食事だなんて、
と固辞したが、「別々に食事をするなど、時間の
パンは手で簡単にちぎれるくらいふわふわの白パンだし、サディウム領にいた
しかも、「
興味津々なゲルヴィスの視線に、トリンティアは頬に熱がのぼるのを感じる。子どもみたいに大泣きしたなんて、
答えられずにうつむいていると、ウォルフレッドの冷ややかな声が聞こえた。
「何もない。鶏がらが、『
これ以上の
「しかし、『天哮の儀』まで、あと半月ほどです。お身体の回復は間に合うのですか?」
「心配いらぬ。『花の
「……陛下がそうおっしゃるのでしたら、よろしいのですが……」
まだ何か言いたそうにしながらも、セレウスが引き下がる。
「で、鶏がら」
「は、はいっ」
自分が呼ばれるとは思っていなかったトリンティアは、ぴんと背筋を
「何か、望みのものはあるか?」
「……え?」
予想もしていなかった言葉に、思考が止まる。
「『花の乙女』の務めを果たしている
欲しいもの。今まで、そんなことなど、考えたこともなかった。決して手に入らぬのに、考えるだけ無駄だから。
褒美と言われた
「あるのだろう? 言え」
命じられ、おずおずとウォルフレッドを見上げる。
「あ、あの、王城に
「
みなまで言わぬうちに、
「も、申し訳ございませんっ!」
頭を下げると、
「……何か、里帰りしたい理由でもあるのか?」
「その、すぐに里帰りしたいわけではなく……。私を
トリンティアを役立たずと
ウォルフレッドにぶつかった原因のリボンも、王城へ侍女として上がるのだから、何か身を
そのエリティーゼに、
「サディウム伯爵家のエリティーゼ嬢と言えば、『銀狼国の
食後の茶を
「レイフェルドの?」
おうむ返しに呟いたウォルフレッドの
「ち、
前皇帝の第四皇子だったレイフェルドが、ウォルフレッドの政敵だったということは、政治に
ウォルフレッドとの会戦でレイフェルドが
だが、伯爵の落胆とは逆に、エリティーゼだけは婚約の
『どうしても、レイフェルド様を好きだと思えないの。わたくしにはもったいないくらいの高貴な身分で、
エリティーゼはこっそりとトリンティアだけに胸の内を教えてくれた。
『お父様には逆らえないけれど、叶うなら、レイフェルド様に
『銀狼国の薔薇』と讃えられる美貌を
だから、新
「サディウム伯爵か……」
ウォルフレッドが険しい顔で
「陛下。そろそろ
「もうそんな時間か。では、褒美の話はまた後だな。鶏がら、里帰りの話はいったん保留だ。
「は、はい……っ」
他に……。と言われても何かあるだろうか、とトリンティアは震えながら
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