第一章 新米侍女、冷酷皇帝に抱き枕を命じられる②
「ひぃっ! あなた、なんてことを……っ!」
二十代前半だろうか。トリンティアよりは年上に見える。吊り目がちの思わず
「も、申し訳ございま──」
「も、申し訳ございませんっ!」
「こ、この
「
『冷酷皇帝』と
新皇帝は、もともとは前皇帝の
いったいどんな罰を受けるのかと恐怖に喉が
「立て」
冷ややかな声がトリンティアに命じる。
とっさに反応できないトリンティアを押しのけ、ウォルフレッドがさっと立ち上がる。が、腕を掴んだ手だけはそのままだ。
「聞こえぬか? 立てと言っている」
「も、申し訳ございませんっ。
うまく動かない
「ひゃっ!?」
不意に、
「セレウス。そこの二人の名前と所属を聞いておけ」
一方的に命じたウォルフレッドが、混乱のあまり身を
「陛下!? これはいったい……っ!?」
ほどなく、同僚達の名前を
「急に
「そんなわけがなかろう。余計な口ばかり
冷ややかにウォルフレッドが告げたところで、大きな
中は、皇帝の私室らしかった。トリンティアが見たこともないほど
「あ、あのっ」
声をかけた拍子にわずかに
「大変申し訳ございませんでした! なにとぞ、なにとぞお許しくださいませ!」
「名は?」
温度を感じさせぬ声が問う。
「ト、トリンティア・モイエと申します……」
恐怖に震えの止まらぬ声で告げたトリンティアは、さらに強く額を床にこすりつける。
「お願いでございます! 罰をお与えになるのでしたら、どうか私だけに……っ! 故郷には
「
氷よりも冷ややかにトリンティアの
ということは、ゲルヴィスと呼ばれた鎧を纏った黒髪の大男のほうは、『黒い
「セレウス。
「申し訳ございません。差し出た
ウォルフレッドの短い制止の声に、セレウスが一歩下がる気配がする。
「『
ウォルフレッドが低く
「各領から供出された人員の一人と見たが、どこの領から
「サ、サディウム領でございます……」
「サディウム領?」
ウォルフレッドの声が
「サディウム領から遣わされたのは、サディウム
「た、確かに伯爵の娘ですっ! そ、その、養女の身でございますが……っ!」
「養女、か」
ウォルフレッドがくつりと
「『
と、ウォルフレッドが一歩踏み出した。かつり、と
「
命じられるままに、おずおずと顔を上げる。恐怖と
トリンティアの前で
「で、トリンティア・モイエ。お前は何者だ?」
「……な、何者と言われましても……?」
吸い込まれるような深く
「答えられぬか」
ウォルフレッドが目を
「トリンティアという名は、
「わ、私を産み落としてすぐ、
ウォルフレッドが
「……そういう事情ならば、己が何者か知らずとも、当然か」
「っていうか、陛下はこの
ゲルヴィスが
「まさか……」
いち早く何かに気づいて声を上げたのはセレウスだ。
「喜べ」
不意に
視線が合った
碧い
「探し求めていた『花の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます