共鳴 a

 君の手を引くのが好きだ。

 君はいつも静かで、自分の思いをあまり伝えてくれない。

けれど、歩幅を合わせて歩いてくれたり夕日のように柔らかい笑顔で見つめてくれるから、君の手を引くのが好きだ。


 ほんのすこし前に、いつものように君の手を引いて歩いていた時、つい不安になってしまっていろいろ聞いてしまった。

 「私のわがまま、いやじゃない?」と、そう締め括って。


 そしたら君は、綺麗な言葉をたくさん紡いで私への想いを彩ってくれた。

それがとても嬉しくて、愛が溢れて気持ち悪い笑い方をしてしまった。

 けれど、その後にどこか陰った表情をした君を見て、なにかを隠しているように思えて仕方がなかった。

 君はいつも私が考えつかない所まで深く鋭く物を考えているから、たぶん何かを考えているんだろうね。

 でも、これは気付いてるかな。


 君の手を引く時、君がくれたペアリングをわざと当てがうの。

そしたら小さくカチって音が鳴って、君と私の想いが音に成るようでそれが嬉しくて仕方がないの。


 でも、こんなことを言って君に気持ち悪いと思われたくないから、これだけは唯一の内緒にしている。

 いつか、この事を隠すことなく言えたらって思うけれど、しばらくは無理かな。

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【二部構成の短編】共鳴(ともなり) 一 山大 @sakaraka_santya1

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