【二部構成の短編】共鳴(ともなり)

一 山大

共鳴 A

 君に手を引かれるのが好きだ。

 君の姿を余すこと無く目に焼き付けられるし、浮き足立ってる姿も、子供のように無邪気な笑顔も、太陽よりも明るい声も、特等席で一望できる。


 ほんのすこし前に「私のわがまま、嫌じゃない?」なんて言われた時に、僕は咄嗟にそう答えた。

 だから君のわがままは嫌じゃないと、そう締め括って。


 そしたら君は、頬を茜色に染めて嬉しそうに微笑んでくれた。

 けれど、僕はそれを見て自己嫌悪で頭を掻きむしりたくなった。

 こんな取り繕っただけの言葉で君を喜ばせて、君の隣を歩いていいものかと。

 また、嘘をついてしまったと。


 君に手を引かれるたびにお互いの手を彩るペアリングがぶつかって、小さくカチッと音を立てるんだ。

 それが僕と君とでしか出せない音だと思うとどうにも愛おしくて。


 なんて、どうしようもないほど気持ちが悪くて、君に拒絶されたらと思うと悪寒で口が開かない。

 いつかは本当のことを伝えたいけれど、しばらくは無理だと思う。

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