【短編】雨 (解説付き)

一 山大

雨に濡れて立ち尽くす男の話

 その時、雨は強がった。

 ただ泣くだけではなかったのだ。

わざと感情を粒立てて、わざとそれを叩きつけて、叫ぶように泣いていた。


 顎を伝って雨水が垂れる。

頬に温められたのか、それはどうにも熱くて仕方がなかった。

 しとしと、と。

僕から流るる水滴は、もはやこれこそが雨粒と言えようか。


 君に濡れて染まる夜は、身体が冷えて仕方ない。

 いつまでもしゃくりあげて泣く君の背中は、どこまでも揺れている。

引きずり込まれそうで、君の姿はどうにも苦手だ。

 だからこそ、僕は揺れる背中に爪を立てたのだ。

少しでも君の心臓に近づけたなら、その心を確かに感じられる気がしたのだ。

 けれど、指先から伝わる感情は非情にも冷たくて、惨めで、心底僕を否定しているようだった。

 だから、君の背中は嫌いだ。









※解説↓(私なりの解釈)

“その時、雨は”〜“叫ぶように泣いていた”

 この一節は『空が泣いている』という言葉のオマージュと言いますか、要は強い雨が降っているって事を格好つけて言いたかったのです。


“雨は強がった”

 これは、本来なら降らない筈だった。もしくは降っても小雨程度だったはずなのに、空は大雨を降らしたということですね。

 余談ですが、この物語自体『雨が強かった』の誤字を送ってしまった事から始まりました。LINEは難しいです。


“わざと感情を粒立てて”

 これは『空が泣いている』のであれば、雨は空の悲しみの結晶なわけじゃないですか。

だから、空の感情を集めて雨にしたって事です。ちなみに“粒”は“雨粒”とかけてます。


“わざとそれを叩きつけて”〜“泣いていた”

 “叩きつけて”なんて表現をしたのは、

癇癪的な、幼児的な、

 豪雨って勢いも相まってめちゃくちゃうるさいじゃないですか。

わああああああって。

それが雨にとっての大泣き声なのかなって。


“顎を伝って雨水が垂れる”

 これはただシンプルに、雨の中で傘もささずにずぶ濡れなんですよね。風邪引きそう。


“頬を伝って”〜“熱くて仕方がなかった”

 これはまあわかりやすい類だと思ってます。

たぶん泣いてるんですよねこの人。

涙は体内から溢れ出たものだから、当然それなりに熱を帯びてて、でも雨に打たれてるから頬は冷たい。

だから強調されるわけです。

 ずぶ濡れで泣いてる男性って普通に怖いですね。いや女性でも勿論怖いんですけれど。


“しとしと、と”〜“雨粒と言えようか”

 これは、自分から垂れる水滴の方が『雨』と言えるほどの豪雨って話ですね。めっちゃ泣いてます。

 まあ最初に掛かる補足情報みたいな感じです。わあ。


“君に濡れて染まる夜は、身体が冷えて仕方ない”

 これはまあ、人間的に話してるけど本当に雨の話ですよっていう注釈みたいなものです。

 あと夜にずぶ濡れなんだよって。


“いつまでもしゃくりあげて泣く”

 いつまでもしゃくりあげてって事は、まあ雨が長いって事ですね。そのままです。


“君の背中は、どこまでも揺れている”

 これはまあしゃくりあげてに掛けてるんですけど、雨雲って波打ってるみたいじゃないですか。

 あとなんで背中なのかって言うと、泣き顔って誰しも見られたくはないじゃないですか。

だから、空も見られたくないんじゃないかなって。


“だからこそ、僕は”〜“感じられる気がしたのだ”

 日本じゃ心臓に心が宿るってのが通説ですけど、アメリカとかじゃ頭に心が宿るらしいですよ。まあ言いたい事はわかる。

 でもまあ、これは日本語の話なのでセーフ。

 とりあえず私が言いたい事は、雨雲が背中っていう前提なので、要は空に手を伸ばしてるんでしょうね。

 それで心がわかるなんて、傲慢です。


“けれど、指先から”〜“否定しているようだった”

 きっと、この男の人は期待してたんでしょうね。この涙を流す空ならわかってくれるって。

 まったく可哀想な人です。まあそれが好きなのですが。


“だから、君の背中は嫌いだ”

 結局、何度も期待して何度も裏切られたんでしょうね。とても嫌です。


ただの状況的な説明をするのであれば

 土砂降りの中、全てに疲れた男が一人泣きながら、雨にすら縋っているのでしょうか。

酔っ払って書いたのであまり覚えてないのです。笑。


あなたなりの解釈、とても興味あります。

なので、ひまな時にでもコメントであなたの意見を教えてください。わあ。

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