第182話 告白の行き着く先に
ま、まさか……エディットも僕を好いてくれていたと思っていたのに、完全に僕の勘違いだったのだろうか……?
「え、えっと……あの……」
どうしよう、今の台詞はどうか忘れて欲しいと伝えるべきだろうか?どのみち、今エディットが僕を怪訝そうに見つめる瞳に耐えられる自信は無かった。
よ、よし!ここはいっそ謝ってしまえ!
「ご、ごめ……!」
「アドルフ様」
僕とエディットの言葉が重なる。
「「あ……」」
2人同時に口を閉ざし、僕は慌ててエディットに尋ねた。
「ど、どうぞ。エディットから先に言っていいよ」
「え?ですが……」
「先にエディットの言葉を聞きたいんだ」
そうだ、早めにエディットの気持ちを聞いておいたほうがいっそ開き直れる。
「はい。では……確認したいのですけど……」
「うん、何?」
エディットは僕に何を確認したいのだろう?緊張して心臓が脈打ち、今にも口から飛び出しそうだ。
「私達……もう、以前から恋人同士だったのではありませんか……?」
頬をうっすらと赤く染めながらエディットが僕に尋ねてくる。
「え……?」
僕とエディットが以前から恋人同士だって?!
「い、いつから……だっけ……?」
嬉しさと衝撃のが混ざった複雑な気持ちで、間の抜けた質問をしてしまった。
「え?いつからって……ランタンフェスティバルのときから……ですけど……?」
「あ……」
その言葉に、思い出した。そういえばランタンフェスティバルのときに2人で一緒に屋台に行った時、言われたんだっけ?
『こんなに可愛い恋人を連れているなんて、兄さんもやるねぇ?』
そして僕は「はい、そうです」と返事をした。まさか、あの時からエディットは僕達が恋人同士だと思っていたなんて……。
「あ、あの……。もしかして……今迄恋人同士だと思っていたのは……私だけだったのでしょうか……?」
エディットが少しだけ、悲しげな顔を僕に見せる。
「え?あ……そ、そんなことはないよ!僕の中ではとっくにエディットは恋人のつもりでいたんだけど……。ただ、改めて自分の気持ちを告げるのは時期を待ってからにしようって考えていたんだよ!」
「アドルフ様……」
「今夜、この場所でエディットに告白しようって……ずっと決めていたから……。だから……今、エディットの気持ちを聞かせてくれないかな……?」
自分で何を言っているか、よく分からなかった。でも、はっきりエディットの口から僕に対する気持ちを聞きたかった。
するとエディットはまるで花が咲いたかのように笑った。それは今までに見たこともないような笑顔だった。
そう。まさにブラッドリーの前で見せた時以上の、とびきりの。
そして次にエディットは驚くべき言葉を口にした。
「やっぱり……先輩は少しも変わっていませんね?あの頃と同じで……。少し不器用なところも、とても優しいところも……」
「え……?」
「アドルフ様、今も昔も……私は変わらず貴方のことが大好きです。だからずっと側に置いて下さい……」
満月を背に、微笑むエディットは……まるで月の女神様のように綺麗だった――。
※ 次話からヒロイン視点の話になります。
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