第132話 試験の手応え
昼休みも終わり、5時限目の古代文字の試験が始まった。
やはり、かなり難しい問題ではあったけれどもエディットと勉強した範囲は全て出題された。
まるでエディットは試験問題を知っているかのように、ピンポイントで問題が出題されているのを見た時は小躍りしたくなるほどだった。
これは……ひょっとすると、いけるかもしれない。
僕は全神経を試験に集中させた。解答終了後も何度も何度も見直して、恐らく歴史の試験よりも完璧な解答を書けた……と思う。
キーンコーンカーンコーン
5時限目終了の鐘が鳴り響き、後ろから答案用紙が回される。
皆、思った以上に出来なかったのだろう。あちこちでため息や絶望的な表情を浮かべている学生たちが大勢いた。
「アドルフ。古代文字の試験……どうだった?」
答案用紙が集められ、先生が教室から出て行くとラモンが話しかけて来た。
「うん、まぁまぁ出来たと思うよ」
「げ!マジか!あんなに激ムズだったのにか?!」
エミリオが目を見開いて僕を見る。
「でも確かにそうだよな~。クラスの連中の大半は諦めて、鉛筆を置いていたのにお前はずっと答案用紙に書き込んでいたよな」
ラモンが頬杖をついて僕を見る。
「それいくと、俺は最悪だよ……。赤点確実だ……。せめて全学年の成績が酷くて平均点が下がってくれることを祈るしかない。頼む!どうか全員出来ないでいてくれ!」
何故かエミリオが腕を組んで祈り?を捧げている。
「そうだね。出来れば僕も2人にはパーティーに参加してもらいたいよ」
僕の言葉にラモンが反応する。
「やっぱりな。お前、余裕しかないもんな。これで試験結果が良ければAクラスに編入出来るかもしれないぞ?」
「え?それ本当?!」
「冗談だ。本気にとるな。Aクラスに編入するには全ての試験で良い点を取らなきゃ無理にきまってるだろ?」
エミリオが呆れた様子で僕を見る。
「何だ、冗談だったのか……」
今回の試験は歴史の試験よりも自信があるから、ひょっとしたらと思ったけど……。
「まぁ、それでもこの試験ですごく良い点を取れれば、流石のAクラスの連中もお前を見直すかもしれないけどな」
そしてラモンはニヤリと笑った――。
****
帰りのHRも終わり、エミリオとラモンに挨拶すると僕は一目散にエディットの教室へ向かった。
Aクラスも丁度HRが終わった所らしく、ぞろぞろと学生たちが教室から出て来た。
誰もが古代文字の試験の話ばかりで、誰も僕に気付く者はいない。
「それにしても今回の古代文字は今までで一番難しかったな」
「俺半分は点を落とすかもしれないよ」
「私も自信ないわ。70点も取れる自信ないわよ」
「私なんか赤点が心配だわ」
え……?
そんなに難しかっただろうか?確かに難しい試験ではあったけれども僕には手応えがあったんだけどな……。
その時――。
「お待たせしました、アドルフ様」
教室から出て来たエディットが声を掛けて来た。
「うん、それじゃ行こうか?エディット」
「はい」
廊下を歩きながら、僕達は自然と手を繋いでいた。
隣りを歩くエディットをチラリと見ると、やはりまだ照れくさいのか頬を赤らめている。
そんなエディットが僕にはとても愛おしかった――。
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