少年篇(4)中3『夜のスクリプト』 NHK-FM「クロスオーバーイレブン」
隣の6畳間からテレビの音が消えた。
時刻は、23時25分。
先に眠りに就いた親父のいびき加減を見て、いつもの通りにお母さんがリモコンでテレビの音量を少しずつ小さくしていってから消したんだろう。
その作業の途中で、運悪く目覚めてしまうと「まだ、観てる」と布団に寝ながら見続けようとする意思を示すのが親父だ。まったく困ったものだ。
クロスオーバーイレブンでは、最初のスクリプトがこれから始まる。今は、もやし君シリーズだから、安定のストーリーだ。
ところが、俺の方はというと、全く安定していない。
この前の実テの結果は散々で、このアパートから3分で到着する第一希望の高校を受検するのか否かを判断しなきゃいけないだろう。先生は「合格率4割くらいところに居る」と言っていた。しっかし、なんで、こう、俺の頭は悪いんだろう。やってもやっても、テストで点が取れない。物覚えが悪すぎる自分に腹が立つ。じゃあ、覚えなくても良い数学で点が取れるかと言えば、驚異的に駄目で5教科合計点の足を見事に引っ張っている。
同じような国語なんて、現代文はまだ何とかなるとして、たぶん、古文が足を引っ張る。漢字だって当てにならない。
合格率4割の第一志望校を受検して落ちたら、あの忌まわしき紺ブレザーに赤いネクタイの、指定バッグが医者の往診バッグみたいな、週に3回7時間目まである勉強漬けのあの私立に行かなきゃいけない。それは、駄目だ。なんとしてでも、避けなければならない。じゃあ、どうする??
こんな堂々巡りの心配と悩みばかりで時間を費やしている。
もやしくん、お前はいいなあ。海に友達と遊びに行ったり、お祭に行ったりして遊んでばかりだ。「勉強なんてそっちのけで」という台詞をもやしくんシリーズで津嘉山正種は何度も言ってる。
勉強なんてそっちのけで、俺は悩み、そして、もやしくんを聴き、現代音楽みたいなプログレに身を委ねる。そう、今夜も。
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