少年篇(3)中3『つなぎの番組のはずが』 NHK-FM「ふたりの部屋」

 サウンドストリートが23時に終わって、それから5分間、ニュースが放送されるタイミングで俺は台所でインスタントコーヒーをいれるのがいつものパターンだ。

 本当は、もう少し時間を掛けてホットケーキやらお好み焼きなんかを作って夜食と称して食べたいところだけれど、この前、たまたま聴いた「二人の部屋」という朗読番組につい引き込まれて鉛筆の動きが止まったままになった。いや、本当は、ラジオなんか聴いていようがいまいが、鉛筆は止まりがちなんだが。

 一回わずか10分間の番組で、2人の朗読者が何役かの登場人物をまかなって話すだけのとてつもなく地味な番組ながら、俺はハマっている。


 今やっているのは、ふじわらさいたろう、という人が書いた「拝啓 名探偵殿」という朗読だ。俺は、ミステリーとか推理小説とか、まったく読まないのだけど、こうやって、時々発せられる効果音混じりの朗読を聴いていると、結構、ドキドキするものだ。


 そういや、小学校の時に、国語の教科書の音読で、カギかっこの会話文をいつものしゃべっている風に読むとお母さんには褒められたし、教室では友達に笑われたものだ。先生には、やっぱり、褒められたな。

 ラジオの朗読をやっている人は、誰に褒められるんだろうな。

 俺は、褒めるよ。だって、こんなに夢中になれるんだもん。










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