第2話

「エリ、覚悟ぉぉぉぉ!」

 学園の門をくぐった途端、上空からそんな声が聞こえ、上を見あげる。

 見えたのは青い空と太陽。そして…何かの黒い影。

その影は少し時が経つにつれてこちらへと向かっている。

多分、あと少し経てばこちらへと衝突するだろう。

「……はぁ」

メアリは、その影を見てため息をついた。

それは、これが自然現象とかではなく"いつもの事"だと分かっているからだ。

 一応、報告するため、エリの方へと顔を向けた。

「お姉さま、あの……」

「リフレクト」

 だが、報告する前にエリが何かを呟き、エリとメアリの周辺を透明な膜が包みこむ。

 それから1秒もせず、黒い影と透明な膜が衝突する。

その透明な膜は破れることはなく、少し揺れただけだ。 

「…っ、やっぱダメか」

 これはリフレクト、防御の魔法だ。唱えると周囲に透明な壁を張り巡らせ、衝撃から術者の周囲を守る魔法。

……なのだが、エリのリフレクトは壁では無く透明な膜になっている。

 黒い影の主はそれで戦意がなくなったのか、拳を引っ込めるとエリに語りかけた。

「おーい、降参だ。だから降ろしてくれー」

「は~い」

 黒い影の主がそういうと、エリの周辺を被っていた透明な膜が消える。それと同時に今まで透明な膜に乗っていたしていた主が落ちてくる。

 エリは落ちてくる黒い影の主を抱えるとそのまま抱きしめた。

「アリサちゃんおはよ~」

「や~め~ろ~!」

 黒い影の正体はクラスメイトである少女、アリサだった。

アリサは銀色の髪と尻尾を持つ、銀狼だ。

アリサは毎朝のようにこうやってとつ善勝負を挑んでくる。

その勝負は大体、今回のような結果になるわけだが……。

現在、エリは落ちてきたアリサに頬ずりしている。アリサは嫌がっているが、エリはそれを気にしていないようだ。

 それが数分続き、エリが満足そうな顔でアリサを開放する。

「えへへ、ありがと、アリサちゃん」

「ったく、いつもながら大変な目にあった……」

 エリは全然反省の色は無さそうで、すぐそばにいたメアリはアリサを冷ややかな目で見つめていた。

「……なんだよ?」

「……嬉しかったくせに」

どうやら自分も抱きしめてもらいたかったらしい。

「はぁ……

 エリもエリだ、いきなり抱きつくな!」

「え~、だって目の前にこんなに柔らかそうな尻尾があるんだもん」

 そう言いつつ、エリは再びアリサを抱きしめる

「だ~か~ら、やめろって

 ……はぁ、もういいや」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る