第6話 L9が大好きな、実験爺
「椀の形状だって同級生の親父に茶筅を動かすのに こう言う理論で茶筅を動かす
茶筅の動きをサポートしてくれるのを とお願いした沓茶碗を使ってる
意味が判るか?
大体に置いて、窯の湯の温度も測らず 椀を温めてるのかその後に冷ますのか
椀も柄杓も適当な温度 そんな適当パンチの温度管理では 茶の粉が泣く
この茶はイイやつなので、この温度シールで73℃が旨かった
メスシリンダーも熱を喰うからなら湯温と表示温度でズレる
0.3の熱線対での測温をしてたが補正がめんどいのでシールで統一
デカメスシリンダーで80℃ 茶碗の熱容量で温度が一気に下がるからな
この辺は気温で変わるから常にPDCAなんだが、季節は変わるし
茶の粉の状態も変わる 体調で濃いのがいい日 薄いのがいい日
まぁ ある程度のフローチャートはあるが、インスタントに死ぬまでPDCAだ」
黙り込む 泰山様
「50ccと100ccのメスシリンダー 容量で冷却速度が違う
最初は100cc一個でやってた ある日 低めの温度でやったら味が
高めの温度でやったら香りが なら最初は低めで 本量は高めで
10ccと60ccで今はやってる
ここまで来るのに実計画法を駆使しても三年掛かった」
「それって?」
「そう 温度に気がついてメスシリンダー追加して
茶の粉の量 湯の温度とかの変数から始めてL9を山程やった
多変量解析はソフトが見つからないし、ややこしくなる
俺はL9が大好きだしな
まぁ最初のパラメータだと追いきれないわ差が出ないわ、美味いのが判らんわ
何度もやり直してるよ
最後のL9で温度とかの影響と最適値らしきものを出して
この後は直行配列で追いかけた
最初の湯の量 5 10 15
最初の湯の温度 70 80 90
二番目の湯の温度 70 80 90
椀の温度 50 60 70
椀の温度がなぁ 椀って一品一様 熱容量も違うし放熱速度も違うから
だから、俺持ってるの椀は 粘土も厚みも大きさも揃えて同じ釜で焼いたのだ
無理くりやらせて 放熱速度 湯入れて冷めるまでの時間でセレクトだ」
完全に、自分の知ってる茶の湯とは全く違うモノになってる
しかし、過去に納得した茶 その茶より美味しい
何よりも、客に美味しい茶を出すという心が込もっている
この心こそ 茶の真髄 道は違うが到達点はかなりのもの
「私も頑張らないと 高崎さんに負けてしまいますね」泰山様
「しゃぁない 泰山様には師匠がいて、教え鍛えて頂いた
教えて頂いたと言う事は、既に出来上がって進化の止まった停滞したもの
そこが限界だ
翻って俺は、ガチガチの実験屋で目的は美味しいお茶
どうすれば短期間に目的に達するかを考え、更に進化させ続けてる それだけだ
だから実験計画法も使えば、温度管理もやる 現代にあるものは使う
こんなん市井のお茶のお稽古だと叩き出されるわ」
ささっと茶道具のメスシリンダーなどを片付けて、マグカップで冷えた紅茶を出す
「悪いな 茶菓子もなかったし、これ用の菓子もない 独居老人だからな」
「独居老人 ずっとですか」泰山様に訊かれ
「一回は結婚したぞ 離婚したけど 子供は大学で地方に行ったから一人だ」
「茶は理解りましたが 色々訊きたいことができました」
「今日は茶の秘密を明かしたから 次回だな」
帰ろうとする泰山様に「ちょっと待って」とスマホを渡してみる
茶碗が持てたんだと、写真を撮ってもらおうとしてみたが、すり抜ける
「おい なんかおかしくないか 椀とマグカップは持ててスマホが無理とか」
「色々約がありますから その着物の写真ですが どうするんです?」
「インスタに上げる 絶対 蝿る と思ってるがいつも滑ってる」
「どう考えても堅気じゃない 滑るだけです 止めておきなさい」泰山様
インスタに上げる前に 滑ってしまった しかも神様のダメだし 凹む
それでも神様だし、センスが古いからと思い
中京の前で代行屋に撮って貰った写真をインスタに上げてみる
30分後に着いたコメントが
「鷹さん まさかこれで外出してたんですか 完全に危ない人ですよ」
おいおい お銀さんだぞ と思うが 悲しいコメントには違いない
2つ目のコメントが
「長着もですが、中京と言う事はベトコン 半径3mの男
但し近寄らない半径3m」ボロクソ
そうか、あの代行屋 送ってくれたのは、中京の看板でベトコンは織り込み済みで
それでも、車はあれだわで 拒否してきたんだ と納得する
3つ目のコメントが
「スキンヘッド 黒地に絵羽の銀龍で左肩に龍の顔 オマケにベトコン 役満」
役満と来たので 開き直って
「昼にベトコン ビール飲んだら代行屋に断られてホテルを押さえて
夜に国士大三元と餃子も食ったぞ あとな
長着は 大映での杏子さんの当たり役のお銀さんのレプリカだ」入れる
「完全にダブル役満」というコメントが付き そのコメントにいいねがついて行く
写真にはいいねが付かないという悲しい事態になっていく
あまりにも悲しいので、近所のすき家へ昼飯を食いにスクターで向かう
近所のチョイノリにはハーフクオーターのスクターが最強と信じてる
今のだとトランクスペースも大きいので買い物した荷物も余裕だ
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多変量解析は何度もやってるけど、やらかす ほんとに やらかす
そんなリスクを犯すならL9を3回やったほうがいい
その後に直行配列で追い込むのが鷹さんのやり方です
そんな苦労をした人は フォローと応援コメントを!
ハゲみになります
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