第17話 カナンちゃんブランド(仮)
「は?ブランド?」
可愛い顔をゆがめるカナンに、私は考えていたことを説明した。
この工場は、カナンの優しさで出来ている。
『大儲けしたい』と言うわりにはあえて前近代的な前紡を運営したり、本音では『まあやっていければいい』くらいに思っているのがありありだった。
それぞれに事情はあるが、借金奴隷にならざるを得なかった私達に居場所をくれたこの優しい亜神様を、本気で大儲けさせたいし、それが私の借金完済、解放にもつながるだろうと思う。
まず、すでに一部は買い入れている(前紡の生産性が悪いから)粗糸を、すべて他工場からの買い入れにする。
当然前紡が浮く。
ドアーフ姉さん達は『力持ち』である以上に『器用』だ。彼女らを織布、後紡に振り分ければ、更に増産が見込まれる。
で、前紡に残った年配人族のお母さま方に、木から綿を外し、掃除し、真っすぐ伸ばすの工程を、丁寧に丁寧に、差別化してやって貰う。
ここで生まれた粗糸を、他と混ぜることなく布にしてもらえば?
「多分すっごくいい布が出来ると思うんだ。」
私の主張に、
「ふむ」と、頷くカナン。
「で、服にまで加工する。エルも超上手いし、多分前紡のお母さん達も出来る人いるでしょ?」
「うむ。」
「で、染色までしたらブランド名つけて売る‼こっちはちょっと割高な感じで‼」
カナンの種族、『亜神』はかなり珍しいらしい。
いつか必ず神様になる存在だし、ニアとエルにも、このアルハイムでただ1人の存在だと聞いている。
なら、
「カナンちゃんブランドとか出せば売れるんじゃない?」
思ったままを口にすると、
「ミサト…」
「Σ(・□・;)」
ニアが頭を抱え、エルの肩が飛び跳ねた。
「また、怖いもの知らずじゃのう、召喚者は」と苦笑いのカナンが、
「カナンちゃんブランドは御免じゃが、まあ面白いな」と、ゴーサインを出してくれた。
「そのおかしな模様とかもつけるのか?」
何故かこの世界の服、色を付けるにしても同じ色をべったり塗った感じで、グラデーションも模様もない。
「もちろん‼ちゃんと教えるよ‼」
「口だけでいいぞ。手は出すなよ、ミサト。貴様は自分が染まるタイプじゃ。」
どんなタイプだよ?
つい不満げに口をとがらせる私の肩を、
「うん、それがいいにゃ、ミサト。」
「緑にならないで」と、ニアとエルが叩く。
いや、どこのゴブリンだよ‼
「でもまあ、なかなか熱心だの、ミサト。」
からかうように笑ったカナンに、
「ま、私の借金軽減になるでしょ?」と軽口をたたく。
「おう。ちゃんと査定するぞ。」
「それは重畳…」
???
何故だろう、その瞬間肩に置かれたニアとエルの手に少しだけ力が入った。
「?」
振り向いても、何事も無いように2人共しれっとしている。
よくわからない。
そんな様子を笑顔で見守っていたカナン。
「ブランドは立ち上げる方向で行くとして、ならばわしも、お前らにやってもらいたいことがあるぞ。」
「ん?」
「お前ら3人、しばらく工場勤務から外すから。」
「???」
「町で試食販売、やって来い。」
はい???
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