第9話 後紡も器用度Bくらいは、せめて欲しい

 今私達は、紡績の工程を後ろから回っている。

 綿花から綿を外し真っすぐに整え、糸の素を作るのが『前紡』。糸の素から糸を紡ぎだすのが『後紡』。糸から布を織りだすのが『織布』。

 しかし、カナンのこの工場、イメージしていた異世界と異なり、かなり立派に『工場』だった。

 まだ織布工場しか見ていないが、工場制手工業な感じ。

 カナンに言えば、

 「お前のイメージが古いんじゃ」と笑われそうだ。

 お昼の後は後紡工場に行く。

 『あとぼう』と読む。

 楽しみにしていよう。

 ちなみに、昼食はパンとスープだ。

 うがぁぁぁっ‼️

 あー、きー、たー。

 具だくさん、角切りベーコンがたっぷり入ったミネストローネ。

 旨いよ。

 うん、間違いなく旨い。

 でも、フー、ラー、スー、トー、レー、ショーン‼️

 食後エルと別れ、ニアと連れ立って行ったのが後紡工場。

 驚いた。

 織布より機械?化されている。

 たくさんある機械に前紡で作った糸の素がセットされ、全自動で糸を紡ぐ。より合わせて強い糸にするのだが、動力は電気じゃなくて、異世界名物『魔石』だそうだ。

 この糸を紡ぐ機械が所狭しと並んでいた。

 『機械化されていれば人の力なんていらないじゃん』と思ったが、相手は自然物。綿花からとっただけの状態では強い部分、弱い部分があって、糸を紡ぐ途中で頻繁に切れる。

 これを指先で繋ぐのが後紡のお仕事だ。

 ニアの謎説明、『指先で、こう』の正にそれ。

 作業員は機械の間を回り、切れた糸があれば繋いで機械を再起動する。

 そして今回も、私の最悪の器用度が良い仕事をしてくれました(泣)。

 もし器用度がSからFなら、私はたぶん間違いなくFだ。

 あまり自分で言うことじゃないが…

 だって、全く繋げないのだ。

 切れた糸を上下で持って、こう、指先でヒョイッとやればいいらしいが、実際ニアも当たり前に繋ぎだしていたが、ムーリーだーよー。

 午後から4時間働いて、成果0。

 ニアは秒で繋いでいるし、『天と地』どころか、『地』をどこまで掘ればいいのだろうって、黄昏れるわ‼

 結果、私、後紡も半日でお払い箱となりました。

 1年で2000万返済?

 えーっ、ムーリー。

 うわーっ、どうすればいいんだ、これ?

 私のスペック、低過ぎないか?

 ああ、でも明日は前紡って言われたし、何かやれることあるかな?

 また器用度が必要ならお手上げだ。

 やーばーいー。

 ジタバタしていると、

 「どうしたにゃ、ミサト?」

 「元気出せ」と、ニアとエルに寄って集って撫でられた。

 うんうん。可愛いね、2人共。

 気を取り直して食堂に行って…

 なんか、魔法の詠唱みたい。

 フ、ラ、ス、ト、レーショーン‼

 大爆発(妄想)。

 晩御飯はパンとブイヤベースだった。

 どうやら朝は軽めのスープ、夜はがっつり系のスープで、昼はその中間らしい。

 中身が変わってもスープはスープ。

 赤でも白でもみそ汁はみそ汁。

 マジ、きつい⤵

 もちろん、合わせ味噌でもみそ汁です❤️

 


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