第6話 秘密基地の3人組

 初日は夕食の後、寮に案内された。

 この工場には3階建ての寮が2棟あり、女性のみで使っている。

 って言うか、この工場、女子しかいない。

 経営含め、女性のみで回しているのだ。

 「なんで?」と、カナンに聞いたら、

 「異性が入るとめんどくさい」そうだ。

 確かに、カナン以外ほぼ奴隷。

 退社する自由もない中、愛だ恋だに溺れられれば大迷惑だ。

 まあ、一理あるのかもしれない。

 寮は1部屋で4人まで(12畳くらいの広さに2段ベッドが2つ)暮らせるが…

 大抵2人で使っている。

 だから空きがほとんど無い。

 私達は第1寮の3階の5号室を指定された。

 他に空き部屋が無かったからだ。

 しばらく、同期3人で暮らしてくれと言う。

 誰かの年期が開け空き部屋が出来たら考えるそうだが…

 馬車旅で仲良くなっている、私達に異存はない。

 「うち、ここにするにゃ‼️」と、ニアがベッドの上段に飛び乗った。

 「エルは?」と聞くと、

 「下」と答える。

 結局私が上、その下がエル、もう1つのベッドの上段がニア、ニアの下は空きスペースで、皆で集まって車座でお茶したり、秘密基地にすることにした。

 人心地ついた頃、

 「どうじゃ?落ち着いたか?」と、カナンが来た。

 「あー、来てくれたんだぁ‼️カナン‼️」

 「うんうん。わしを呼び捨てにする命知らずはお前くらいじゃな、ミサト。」

 いや、だってカナンはカナンだし。

 「で、そんなお前にプレゼントじゃ。」

 渡されたのは、下着まで含め、この世界の女性の定番の服が数組だった。

 「エルと、ニアだったか?貴様らは最初から奴隷になるつもりで来ているから、着替えなども持って来ている。だが、ミサトはいきなり連れてこられたからな。」

 そう、私には着替えがない。

 下着は流石に、王宮にいた時アンさんにお願いしたが、それ以外は冬をいいことに着たきり雀だ。

 「この工場の布で作った。感想はレポートしろよ」と、カナンは帰った。

 ありがとう。助かるよ。

 寮には大浴場があり、旅の埃を落とした後、私達は着替えて眠ることとした。

 脱いだ服を…

 どうしたものか?

 全自動の洗濯機がある訳じゃない。

 手洗いするには厚すぎるし、まともに絞れる気がしない。

 悩んでいると、トコトコとエルが歩み寄る。

私が抱えた汚れ物に手をかざすと、

 「クリーン」と呟く。

 瞬間暖かな温度と、フワッと汚れ物が光ったのが見えた。

 「え?」

 「清浄魔法。」

 「ええぇ?」

 「洗わなくて良い。」

 初めて見たよ、魔法‼️

 埃まみれだったパーカーもジーンズも、すっかりキレイに変わっている。

 「スゴイにゃ、エル‼️うちも魔法は初めて見たにゃ‼️」

 「ほんとスゴイ‼️なんかいい匂いまでする気がする‼️」

 「いや、匂いは誤解。」

 一通り盛り上がって、本気で嬉しかったから、目を見てお礼。

 「ありがとう、エル。」

 笑いかけると、初めてだった、

 「どういたしまして」と呟くと共に、微かに口角が上がる。

 なんか、ニヒルな悪役みたいな笑い方だが…

 エルが笑った。

 「でも、ニアもミサトも魔力、ある。」

 「嘘?」

 「ほんとにゃ?」

 「うん、多分使える。」

 うわー、楽しみにしておこう。

 そのまま、疲れていたのか、全員グッスリ眠り込んだ。

 外は寒かったけど、寮の中は暖かい。

 王宮の1室で沙汰を待っていた時と全然違う。

 異世界で、初めて安定した気がした。

 明日からは研修が始まる。


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