第3話 同じく、借金奴隷のエルフのエルちゃん

 「えっ?どういうこと?なんで村の借金をこの子が‼」

 人権どうなってる?

 思わず聞き返す私に、

 「え?ニア、村長の娘だし、仕方がないんにゃ。去年、不作だったし」と、ニアはこともなげに言う。

 「ニアが働きに行けば、この1年村の人は十分に生きていけるし、それくらい借りれたにゃ。」

 いや、『にゃ』じゃないだろ。

 え?どうなってるの、この世界?

 村のために若い娘が売りに出されるって、そんなこと、あっていいはずないじゃない‼

 1人100面相で混乱する私に、

 「ああ、なるほど」と、察してくれたアンさんが説明してくれた。

 「ミサトさんや私、人族は、長く生きても100年くらい。これは同じですか?」

 私が召喚者だからの配慮だろう。

 日本とここの常識をすり合わせる。

 頷くと、

 「多分、そこが違います。獣人の皆さんは私たちより長生きです。ニアさん、ニアさん達って300年くらいですよね、寿命?」

 「そうにゃ。事故や病気がなければ300歳くらいまで生きるにゃ。」

 こくんと頷くニアを見て、冗談じゃないとわかって、余計混乱する。

 え?300年?

 じゃあ、さっき村で見たご老人、尻尾も禿げかけてたし耳周りの毛もボサボサだったけど?

 「村で1番の長老は302歳にゃ。」

 うわーっ、なんだ、それ?

 「つまり、与えられた時間が私達人族より長いのです。確かニアさんは30年の借金奴隷ですが、解放されて49歳。人なら中年でも、獣人なら?」

 人生が3倍あるのなら、実質?

 「えっ?人ならまだギリギリ10代じゃんか‼」

 「そういうことです。彼女らにとっての30年は、取り返しがつかない時間ではない。だから気軽に奴隷落ちしてくれるんです。」

 「そうにゃよ。たかが30年で大金貨100枚も貰えるにゃよ。すごく助かるんにゃよ。」

 え?

 えええ???

 理屈は分かった。でも、感覚的に理解しがたい。

 たかが30年とか、言えない人間の限界かもしれない。

 何をするのか未だにわからないけど、30年間の奴隷労働を気軽に考えきれない私がいる。

 と言うか、そんな寿命の格差社会で、同じ場所に送られる長く生きて100年の私の立場って?

 何か嫌なことに気づきかけた頃、馬車は2日目の宿についた。

 降りた途端色々忘れた。

 うひょーっ‼今度はエルフの里じゃん‼

 男も女も皆きれい。とがった耳に、茶色や金の髪が映える。

 推せそうなレベル。異世界、すげえ‼

 宿舎で、ニアとアンさんと行動食を食べていると、4人目が現れる。

 奴隷としては3人目。

 ドアを開けて入室したが、無口らしく何も言わない、彼女は滅茶苦茶キレイだった。

 キラキラの金髪。テンプレならハイエルフってやつかもしれない。

 感情まるわかりのニアに比べ表情が乏しい。口を一文字に結び、伏し目がちだがそのまつげが超長い。

 絶世の美女、言ってしまって問題はない。

 「彼女も同じ場所に行きます」と、アンさんが言った。

 「昨年の不作の関係です。ニアさんと同じで借金奴隷で30年。エルフの代表の娘さんで、エルさんです。皆さんと同じ19歳です。」

 紹介されて、エルは小さく頭を下げた。

 「よろしく」、と。

 エルフの寿命が長いのはファンタジーの大常識だ。

 「500年くらい?」と小声で聞くと、

 「1000年は固いでしょう。でも、代表の娘さんだし、ハイエルフだったらもっと長い時間生きると思いますよ」と、アンさん。

 1000年としたって…

 人間年齢なら、解放時5歳じゃん。

 まさかの1桁だよ⤵

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