黒原さんの部屋を後にした僕は、白崎部長の所に戻った。


「ご苦労様。随分、時間が掛かったね」

「すみません、つい話し込んでしまって……」

「顔色も悪いようだけど、大丈夫かい?」

「大丈夫です。それよりも、これ……」

 僕は黒原さんの部屋から持って来たメモ用紙とメモホルダーを部長に渡す。

「雨音君、よくやった!」

 部長はメモ用紙とメモホルダーを見ると、満足そうにニヤリと笑った。

「山本さん、伊達さん、そして飯田君。三人を殺した犯人は、やはりあの人だったよ」

「本当ですか⁉」

「ああ!」

 白崎部長は力強い声で言った。

「雨音君、全員を呼んで来てくれ。皆の前で事件の真相を話す」


 部長の指示に従い、僕は全員を呼びに二階に上がった。

 それは、まさに黒原さんの言った通りの展開だった。


 皆が集まると、白崎部長は黒原さんの言った通りの推理を披露した。


「重なった紙に文字を書くと、筆圧痕が下の紙に残ります。専用の機械を使えば筆圧痕を解析して上の紙に何が書かれていたか判別出来ますが、機械が無くともこうすれば……」

 部長はポケットから鉛筆を取り出すと、その鉛筆を横に寝かせ一番上のメモ用紙を黒く塗り始めた。黒く塗られた紙に筆圧痕が浮かび上がる。

『薬は外に捨てた。探してみろ』

 それは、伊達さんの部屋で見付かった紙に書かれている文字と同じだった。

「これが、君が殺人を犯したという証拠だよ、黒原さん」

 白崎部長は静かに、もう一度言う。


「君がこの別荘で三人を殺した犯人だ」


 僕は静かに俯いた。

 心の底から湧き上がる様々な感情を飲み込むために。

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