②
飯田先輩の部屋をそのままに、皆はそれぞれ自分の部屋へと戻る。
「部長!」
僕は白崎部長を呼び止めた。
「どうした?」
「飯田先輩は自殺なんてしてません」
部長はじっと僕の目を見る。
「何故そう思うんだい?」
「それは……」
一瞬、言うべきか迷った。これは飯田先輩だけの想いだ。飯田先輩だけの大切な気持ちだ。それを僕が勝手に部長へ伝えても良いのだろうか?そんな考えが頭によぎる。
でも、僕は部長に伝えようと決めた。間違っているかもしれない。だけど、部長には知っていて欲しかった。飯田先輩の想いを。
「飯田先輩は、部長が好きだったんです」
「……」
「この島に来た最初の夜、飯田先輩は僕に教えてくれました。部長が好きだって。この島に居る間に部長へ告白するんだって言ってたんです。でも、飯田先輩はまだ部長に想いを伝えていませんでした。そんな先輩が自殺するはずがありません!」
「……そうか」
白崎部長は静かに目を閉じる。
「……雨音君」
「はい」
長い沈黙の後、白崎部長は口を開いた。
「私は飯田君に好かれる資格なんてないよ」
「えっ?」
「飯田君が自殺でなく殺されたのなら、十中八九、山本さんを殺した犯人と同一人物だろう。もしも、私がすぐに犯人を見付けていたら飯田君は殺されなかった」
「部長……」
「そもそも飯田君を一人にするべきじゃなかった。ずっと傍に居てあげればよかったんだ!そうすれば飯田君は……!」
部長は両手で顔を覆う。冷静なように見えたけど、そうじゃなかった。部長は僕と同じくらい……いや、それ以上に傷付いていたんだ。
「必ず守ると言ったのに……絶対に守ると言ったのに……私は……私は……」
「部長のせいじゃありません!」
僕は白崎部長の肩を掴み、叫ぶ。
「飯田先輩が殺されるなんて誰にも予想出来ませんでした。部長が気に病む必要は全くありません!」
「雨音君……」
「部長が悲しんでいると、天国で飯田先輩が安心して……安心して……」
あれ?おかしいな。部長を励ましたいのに声が出ない。頬を何かが流れる。気付かない内に僕は泣いていたらしい。
「す、すみません」
慌てて涙を拭っていると、今度は白崎部長が僕の肩に手を置いた。
「全く、駄目な部長だな私は。後輩に心配を掛けてしまうとは」
堂々と、自信に満ちたいつもの白崎部長の顔がそこにあった。
「君の言う通りだよ。此処で私がへこたれていては天国の飯田君に心配を掛けてしまう。私が今やるべきは悲しむ事じゃない。事件の解決だ!」
「部長!」
「私は事件を解決し、飯田君を殺した犯人を必ず捕まえる。改めてお願いするよ雨音君、一緒に犯人を見付けよう!」
「……ッ!はい!」
それから僕と部長は、すぐに調査を開始した。
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