「驚いたな」

 僕が話し終えると、白崎部長は一言そう呟く。


 黒原さんの部屋を出た後、僕はその足で白崎部長の部屋を訪ねた。黒原さんから聞いた話をどうしても部長に伝えたかったのだ。

 僕の訪問に部長は驚いた様子だったけど、ちゃんと最後まで話を聞いてくれた。

「まさか、黒原さんがストーカーだったとはね。驚いたよ」

「……ストーカーですか?」

「ああ、彼女は立派な君のストーカーだ」

 部長は「やれやれ」と肩を竦める。

 あの『闇化粧』の作者、黒原蕾が僕のストーカー。正直、実感はまるで無い。

「君はいつか危険な女に好かれると思っていた。私の予想はズバリだったね」

「それ、飯田先輩にも言われました」

 同じ事を部長にも言われるとは……そんなに僕は危ない女性に好かれやすそうに見えるのだろうか?

「それで、黒原さんの話から何か分かりましたか?」

「黒原さんが君のストーカーだって事と、彼女が君に好意を持った経緯については分かった。だけど、それが今回の事件と関係しているかまでは分からない」

「そうですよね……」

 黒原さんが僕に好意を持ってくれているとしても、それが山本さんを殺す動機に繋がるとは思えない。

「ただ」

 部長は僕に忠告する。


「彼女の君に対する執着は異常だ。注意しておいた方が良いだろうね」

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